【冬季募金2019キャンペーン企画】除隊後も苦しみ続けるウガンダの子ども兵
ウガンダでは、1980年代後半から内戦が始まり、反政府組織「神の抵抗軍(LRA)」と政府軍が20年以上にわたって戦闘を繰り広げ、「神の抵抗軍」によって3万人以上もの子どもたちが誘拐され、兵士として闘わされました。
「子ども兵の苦しみ」と聞くと、やりたくもない殺しをやらされたり、自分もいつ傷つけられるか分からない不安に陥ったり、といった従軍中のものを思い浮かべるかもしれません。
しかしそれだけではなく、軍から解放された後も彼らの苦しみは続くのです。
子どもたちは大体12歳ごろで誘拐され、そこからは戦うことしか教えられてきませんでした。本来教育を受けるべき年齢の時に戦いに参加していたため、基本的な学力が欠如しており、職業技術も無いため、仕事に就くこともできず、経済的に苦しいという現状があります。
また、兵士として長いこと戦いに関わってきた彼らは紛争の加害者とみなされ、周辺住民からの偏見の目を向けられることも少なくありません。
テラ・ルネッサンスでは、そうした方々を対象に、2005年からウガンダ北部の町、グル(Gulu)で社会復帰支援プロジェクトを行っています。
「なんであいつだけが・・・」
当会の3年間の職業訓練を受け、現在は自分でビジネスを成功させているマイケル(仮名)は11歳で神の抵抗軍(LRA)という反政府軍に誘拐され、それから16年間、子ども兵として従軍していました。
ウガンダから南スーダン、コンゴ、中央アフリカ、チャドまで重い荷物を運ばされ、いつ奇襲攻撃に合うか分からない不安と戦っていたそうです。
そして2010年のある日、政府軍の奇襲攻撃に合い、足に銃弾を受け軍と離れたところを政府軍の人に保護されました。
反政府軍から解放され喜んだのも束の間、帰ってきた彼を待っていたのは、地域住民からの差別でした。
彼の地元の村では多くの子どもが誘拐されて兵士として戦わされました。
しかしその多くは戦死してしまい、帰ってこられるのはほんのわずかです。
「自分の家族はもういないのに、なぜあいつだけは生きて帰ってこられたんだ。」
と彼は周りの人々から憎まれ、嫉妬され、悪口を言われる、という辛い日々を送っていたそうです。
失われた故郷
また、元子ども兵のチャールズ君(仮名)は次のような悲惨な体験をしました。
彼は、ある日、自分の住んでいた村に連れていかれ、チャールズ君のお母さんを殺すよう命令しました。それはできないと答えると、今度はお母さんの片腕を切り落とすように命じられました。大人の兵士は、片腕を切り落とさなければ、チャールズ君もお母さんも殺すように迫ってきたのです。
「命だけは助けてほしい」と思ったチャールズ君は、手渡された"なた"をお母さんの腕に何度もふりおろし、手首から下が落ちました。そのあと棒を渡され、兵士は「お母さんを殴れ」と命令しました。彼は、自分のお母さんを棒で殴り、気を失わせましたが、命は助かりました。そして、チャールズ君はそのまま兵士に部隊へ連れていかれ、3年間兵士として戦うことになりました。
大人の兵士たちはこうやって、子どもたちの生まれ故郷や家族を襲撃させることで人を殺すことに抵抗を無くし、帰る場所を無くそうとするのです。元子ども兵たちはLRAから解放されても、自分の村を襲った加害者とみなされ、周囲の住民からの非難を浴びます。居心地が悪く、仕事もなかなか見つからない彼らは今度は志願兵となり自ら軍に戻って「兵士」という職業を選択することも少なくありません。
ウガンダ政府とLRAの間では、2006年に停戦合意が結ばれました。しかし紛争の被害はまだ続いています。
彼らのように、紛争が終わってからも、周りとの人間関係に悩んだり、経済的な面で苦しんでいる方は多く存在します。
当会は、元子ども兵が経済的に苦しい状況から抜け出そうと技術を身につけたり、自分の故郷から向けられる偏見の目を乗り越えようとする姿に寄り添い、解決に向けて14年間、活動を続けてきました。
彼らが直面する厳しい現実から目を背けることなく、「未来をつくる力」を取り戻す元子ども兵を一人でも多く支えるためには、まだまだ皆様のお力添えが必要です。
現在、テラ・ルネッサンスでは冬季募金キャンペーンを行っています。
〈冬季募金キャンペーンについて詳しくは以下のURLをご覧ください。〉
https://www.terra-r.jp/tokibokin2019.html
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記事執筆/
啓発事業部・インターン
野田歩美