【カンボジア】収入源の多様化でリスクにも対処しながら生計向上
【アジアレポート/2020年9月_Topic01】
カンボジア バッタンバン州カムリエン郡の脆弱な障害者世帯への生計向上支援も、今年で4年目(最後の年)になりました。
スラ・ラオトン村に住む地雷被害者のスヴァイ・ヤットさん(55歳)の世帯に9月にインタビューをしました。ヤットさんは3回地雷の事故に遭い、膝から下の足を切断し、腕も怪我をしました。
地雷による事故も大変だったと思いますが、事業が始まる前の2017年にインタビューをしたとき、畑で栽培していた換金作物のキャッサバの値段が下がり、多額の借金を抱えた話をして泣き出してしまったことをよく覚えています。
今年こそキャッサバの値段が上がると期待して借金を返すために頑張って栽培しますが、非情なことに借金は毎年1,000ドルずつ増えていき、最終的に8,000ドルにまで膨らんでしまいました。
ヤットさんに限らず、このタイ国境地域の多くの農民が単一換金作物であるキャッサバを栽培して、買取価格が下落してしまい、借金漬けになっていました。
その後、借金返済のために仕方なく、農地を販売しました。また2018年から、カンボジア政府から退役軍人の障害者へ補償金が毎月支払われるようになり、なんとか生活していくことができるようになりました。
そして、2017年からテラ・ルネッサンスの支援で、家畜銀行からヤギと鶏の貸し出しを受け、家畜の飼育と家庭菜園での野菜栽培を始めました。
キャッサバとトウモロコシの栽培以外に、何をしていいか分からなかったヤットさんは、家畜飼育技術を学び、野菜栽培で支出を減らすことを始めました。
そして、販売した農地で得たお金で借金を返済し終わると、キャッサバとトウモロコシの栽培、さらに毎日6.25ドルの収入減の日雇い労働もやめました。
頑張ってキャッサバやトウモロコシを栽培しても借金ばかりが膨らみ、さらに奥さんと日雇い労働をして収入を得たとしても、幸せだと感じることはなかったからです。
■写真1: 事業開始前には涙を見せていたが、笑顔を取り戻したスヴァイ・ヤットさん
現在はヤットさんに笑顔が増えていることに驚きました。以前は食費に毎日3.5ドルかけていましたが、現在は野菜を自分で栽培しているため購入する必要はなくなり、毎日の食費は3ドルに減りました。
ヤットさんの家庭では、以前から食べ物やスイーツを隣人に分けたりしていましたが、今は野菜も共有するようになり、さらに関係が良くなったそうです。
家畜銀行への返済が終わったため現在までにヤギ8頭を販売し、60ドルの収入につながっています。鶏も17羽を自家消費していますが、5羽を販売して26ドルの収入にもなっています。
将来は、井戸を掘って野菜栽培を拡大したり、ヤギや鶏飼育を拡大していきたいと話してくれました。またリスクの少ない果物の木を植えたりして、収入源も多様化させたいとのことです。
そんなヤットさんは今ではとても幸せだそうです。
■写真2: 現地スタッフのクン・チャイ(左)にインタビューを受けるスヴァイ・ヤットさん(右)と奥さん(中央)
事業の一環であるグローバル経済のリスクとお金に関するワークショップで収入源の多様化や増収を伝えました。ヤットさんはさらに支出を削減することの重要性も理解し、実践してくれているのでとても嬉しく思います。
現在のカンボジアでは、ヤギを始め、家畜の値段が上がっています。しかし、単一換金作物に依存して失敗した教訓とし、1つの家畜だけに依存するのではなく、鶏や野菜、その他の果物の栽培など、収入源を多様化してリスクを分散させる必要性を学びました。
そうすることで、コロナ禍で仕事が無くなったり、国境が閉まってためにいるため出稼ぎに行くことも出来なくなったカンボジアで自立して生活をしていくことができます。
ヤットさんの世帯にはこれからも注目していきたいと思います。
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記事執筆/
海外事業部アジア事業担当
江角 泰