【カンボジア】水不足と新型コロナウイルスを乗り越えて、持続的な生活のモデルとなるために
【アジアレポート/2020年3月_Topic01】
昨年から少しずつ建設を進めてきたロカブッス村のモデルファームは、2019年の12月末から新たに4世帯の村人たちが、村の村長さんらとの話し合いを経て、野菜の栽培を始めることになりました。
すでにため池を掘って雨季に水が溜まっていましたが、皆様からご支援でため池から水を汲み上げるポンプやタンクを建設することができ、配水システムを4世帯の村人たちと作ることができました。そして、2020年1月から土地を分配し、野菜栽培を始めることができました。空芯菜や葉物野菜の栽培から始め、2月から収穫し、販売を始めています。
世界的に異常気象、そして新型コロナウイルスのパンデミックという問題が起きていますが、このロカブッス村のあるカムリエン地域も例外ではありません。雨量が記録的に少なく、幸いロカブッス村のため池は、雨季の最後に降った雨のおかげで、水が溜まっていましたが、その他の村では1月末の時点でもうため池にも水がなく、井戸も水が出なくなる状況でした。
その影響で、根が深くはらない龍眼などの果物の木は、水をやることができないため、多くが枯れていました。茶色くなって枯れてしまった龍眼の木は、切り倒され、燃やされている光景は、本当に悲しい状況でした。ロカブッス村を流れる川も、上流のタイで水がせき止められてしまい、水が流れなくなっていました。
ため池に溜まっていた水が、このままでは2月末には枯れてしまいます。そこで、村長さんらとも話し合い、村の中を流れている川で、少し深くなっているために流れずに溜まっている水をポンプでくみ上げ、ため池へ入れることにしました。
水の問題の後は、新型コロナウイルスの影響がカンボジアにも出てきました。またこのカムリエン郡では感染者が出たという情報はありませんが、多くのタイへの出稼ぎに出かけていた村人たちが、新型コロナウイルスの感染の拡大の影響で、タイとの国境が封鎖されることとなり、3月20日前後に多くの出稼ぎ労働者たちが村へ戻ってきました。
出稼ぎで日当を稼いでいた村人たちが、これからどうやって生活していくのか、非常に厳しい状況にあります。しかし、村人たちへの代替手段として、これまで家で自立して生活できる家畜飼育や家庭菜園を支援してきました。移動が制限され、レストランやバー、学校も閉鎖された状況で、仕事がない人たちが増えていますが、農村では特に家にいてできることが、家畜の飼育や家庭菜園です。
1月からモデルファームに住み込んでいるポイさんの世帯は、2月末から3月の間に335,900リエル(≒US$84)の収入を空芯菜やかぼちゃの蔓の販売で、得ることができました。その他の世帯も栽培を始めて、収入を得られるようになってきています。
これまで乾いた荒地でしかなかった場所が、綺麗な緑色に変化した様子を見て、近隣の村人たちも直接その場で収穫した新鮮な野菜を購入し、家に持って帰ります。
グローバル経済に依存した生活が非常に脆弱であることから、村のなかでできるだけリスクを分散させて、収入源の多様化を図る活動をこれまで考えて実践してきました。このことは、今回のような問題が起きた時に、村人たちにとってもレジリエンスを高めることにつながっていることを実感します。
決してすぐに多くの収入になるわけでもありませんし、時間がかかることでもありますが、家畜の飼育や家庭菜園を組み合わせた循環型の有機農業は、農村の人たちにとって支出を減らし、収入を向上させることで、しなやかな生活を取り戻すことにつながります。
村の一部の土地は、モデルファームと同じような痩せた土壌で、作物の栽培に適さないと思っている村人も多いですが、現地NGOの農業専門家の持つ技術で、作物の栽培ができることを見てもらうことで、ぜひその技術を真似して、まずは自分たちの食べる野菜を栽培してほしいと思っています。
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記事執筆/
アジア事業部
江角 泰