【ラオス】不発弾回避教育と生計向上のための職業訓練
【アジアレポート/2020年6月_Topic03】
ラオスはベトナム戦争時の夥しい空爆により、国土の約3割が爆弾に汚染され「一人当たりの空爆が最も多い国」と言われていますが、現在までの不発弾除去数は僅か1.6%です。
本事業地であるシエンクワン県はその中でも最も大きな爆撃を受けた地域の一つで、未だ爆発事故の危険があり、安全な農地の確保も大きな課題です。
2020年に入ってから6月までに、4件の爆発事故が発生しました。そのうち2件は木を植えるために土を掘り起こしているときに、2件は田んぼの草刈り中に発生し、その被害者は大人5名、子ども1名の計6名で、うち大人2名が死亡しました。
上記のような不発弾事故をなくすために、本事業では幼児とその家族への不発弾回避教育(MRE, Mine Risk Education)を大きな柱としています。6月16日から18日にはシエンクワン県においてMREワークショップが開催され、本事業担当スタッフのセンケオ氏(プロジェクトアドバイザー)が参加しました。
本ワークショップは労働社会福祉省の不発弾処理統制機構(NRA、National Regulatory Authority of UXO/Mine Risk Action Sector)主催で、ブンペン・シーサワットNRA副長官を議長として、NRA講師4名により実施されました。
MREの実施過程、MRE実施後の評価法、MREの計画立案、支援する不発弾被害者の選抜、不発弾被害者のサポート後の評価法についての研修が行われ、シエンクワン県PRA(Provincial Regulatory Authority of UXO/Mine Risk Action Sector)および社会福祉部門(Social Welfare Sector)から職員約20名が参加しました。
内容は本事業で実施するMREに直結した内容ですが、これを元に、MREを幼児にとって理解しやすい内容にすることが、幼児への被害を防ぐカギです。現在日本人担当者も渡航できず、活動も思うように進められない状況ですが、スタッフ全員で協力し、準備を進めているところです。
写真:MREワークショップの様子
不発弾の存在は、事故の危険だけでなく、地域住民の生計にも大きな影響を与えています。ラオスは、本来恵まれた豊かな自然と共存しながら生命を繋いでいける地域です。
しかし不発弾の残存のため、ここシエンクワンでは安全な農地の確保が難しいため、木材の伐採などからの収入に頼らざるを得ず、森林減少も進行しています。
そこで本事業では限られた土地でも現金収入が得られやすい養蜂、きのこ栽培、裁縫の職業訓練を実施することで、住民の生計向上を目指しています。養蜂については先行事業からの継続であり、蜂蜜販売は既に住民にとっての生活の支えとなっています。
ところが今回の新型コロナウイルスの影響でシエンクワン県を訪れる観光客への蜂蜜販売や仲買人を通した売買も減っています。そこでラオスで長年障がい者支援を行っているNGO、アジアの障害者活動を支援する会(ADDP)との協働で、蜂蜜クッキーの製品化を試みることにしました。
今後出来上がった試作品の改良を進め、7月には首都ビエンチャンで試食会を実施し、蜂蜜クッキーの販売を目指す予定です。またクッキーの他にも養蜂を活かした商品の考案、裁縫製品やきのこ販売による複数の収入源確保をこれからも進めていきます。
写真:ADDPによる蜂蜜クッキー試作品
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記事執筆/
アジア事業部
飯村