【カンボジア】新型コロナウイルスの影響をしなやかにかわす障がい者世帯
【アジアレポート/2020年5月_Topic02】
カンボジアのバッタンバン州カムリエン郡の障がい者100世帯への生計向上支援も4年目に入りました。事業期間残り9ヶ月です。カンボジアでも新型コロナウイルスの影響が、カンボジア経済に大打撃を与えています。
3月には国境が閉鎖され、人の移動も制限されてしまいました。脆弱な障がい者世帯への感染を最初は懸念し、一部の活動を取りやめたり、延期したり、とにかく感染予防に努めていました。
幸いにも新型コロナウイルスの感染は、対象地域の農村部までは及びませんでしたが、観光で成り立っていたシェムリアップや都市部のレストラン、ホテル、お店などは大きな経済的打撃を受けています。
農村部に住むもともと脆弱な村人たちがどういう影響を受けているか心配でした。しかし、懸念だった水不足も雨季に入り、少しずつ解消されてきました。5月末の時点で100世帯中79世帯が家庭菜園での野菜栽培に取り組んでくれています。
残りの世帯も、まだ雨が十分に降っていないため、水がなくて栽培できない世帯もいます。新型コロナウイルスの影響で、集まって実施していた野菜栽培訓練は中止していますが、調査の時に野菜栽培方法を印刷したA4の紙と野菜の種2種類を5月から渡すことで、代替手段としています。
今回は家庭菜園をしているムーン・ハンさんを紹介したいと思います。ハンさんは、家庭菜園でいくつかの野菜を栽培して、すでに収穫を始めています。まずはロングビーンという豆。ここ2ヶ月で2kgを自家消費しています。
そして、残った5kgを販売して収入も得られています。ヘチマは、カンボジアではまだ若い実を炒め物やスープにして食べたりしますが、2kgを自分たちで食べ、10kgを販売しました。また1kgを近所に分けています。
別の種類のヘチマも1kgを自家消費、1kgを販売し、1kgを近所へあげました。カンボジア料理で最もよく使われる食材の1つである空芯菜も1kgを自家消費、4kgを販売しました。そして、1kgを近所にあげています。
写真:青々と育った空芯菜と奥にヘチマの花が咲いている。
それほど広い畑ではありませんが、農村のいいところは小さな畑で、食べ物を自給できるところです。田んぼが少なく畑の多い地域ですが、家の周りの小さな土地でも自分たちが食べる以上の野菜を収穫していて、ハンさんも販売して収入になっています。
さらに近所さんには、無償で野菜をあげていて、ハンさんのご近所さんとの関係性が分かります。
これまでサポートしてきた鶏飼育などの家畜飼育や家庭菜園は、できるだけ広い農地を持たず、家の周辺で障がい者でもできる活動でした。新型コロナウイルスで、自宅待機が推奨され、タイの国境も閉鎖されたなかで、こうした家でできる活動には大きな影響が出ませんでした。
お金に換算すれば、わずかなものでしかないかもしれませんが、出稼ぎによる収入が無くなってしまった人もいる環境のなかで、特筆すべきところかもしれません。
写真:ツタを登らせた下に育つヘチマの実
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記事執筆/
アジア事業部
江角 泰