ウガンダ:今、そこにある命の危機に【緊急支援プロジェクト】
ウガンダでは、ここ2週間ほどで感染が急激に増えてきています。厳しいロックダウンをせずに初期に感染が爆発したタンザニアを超えて、522人まで増えています。(2020年6月5日時点。)
中でも、北部の南スーダンとの国境でトラックドライバーやその接触者の感染がかなり広がっています。
先週末(5月30日)には、一気に84人の感染者が見つかりましたが、そのうち50名は南スーダン国境で見つかったトラックドライバーで、32人は隔離施設にいた接触者らです。
現在、ウガンダでは全国で16の大きな公共病院がコロナ患者を受け入れているのですが、北部では私たちの活動地域であるグル病院が最も多くの患者を受け入れています。
グル病院は、66名を受け入れて(1名は退院)おり、ウガンダでは最も多くの患者が集中している状態です。
写真:ウガンダで最も多くの患者が集まるグル病院。*陽性患者の病棟ではありません。
◆ロックダウン下で迫る命の危機
患者数を増やしているのは新型コロナウイルスのみではありません。
現在、ロックダウンの影響で、コロナ以外の感染症や病気によって、多数の命が奪われているのです。
コロナ以前から、毎日約60人がマラリアや結核で死亡している状況ですが、ロックダウン下では、移動手段がなく病院にもいけず、さらに多くの(特に乳幼児が)既存の病気、感染症で命を落としていることが予測されます。
写真:マラリアやその他の感染症で重症化した人たちの病棟、入院する子どもたちの様子。
このグル病院も元々は11名くらいしかコロナ患者を受け入れられないとも言われていましたが、現在は、なんとか陽性患者66名を隔離病棟に受け入れています。
これは、日本人から見ればほぼ医療崩壊状態です。(一応、75名のコロナ患者用にベットを用意しましたが、それを超えるのも時間の問題です。)
この状況を見て、地元国会議員や地域リーダーたちが、「これ以上、グルにコロナ患者を入れるな!グル病院は既にキャパを超えている!」とデモをして道路封鎖するようなことも起こっています。
◆グル病院への医療機器支援
こうした状況を鑑みて、テラルネとしても、グル病院での院内感染を防ぐためのサポートを即開始しました。
グル病院には、軽症患者に対応するための十分な基本的な医療機器も不足しているため、一般患者と共用している状況です。つまり、院内感染のリスクが極めて高くなっています。
そこで、グル病院の院長や担当医師、医療機器のエンジニアらと協議した上で、最低限、必要な医療機器を調達中です。
この支援は急ピッチで進めており、早ければ明日には、首都のカンパラから機材が到着して、来週初めには供与・設置を完了できるようになります。
ただ、もちろんこれだけで十分ではなく、政府や他の援助機関の医療支援も必要です。とにかくこれ以上、感染者を増やさないことが何より重要です。
◆隔離施設からの感染と感染の恐怖
現在、感染者が隔離施設からも出ており、隔離施設内で感染が広がっている可能性も危惧されています。
(補足:ウガンダの南スーダンとの国境近くにあるアジュマニ県では、国境を行き来する多ラックドライバーや不法にウガンダに侵入した南スーダン難民の方たちを3つの隔離施設に2週間隔離している。)
隔離施設に行くと怖いという理由で、陽性患者と接触した人たちが逃げてしまったり、隔離施設に来ることを拒むこともあります。(結局は強制的に連れて行かれます。)
その理由は、自分が感染していないかもしれないのに、感染する恐れがあるという「恐怖」と、隔離施設の生活状況が劣悪だからです。院内の感染予防は不十分で、十分な食事も提供されていない状態で、テラルネからも食糧や物資の支援を続けています。
◆地域から偏見を受けていた元子ども兵らのマスクが、地域を救う
生活維持支援として、ロックダウン下で洋裁店を強制的に閉めざるを得なかった元子ども兵たちに、マスク生産の仕事を作り、彼ら彼女らが収入を得られるようにサポートしています。
生産されたマスクは主にグル県内の病院や診療所などで医療従事者や、病院のスタッフ、患者さんらに使用してもらえるように配布を行っています。
写真:生産されたマスクを医療従事者や病院のスタッフ、患者さんらに配布する様子。
また、マスクは、援助関係者らの中でも持っていない方々も多くいるので、コロナ対策に従事する援助関係者や行政官らの集まり(タスクーフォースチーム)のメンバーたちにも配布しました。
評判も非常によく、最近、どこに行っても、マスクを欲しいと声をかけられます。(県知事も使っています。)
先月、政府はマスクの着用を義務化して、マスク着用を条件に諸々のロックダウンの規制を緩めていくと発表しました。同時に、政府も全国民(6歳以上)にマスクを配布するとは言いましたが、人口4000万人を超える国民全てに配布するには、数ヶ月かけても、まずまず、不可能です。
現地の人たちも、さすがにそれは期待していませんが、それでもマスク着用しないと、様々な社会経済活動ができないので、なんとか手に入れようと、自宅で作っている人たちも多くいます。
ただ、現状は工場は稼働していますが、街の洋裁店はいまだロックダウン下で営業は禁止されているので、マスクの供給量は圧倒的に不足しています。
また、これは以前からですが、輸入物の使い捨てマスクなどは、通常価格の数十倍の値段で販売されていたりするなど、とても貧困層には購入できるものではありません。
こうした中、当会を卒業した、元子ども兵や最貧困層らが毎日、自宅で作業して作っているマスクは、本当に社会全体、感染予防にも役立っています。
写真:医療従事者の方にマスクを手渡す様子。
10年前は、社会やコミュニティから、差別や偏見を受けたり、バカにされたり、家族親戚からもお荷物扱いされていた元子ども兵たちが、今、社会の人々にとって、なくてはならないものを供給していることに感動を覚えたりもします。
今回はご紹介したのはグルの様子ですが、アジュマニ県の難民居住区でもマスク生産、配布中です。可能な限り、国民が安心して生活できるようにマスク生産は継続していきたいと思っています。
また、ロックダウンが来週くらいから少し緩和される予定ですが、そうすると人が動き始めてマスクの需要はますます高まることが予想されます。(政府の生産するマスクがいつになるかは全く見通しが立っていません。)
ですので、これからも急ピッチでマスクの生産、配布を行っていきます。
今回の緊急支援プロジェクトにご協力頂いた皆様のおかげで、本当に多くの活動を、ロックダウン下で行うことができました。改めて、心より御礼申し上げます。
報告:小川真吾
◆ファンクラブ会員として私たちの活動に参加しませんか?
「新型コロナウイルス対策緊急支援プロジェクト」では、5月31日をもって、本キャンペーンにおけるご支援の呼び掛けを終了しました。結果、921名の方々から24,460,616円のご支援をお寄せいただきました。日本国内も大変な状況であるにも関わらず、お一人お一人からの温かいお気持ちとご支援が本当に嬉しかったです。重ねて御礼申し上げます。
新型コロナウイルスの感染拡大のなか、弊会の事業地であるコンゴ民主共和国では大規模な洪水災害が発生し、多くの人々が生命の危機にさらされる事態となっています。また、ウガンダやコンゴに加え、私たちが活動する隣国ブルンジにおいても新型コロナウイルスによる被害が深刻化しています。
その中で、テラ・ルネッサンスだからこそ「できることがある」と考え、感染予防活動や生活に困窮している人々へ生計支援活動を実施しています。
キャンペーンとしてのご寄付の呼びかけは終了しましたが、これからも活動地でのコロナ対策のための支援は続いていきます。
テラ・ルネッサンスでは、月々1,000円から継続的に支援していただけるファンクラブ会員制度をご用意しております。ファンクラブ会員になって、テラ・ルネッサンスの活動を継続的に支えてくださいませんか。
これからも、みなさまと一緒にテラ・ルネッサンスの活動を推し進められることを心よりお待ちしております。
2020年6月15日 テラ・ルネッサンス一同