夢をもてないウガンダの子ども兵
夢へ挑戦する元子ども兵の訓練生
テラ・ルネッサンスは、ウガンダにて元子ども兵の社会復帰支援プロジェクトを行っております。具体的には、後で紹介しますが、3年間の訓練を通して技術を習得し、自分で収入を稼げるようになるのがプロジェクトの目標です。
ウガンダ事務所でプロジェクトに参加する訓練生は、各々の夢を持って訓練に向き合っています。
たとえば、紛争で父を亡くし、避難キャンプでの生活を余儀なくされてきたフローレンス(仮名)は、テラ・ルネッサンスでの経験を経て、「自分のスキルにまだ満足はしてないけども、まだ作ったことのないコートを作りたい。自分の得たスキルを人に伝えたい。」そんな思いを語っていました。
紛争の影響を受けた北部で生きてきたクリスティーン(仮名)は、「これから5年以内に洋裁の機械を増やして、他の住民の人たちが訓練を受けられるようにしたいです。」と、訓練修了時に語ってくれました。
夢の背後にある現実とは
しかし、収入を得て、夢をもてるようになった訓練生も、少し前までは、非常に過酷な生活を強いられていました。
ウガンダでは、1980年代後半から内戦が始まり、反政府組織「神の抵抗軍(LRA)」と政府軍が20年以上にわたって戦闘を繰り広げ、「神の抵抗軍」によって3万人以上もの子どもたちが誘拐され、子ども兵にされました。
戦うことしか教えられてこなかった元子ども兵たちは、幼い頃に誘拐されたことで、基本的な教育も欠如しており、職業技術も無いため、仕事に就くこともできず、経済的に大きな困難を抱えています。
たとえば、元子ども兵のチャールズ君(仮名)は次のような悲惨な体験をしました。
子ども兵として誘拐されたチャールズ君は、ある日、自分の住んでいた村に連れていかれ、チャールズ君のお母さんの片腕を切り落とすように命じられました。大人の兵士は、片腕を切り落とさなければ、チャールズ君もお母さんも殺すように迫ってきたのです。
「命だけは助けてほしい」と思ったチャールズ君は、手渡された"なた"をお母さんの腕に何度もふりおろし、手首から下が落ちました。そのあと棒を渡され、兵士は「お母さんを殴れ」と命令しました。彼は、自分のお母さんを棒で殴り、気を失わせましたが、命は助かりました。そして、チャールズ君はそのまま兵士に部隊へ連れていかれ、3年間兵士として戦うことになりました。
このように、地元の村々での襲撃にも加担させられてきた元子ども兵たちは、帰還後、地域住民から加害者とみなされ、憎しみの対象になることになるのです。また、子ども兵は男の子だけではありません。女の子もまた、兵士として戦わされ、兵士と強制結婚させられ、望まない妊娠を経験しています。
元子ども兵社会復帰支援プロジェクト
【元子ども兵社会復帰プロジェクトについて】
このような元子ども兵たちに対し、テラ・ルネッサンスでは、「3年間で元子ども兵が社会復帰するために、必要な能力を身につけ、経済的に自立すると共に、地域住民との関係を改善しながらコミュニティで安心して暮らせるようになる」という目標を掲げて社会復帰支援プロジェクトを行っています。
上の図にあるように、職業訓練、社会心理支援、BHN支援の3つの軸から構成されるフルタイム訓練を1年半受けた後に、1年半のビジネス実地訓練にうつります。
職業訓練
受益者が経済的に自立できるようになるために、洋裁訓練、木工大工の2つの職業訓練科目と、基礎教育(識字、算数、英語)・基本的な健康管理のクラスを開講しています。
心理社会支援
訓練生各々が抱える悩みやトラウマに向き合うために、個別カウンセリングとグループカウンセリングのクラスや、週に1回元子ども兵とその近隣住民を対象に平和教育の授業を開講しています。音楽や伝統ダンス、アチョリ民族(ウガンダ北部に住むナイル系民族)の伝統的な和解方法を共に学ぶ機会を提供しています。
BHN支援
プロジェクト前半のフルタイム訓練期間中、受益者とその家族の状況に応じて毎月の食費と医療費をクーポンで配布しています。食費・医療費にのみ使用することが目的であるため、他の用途に使われないよう、現金ではなくクーポン券で配布しています。
これらの1年半のフルタイム訓練を受けた後、1年半のビジネス実地訓練に移ります。
ビジネス実地訓練
1年半フルタイムの訓練を受けた訓練生は、ビジネス実地訓練を行います。グループで洋裁店・木工所を開業し、フォローアップを受けながら、収入向上活動をはじめます。実地訓練をおこなうにあたって、マイクロクレジット・ミシン・木工大工の機械や道具を供与します。
テラ・ルネッサンスは現在「夏季募金キャンペーン」を実施しています。今回の夏季募金でいただくご寄付は、当プロジェクトだけではなく、アジア・アフリカで夢に向かって挑戦する受益者のために活用させていただきます。多くのみなさまのお力添えを心よりお願い申し上げます。
夏季募金キャンペーンについて詳しくはこちらをご覧ください。
https://www.terra-r.jp/kakibokin2019.html
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記事執筆/
啓発事業部 インターン
中野 みなみ