「魂の救済」とつながる場所 ウガンダ事務所 職員 アワチャンゴ・コンシネイト
ただいま行なっているファンクラブキャンペーンのテーマ【「社会」とつながる場所】に因み【「〇〇」とつながる場所 】と題し、テラ・ルネッサンスに関わる人々が「テラ・ルネッサンス」とどのような事につながりを感じているのか聞いていきました。そして、今回が最終回です。
今回はウガンダのグル事務所の職員であるコンシネイトに話を聞きました。
彼女の柔らかな笑顔からは想像できないことを経験しながらも、優しく、そしてエネルギッシュにテラ・ルネッサンスで活動している彼女の「想い」を聞きました。
みなさま こんにちは
私はアワチャンゴ・コンシネイトです。
私はテラ・ルネッサンスのウガンダのグル事務所で元子ども兵社会復帰プロジェクト運営の管理と会計の補佐をしています。また、元子ども兵社会復帰プロジェクトにおける長期的インパクト評価事業で、卒業生の後追い調査やフォローアップを行なっています。
【アワチャンゴ・コンシネイト】
「魂の救済」との出会い
私にとってテラ・ルネッサンスは「魂の救済」とつながる場所です。
私はこれまで紛争で困難に会い様々なトラウマも体験してきましたが、テラ・ルネッサンスで働くことで自分の人生を取り戻し、魂が救済されていると感じています。私はウガンダ北部のパデーという場所で育ち、小学校から中学校までは、北部最大の町であり、現在テラ・ルネッサンスの社会復帰センターがある地域のグルで勉強しました。
当時は、20年に及んだウガンダ北部の紛争の最中でしたので、国内避難民が数多くいました。紛争が激しく、反政府勢力(神の抵抗軍)が道をブロックして物資の供給が止まることもありました。国連からの食料も十分ではなく、塩も調理油もなく料理をしていましたし、衛生用品も手に入りませんでした。
中学時代は寮で生活し、学期ごとに村に帰っていました。今では車で1時間ですが、当時は道が悪く、片道8時間ほどかかり、トラクターなどで村まで移動していました。
村との行き来を繰り返していて、2回、反政府勢力が途中でいたことがあります。その時は、運転手も含めて全員逃げて、しばらく経った後、車に戻り移動を続けました。幸い、車は燃やされなかったので助かりました。
自転車に乗せてもらって村まで移動したこともありました。ある時、叔父さんに村まで送ってもらい、その後、叔父さんが一人でグルまで帰る途中に、反政府勢力に命を奪われてしまいました。
本当に悲しかったです。
でも、このようなことは、私の家族に限って起こったことではありません。
当時、多くの人たちが紛争で命を落としました。
その後、首都のカンパラで高校を卒業して、またグルの同じ国内避難民(IDP)のキャンプに戻りました。そして、カンパラで会計の勉強ができるコースを修了し、グルで国際NGOで約1年、会計補佐の仕事をしました。
その後、大学に行くために学費を稼ぐために、仕事を探して南スーダンに行き、1年間、行政の仕事をしました。2008年からグルの大学で学び、会計の学位を取りました。また、結婚して、大学卒業後に出産しました。そして、南スーダンに戻り民間の企業で働いていました。
しかし、2013年に紛争が起こり、南スーダンで働きはじめて5ヶ月目のときにケニアに避難しました。ケニアに避難した後も、仕事を見つけることができず、南スーダンに戻り、路上で服の販売をし、必死に働きました。
それでも南スーダンでの生活は厳しく、2016年にグルに戻りました。グルでも会計などの仕事を探して回りましたが、やはり見つけることは難しく、パンケーキを作って路上で販売するなど生活は苦しいままです。
そんなとき、2017年にテラ・ルネッサンスと出会いました。初めはパートタイムの職員として働き始め、2018年からフルタイムの職員として働いています。
「魂の救済」とつながる場所
ずっと生活が苦しく不安定だった中で、テラ・ルネッサンスでフルタイムスタッフとして給料を受け取ることができたことは、私の生活に安心をもたらしました。私は計画的に食事や学費などを工面し、家族を支えることができるようになりました。また今では家で鶏を買って育てることもできています。
元子ども兵社会復帰プロジェクトの立ち上げの頃から活動しているスタッフのトシャと、卒業生の後追い調査を一緒にしています。彼女は励ましてくれたり、自分のキャリアを後押しをしてくれます。それは、私にとって大きな励みと希望です。
【元少女兵の卒業生との談笑の様子。左奥がコンシネイト、左手前がトシャ】
また、テラ・ルネッサンスが行う元子ども兵や最貧困層の自立支援において、それぞれの状況に応じたカウンセリングや相談を積み重ねていきます。私はそのカウンセリングも彼ら/彼女らの「魂の救済」にもつながると感じています。
従軍中、完全に服従を強いられていた元子ども兵の人たちは、故郷へ帰った後も、身体的・精神的な傷を抱え、子ども時代に読み書きや計算といった教育の機会も奪われたため、仕事にも就くことは簡単ではありません。そのために自立できず、自尊心がとても低い状態に置かれています。
そのため私たちは職業訓練と開業支援などを通して、技術や能力を身につけるだけでなく、彼らの自尊心の向上を促し、自ら考えて何を決断すべきで、何を乗り越え、何を断つべきなのかを学ぶ訓練やアドバイスなどをしています。そうすることで彼ら/彼女らが自信や自尊心を持ち、自らの力で考え、行動し、自立できるようになります。
テラ・ルネッサンスの支援を受けた元子ども兵や、最貧困だった人たちは、卒業した今では、学校で教育を受け、英語を話せる人たちよりも、自立した生活を送っています。自分で家賃を払う。土地を手に入れる。移動のためのバイクを買う。子どもを育て学校に行かせてあげる。そのようなたくさんの変化を見せてくれました。
もちろん、職業訓練を終え、ビジネスを始めてから家庭も仕事もうまく行く卒業生もいれば、収入はあっても、むしろ収入があることで旦那さんに利用されたり、妬まれたり、また家族との関係で悩む卒業生もいました。私は彼女たちの相談に乗り、彼女たち自身が選択をし、困難な状況を乗り越えていけるように励ましながらサポートをしています。
そして、これから
テラ・ルネッサンスで働いて、受益者を元気づけてアドバイスを続けていきたいです。例えば、「10年後に、卒業生が収入を得て自立した生活を続けて、幸せになっている姿を見たい。」こんな想いもあります。
彼らが着実に成長すること。より強固な自尊心を持ち続けること。より大きな希望に満ちあふれていくこと。また、子どもたちが元気に育ち、世代を超えて、幸せが広がっていくこと。このようなさまざまな姿を見たいです。
今の洋裁や木工大工の仕事だけでなく、自分でキオスクを開業するなども良いと思います。そうすることで将来にわたってより自立した生活につながるのではないでしょうか。
人生の中では困難なことに直面することがあります。卒業生は収入を得ることができるようになってから、結婚して夫から暴力を受けて家庭の状況が悪くなる例もあります。私たちは彼女らがそんな状況でもより良い選択ができるように、励ましたり、相談に乗っています。
そして、それらの困難を乗り越えて自立していく卒業生は、他の卒業生や周囲に対して、ぜひ証人やロールモデルとなってほしいです。お互いに励ましあって、より自立した幸せな生活を送ってもらいたいと思います。そして、そこに一緒に辿り着きたいと思います。
【卒業生への後追い調査の様子。右端、コンシネイト。真ん中、トシャ。】
ファンクラブキャンペーン2020実施中
コンシネイトの人生や彼女が語った「魂の救済」は、どんなに困難なことがあっても前を向き続けること、そして家族や友達、仲間から支えてもらうことの大切さを教えてくれます。
これは私たちが大切にしている「レジリエンス」という言葉に言い換えることができるかもしれません。「レジリエンス」とは、困難な状況に直面しても、自らに内在する多様な力と、周囲との関係性の中でそれを乗り越えていく適応能力のことです。
アジア・アフリカ現地で働く多くのスタッフは、紛争の影響を受け、たくさんの悲しみ、苦しみ、を経験しました。しかし、そんな中でも彼らは喜びや希望を持ち続けてきました。
そして、彼女の力強さや優しさは、彼女と関わる人々の「魂の救済」につながっています。
彼女が語ってくれた未来は、テラ・ルネッサンスが目指している未来です。カンボジアの地雷被害者やウガンダの元子ども兵の方々が自立した幸せに満ちた生活を送ることができる未来のために、私たちは今日も歩みを進めています。そして、そんな未来をみなさまと一緒に見ることができればと思います。
テラ・ルネッサンスでは、ただいまファンクラブキャンペーン2020を通してファンクラブ会員として当会の活動をサポートしてくれる方を募集しています。テラ・ルネッサンスでのファンクラブ会員とは、月々1,000円から継続支援(マンスリーサポート)をして頂く方のことです。
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インタビュー:海外事業部 鈴鹿達二郎
編集: 啓発事業部 インターン 福井妙恵