【カンボジア】残された森と地雷撤去 - 地雷や不発弾が傷つけるのは人間だけではない
【アジアレポート/2020年3月_Topic02】
テラ・ルネッサンスではカンボジアで、2019年4月から地雷撤去団体MAG(Mines Advisory Group)の機械チームの活動費1年分の資金提供をしてきました。2020年1月-3月までの第四四半期の報告書が届きましたので、ご報告いたします。
(報告書はこちらからご覧いただけます。)
機械チームは、「ボブキャット」と呼ばれる潅木除去をする機械を使用し、地雷撤去をする際に最も時間のかかる土地の整備を安全に効率的に実施するものです。
地雷撤去のためには、地雷探知犬や金属探知機などで、どこに地雷や不発弾などの危険物があるのか探知する作業の前に地雷原は草や木などが覆れているため、それらを除去する必要があります。
そして、まだ地雷や不発弾が埋まっている状態で、これらの草木を取り除く作業は最も時間がかかります。それをボブキャットという遠隔操作で動く機械を使うことで、効率的に早く潅木を除去し、地雷探知犬や金属探知機を使って探知ができるようになります。
今、カンボジアで地雷撤去を進めている場所は、バッタンバン州サムロート郡になります。サムロート郡は、クメール・ルージュの支配地域で、非常に多くの地雷が埋設された場所になります。
多くの地雷が埋められ、もちろん多くの地雷被害が出てきた場所になります。有名なのは、アメリカの女優で映画「トゥーム・レイダー」の撮影でカンボジアを訪れたアンジェリーナ・ジョリーが養子にしたマドックスくんの出身地域でもあります。そうした縁もあり、アンジェリーナ・ジョリーは、サムロート郡の一部の地域の森林を保護する活動もしています。
このサムロート郡で、2020年1月-3月の間に4カ所の地雷原で、機械チームは90,650㎡の土地を整備しました。そして、地雷探知犬チームが撤去し、148,662㎡の土地を安全にすることができました。
2発の不発弾が見つかり、安全に爆破処理することができました。地雷原は、広い土地に地雷や不発弾があることが推定されますが、実際には1発や2発だけしか見つからないこともあります。
ただ、この少ない数でも、地雷撤去によって地雷がないことを確認しなければ、村人たちが安心して生活することはできません。こうして安全が確認された土地によって、167世帯、683名が受益しました。1年間の合計では、12発の地雷・不発弾を除去し、530,613㎡(=東京ドーム11.3個分)の土地を安全にすることができました。これにより2,167世帯、8,658名が受益しています。
私も最近サムロート郡に何度か行く機会がありましたが、地雷が残っている地域では、まだ豊かな熱帯雨林だった森が残っている場所もあります。そして、アンジェリーナ・ジョリーが保護活動しているエリアもかろうじて森が残っていました。
地雷撤去は、潅木除去をしなければ、除去作業ができないため、一度草木を取り除く必要があります。その中には、他の地域では無くなってしまった、現地の人たちが昔から利用してきた薬草や自然の果物、木の実、きのこや野生動物などの多様な生物の宝庫でもあります。
安全な大地を取り戻すためには、仕方がないことではありますが、地雷や戦争で残された不発弾が傷つけ、破壊するのは、人間だけではなく自然の動植物も同じなのです。地雷撤去は、戦争後の対処療法でしかありませんが、同じく重要なのは、戦争をしないこと、地雷や不発弾をこれ以上次世代に残さないことです。
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記事執筆/
アジア事業部
江角 泰