【カンボジア】「幸せとは、家族が健康で幸せであること。」
【アジアレポート/2019年7月_Topic01】
沖縄県主催“おきなわ国際協力人材育成事業”で、沖縄の高校生13名が、JICA草の根パートナー事業として、2017年から実施しているバッタンバン州カムリエン郡での障害者世帯への生計向上支援事業の対象者のイェン・ハンさんの家を、7月30日に訪問しました。
ハンさんは、1971年生まれ。当時は16-18歳前後の男性はみんな、強制的に従軍させられていたそうです。1991年にカムリエン郡にある山で、兵士5人でパトロール中に、中国製タイプ72という小さな対人地雷を踏み、右足を負傷しました。
他の兵士たちがトラン区ヘルスセンターに運んでくれたために一命を取り留めました。ただ、地雷の事故に遭った後は、希望失ったそうです。「誰も自分の人生を助けてくれない、家族や子どもを持つこともできない」と思ったといいます。
事業実施前に調査した時には、地雷を踏んだ山の近くにある畑を案内してくれましたが、ハンさんは、あまり話をしたくなさそうな感じでした。大きな問題は、キャッサバ栽培で失敗して抱えている借金で、それがハンさんの表情を暗くしていました。
この日、話を聞くと、最初はその畑を担保として銀行からお金を借り、キャッサバを栽培したそうです。しかし、買取価格が下がり、残った多額の借金を返済するために家を担保に、さらに借金をして、再度キャッサバを栽培し、借金が膨らんでしまいました。
最初の借金は、担保としての土地を販売して、返済をしたそうです。そして残りの借金は、少しずつカンボジア政府の障害者対象に支給される補償金を、昨年から受け取れるようになり、そのお金で毎月少しずつ返済しているとのこと。
ただ、残っている借金を聞くと、20,000ドル(約200万円)。あまりの額の大きさに驚かされました。
それでも、ハンさんが以前のように暗く、ちょっと近寄りがたい雰囲気は全くなく、笑顔を見せてくれるようになりました。生計向上支援でサポートしているヤギと牛を飼育し、野菜を奥さんと育て、タイへの出稼ぎにはもう行かなくなったといいます。
「ヤギはすでにヤギ銀行への返却が終わっているので、残りは自分の資産として販売し、収入にできる」と嬉しそうに話してくれました。雌ヤギがすでに妊娠しており、もうすぐ子ヤギが生まれてきます。ヤギの糞も集めて、野菜栽培の肥料に使うと話してくれました。
「幸せとは何ですか?」という高校生の質問に、「家族が健康で幸せであること」というハンさんの回答に、日本の高校生たちも、日頃蔑ろにしがちの家族の大切さ、また自分たちの恵まれた環境について改めて、考えさせられたと感想を述べていました。
奥さんとは本当に仲良く、家畜の飼育も一緒にやっているそうです。まだ多額の借金がありますが、家族で協力して、少しずつ借金を返済してほしいと思います。
【 最後に高校生たちから、お土産として家を守ってくれ、幸運を呼び寄せる沖縄のシーサーを受け取ったハンさん(前列右から3人目)】
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記事執筆/
アジア事業部
江角 泰