【カンボジア】カンボジア農村の根本的な問題を解決するために
【アジアレポート/2019年9月_Topic01】
ロカブッス村に住むチョウク・ケーンさんは、ヤギ銀行からのヤギの貸し出しを受け、ヤギの飼育をしています。すでに貸し出された3頭のヤギを返却し、また3頭の子ヤギが生まれてきました。
ちょうど生まれたばかりの頃にケーンさんを訪ねたのですが、ヤギの数が大きく増えているのに大変驚きました。短期間の間にヤギが繁殖して、数も増え、牛と一緒に放牧していたヤギたちを嬉しそうに連れて帰ってきたケーンさん。
【生まれたばかりの子ヤギを見せてくれるチョウク・ケーンさん】
大きな牛に混ざって、ちょこまかと動きながら夕方刈っておいた餌の草を食むヤギたち。ケーンさんは牛と共に同じ餌を食べても問題ないと言います。
ロカブッス村では、3年前にヤギ銀行を始めましたが、現在ヤギを飼育している世帯はケーンさんを含めて4世帯。ケーンさんは、9月に3頭のヤギを販売してUS$225ドルの収入を得ていますが、継続して繁殖できるように2頭のヤギを残しています。
ただし、私たちが進めているのは単なるヤギの飼育ではありません。牛やアヒル、鶏、豚、野菜の栽培など、村でできることを複数組み合わせて、リスクを回避し、しなやかに生活できるレジリエンスを高めているのです。
最近はヤギの飼育のみならず、家の近くにため池も掘り、野菜栽培にも取り組むというケーンさん。私たちの考える”レジリエンス”を高めるために動き始めました。野菜の栽培や牛、鶏の飼育などの自分の家で、広い農地を持たなくてもできる多様な収入源を確保する取り組みを始めているところです。
【夕方、牛とヤギに草を食べさせるチョウク・ケーンさん】
この村では、まだ多くの村人がタイへの出稼ぎに行き、家を長期間留守にしている家庭が多いのが現状です。
出稼ぎも1つの収入を得る手段ではありますが、完全に出稼ぎや換金作物の栽培に依存しそれしか生きる手段がない、というのは、もしその手段ができなくなったときに生活できなくなってしまいます。
数年前に値崩れしたキャッサバの栽培で失敗した村人たちは、今も借金を抱えたままです。出稼ぎや換金作物の栽培は、キャッサバやトウモロコシ、フルーツの収穫など単純労働が多く、子どもたちでもできるため、小学校高学年以上の子どもたちは小学校をドロップアウトして児童労働に従事し、家計を助けます。
一方の家畜の飼育や家庭菜園では、子どもたちも手伝いながら、きちんと学校に行くことができ、児童労働にはなりません。家畜飼育と家庭菜園など、カンボジアの農村にあるものを活用し、できることを組み合わせて、村の大人たちが村の中で多様な収入源を確保することで自立し、子どもたちを継続して学校に通わせることにつながります。
少し時間はかかりますが、カンボジアの農村の根本的な問題を解決する方法だと考えています。
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記事執筆/
アジア事業部
江角 泰