【カンボジア】近所の人たちにもオーガニック農業の技術を
【アジアレポート/2019年2月_Topic02】
JICA草の根パートナー事業で2017年からサポートする障害者世帯への生計向上支援ももうすぐ2年目が終わろうとしています。これまでの状況をカウンターパート機関である現地NGO、現地農業局、社会福祉・退役軍人・青年更生局のスタッフらとモニタリング調査で3つのグループに別れて、全100世帯を回りました。
障害者のヴォーン・チュンさんは、奥さんと協力してヤギの貸し出しを受けて、もともと飼っていた2頭の牛とともに飼育しています。そして、現在3頭のヤギを飼育していますが、すでに販売したヤギからUS$325の収入を得ることができました。また、自分の家の土地はとても小さいですが、家の前のわずかな土地や近所の方の土地で家庭菜園をして、野菜も育てています。
調査に行った時には苦瓜が家の前になっていました。一方で、2年目の家畜として鶏の飼育をしていますが、こちらは少し苦戦しています。現在5羽の貸し出しを受け、現在13羽。10羽ほどの鶏が最近死んでしまったようです。鶏は世話が大変ですが、チュンさんの家の近くには、鶏を100羽以上に増やして、収入を得ているメイ・ソーンさんもいます。
そのメイ・ソーンにも同じ木陰で話を聞くと、最近飼っていたアヒルが少し死んでしまったとのこと。理由を聞くと、近所の人たちが撒いた農薬にやられてしまったそうです。しかもメイ・ソーンさんが、家を留守にしているときに農薬を撒いた人がいて、「自分が家にいれば農薬に当たらないように小屋の中に入れておいたり、治療したりすることができたのに」と残念がっていました。
カンボジアの薬草を発酵させて造った薬で、100羽以上の鶏やアヒルを健康に飼育し、すでにUS$100以上の収入を得ているメイ・ソーンさんには、思わぬ敵が周囲にいました。市販の農薬は、近所の人が龍眼という果物につく虫に撒いたものでしたが、虫だけでなく家畜や人間にも悪影響があります。昨年は、オーガニック野菜を栽培しているメイ・ソーンさんの家庭菜園の隣で、除草剤を撒いた隣人がいて、その近くの野菜が枯れてしまったこともありました。
すでに近所でも鶏を始めとした家畜の病気を自分で作った薬草で治療しているメイ・ソーンさん。ぜひお互いに農業技術を共有しあい、そして直接の受益者の人たちから、近所の人たちにもオーガニック農業の技術が普及していってほしいと思います。
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記事執筆/
アジア事業部マネージャー
江角 泰