【冬季募金2019キャンペーン企画】コンゴ最大の武器、性暴力
資源に恵まれた豊かな国、コンゴ
コンゴ民主共和国(以下:コンゴ)は、アフリカ中央に位置する国で、その面積は2,345,000㎢と、アフリカ大陸で2番目に大きい国です。(ちなみに日本の約6倍の大きさ。)
コンゴには、レアメタルと呼ばれるコルタンやタンタルなどの鉱物資源が多くあります。
それらの資源は、私たちが普段使用する、スマートフォンやパソコンなどの電化製品によく使われており、コンゴの輸出品の約9割を石油・鉱物資源が占めています。
そしてこの豊かな資源が原因となり、コンゴでは20世紀後半から紛争が激化しました。
この鉱物で得た利益は、軍事資金となり、武器購入や戦力増強などにあてられています。
1998年以降、540万人もの人々が紛争の犠牲になり、この数は第2次世界大戦後の紛争で最大となっています。
2002年に和平合意が結ばれたものの、それ以降もコンゴ東部では、脆弱な人々が常に犠牲になっています。住民たちは、政府軍、武装勢力双方から食料の略奪や村々の襲撃、女性への性的暴力を頻繁に受けています。
性暴力の現状
この紛争での一番の武器は「性暴力」だ、と2018年にノーベル平和賞を受賞したムクウェゲ医師は語ります。
国連人口基金(UNFPA)によると、2012年の一年だけでも、性暴力の被害にあった方は2万人以上にのぼります。
一時間に2人以上の被害者が出ているのです。
ある女性は、木にくくりつけられ日に何度もレイプされた結果、手足の縄が肉に食い込み血が滞り、手足が麻痺してしまったそうです。
また膣に銃剣を突き入れられたり、熱で溶かしたビニールを巻いた棒を挿入されたり、銃を入れられ撃たれたり、といったことも事実として起こっています。(ムクウェゲ医師の自伝より)
こうして性器を傷つけられた女性たちは、排泄機能や生殖機能を失うことになります。
常に悪臭を放つため日常生活もままならず、子どもを産むこともできません。
そして夫からは軽蔑の目を向けられて、家を追い出されます。
それは子どもを産めないからではなく、「他の男と交わった」、という事実があるからです。
彼女たちは社会からも締め出され、孤独に生きていくことになります。
これらの行動の目的は殺すことでは無く、女性たちを徹底して傷つけることです。
傷つけ、戦意を喪失させることで敵意を向けさせないようにするのが彼らの目的であります。
ドットフランク法が招いた悲劇
コンゴの鉱物資源の利益の多くが武装勢力の軍事資金となっています。
こういった武装勢力が取引に関わっている鉱物は「紛争鉱物」と言われています。
紛争鉱物が紛争を激化させていることを受け、経済協力開発機構(OECD)は2010年、世界中のすべての企業に対して、レアメタルを含む資材の調達の際にはコンゴの紛争鉱物を排除するよう要請をしました。
また、アメリカでは「ドットフランク法」という、製造や運送などのすべての段階で紛争に関わっていないことを証明する、コンフリクトフリーの鉱物しか扱わないことを掲げる法律もできました。
こうした国際社会の動きを受け、大統領(当時)のカビラ氏は特に紛争鉱物が多かった東部の南キブ州、北キブ州、マニエマ州からの鉱物輸出を中止しました。そして、鉱物価格は下落しました。
その結果、現地で鉱山で働いていた人たちや、鉱物取引関係者の人たちは急に職を失い、生活は困窮を極めるようになりました。
鉱物の取引による十分な利益を得られなくなった武装勢力は、住民たちを襲い、金品の略奪行為はさらに増加しました。恐怖を与えるため、性暴力の数も増えました。
紛争をやめさせるために、と国際社会が規制を強めたにも関わらず、コンゴ国内の人道状況はさらに悪化したのです。
この凄惨な性暴力、そして紛争鉱物の取引は、数十年前の話でも、作られた物語でもありません。
コンゴ国内で今、実際に起こっているできごとなのです。
テラ・ルネッサンスは、このような現状の中、コンゴ民主共和国において10年間、主に紛争下で性暴力の被害を受けた女性の方々を中心に支援を行っています。
現地の方を想い、その気持ちに寄り添い活動を続けてきましたが、コンゴが直面する現実は依然として厳しいものがあり、未だに多くの方々が苦しい生活を強いられています。
しかし、そのような状況に置かれてもなお、前を向き自分たちの力で未来をつくりあげていこうとする人たちがいるのもまた事実です。
現在、テラ・ルネッサンスでは冬季募金キャンペーンを行っています。
コンゴの人々が「未来をつくる力」を十分に発揮できるような環境を整える支援活動に、皆様のお力添えを頂けないでしょうか。ご協力の程、宜しくお願い致します。
冬季募金キャンペーンについて詳しくは以下のURLをご覧ください。
https://www.terra-r.jp/tokibokin2019.html
〈参考資料〉
・外務省 コンゴ民主共和国 基礎データ(2019年12月12日参照) https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/congomin/data.html#01
・国連安全保障理事会決議596(2010)https://www.un.org/ga/search/view_doc.asp?symbol=S/2010/596
・国連人口基金プレスリリース(2014)https://www.unfpa.org/press/least-two-women-each-hour-fall-victim-sexual-violence-democratic-republic-congo-says-unfpa
・デニ・ムクウェゲ、ベッティル・オーケルンド共著、加藤かおり訳(2019)「すべては救済のために デニ・ムクウェゲ自伝」
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記事執筆/
啓発事業部・インターン
野田歩美