日本でもDVなどが問題になっていますが、テラ・ルネッサンスの活動地域であるコンゴ民主共和国(以下、コンゴ)では性暴力が深刻な問題です。
2016年に「女を修理する男」が公開されたことで日本におけるこの問題の認知度も高くなりました。
その主人公であるデニ・ムクウェゲ医師は、戦闘の続くコンゴ東部・南ギブ州ブカヴで医療活動を続ける婦人科医です。暗殺未遂に遭いながらも、医療、心理ともに4万人以上のレイプ・サバイバー(性暴力被害者)を治療してきました。その功績をたたえて数々の賞を受賞しており、2018年にはノーベル平和賞も受賞し話題になりました。
テラルネが支援している女性たちの中にも、ムクウェゲ氏に治療していただいた元患者がたくさんいます。
コンゴでは1996年からコンゴ紛争が続いています。隣国の紛争が飛び火し、独裁を続けていたモブツ政権が倒され(第一次コンゴ紛争)ましたが翌年の1997年には新たな反政府勢力が武力闘争を始めます。(第二次コンゴ紛争)
2002年末に和平合意が成立しましたが、残念ながら現在も戦闘が続いています。累計で約600万人という第二次世界大戦後世界最悪の犠牲者を生んでいると同時に、大規模な性暴力が紛争手段として行われ、コンゴ東部は「世界のレイプ中心地」「女性と少女にとって世界最悪の場所」とも描写されています。
コンゴは鉱物資源が豊富であるため、武装勢力の資金源として利用されます。その鉱物資源を利用するために地域を支配する効率のいい”武器”が性暴力なのです。
性暴力はお金を必要としないうえに被害を受けていない住民さえも恐怖に陥れます。鉱物資源を自分たちの思うままに利用し、住民を労働力として活用するのにとても便利がいいのです。
被害女性たちは身体的な傷のみならず、精神的に深い傷も負い、さらに周囲からの差別や家族を含めた人との関わりも全て奪われます。結果的に生活する手立てを失うのです。性的暴力を受けて出産した子どもを抱える女性もおり、経済的な困窮は自身だけでなく子どもにも影響します。
テラ・ルネッサンスはこのような性的暴力を受けた女性たちが過去のつらい記憶から立ち直り、自立して生活していけるように社会復帰支援を行っています。
彼女たちの収入源を得るために洋裁訓練を行っています。技術を身につけた女性たちにミシンの供与をするとともに、女性たち同士でグループを結成し、小さな洋裁店を開業するビジネス支援を行います。
また、困窮したメンバーの保険金の支払いやビジネスへの投資金として貸し出しができるよう、女性たちが毎月お金を出し合い、共同貯蓄をして相互に支え合う仕組みも作っています。
過去の活動報告はこちらから↓
自立して生活出来るようになった女性が増えたことはもちろん、洋裁店は彼女たちが集まりおしゃべりをする憩いの場にもなり、同じように傷を負った女性たちと関わる中で人との繋がりが生まれています。
残念なことに性暴力はなくなっていません。テラルネの社会復帰支援の卒業生が増えてもまた新しい被害者が出続けては意味がありません。
しかしこの問題に対して日本にいる私たちにも出来ることはあります。それは被害の原因となっている紛争鉱物の需要をなくすことです。レアメタルは電子機器に多く使われるレアメタルや一部のジュエリーも紛争鉱物である場合があります。産出から販売の間に含んでしまうこともあり、紛争鉱物を使っていないかどうかの判断はとても難しいです。しかし、再利用やリサイクル、また自給する努力は出来ます。
女性に対する暴力撤廃デーである今日、改めて女性に対する暴力の問題について考えてみてはいかがでしょうか?地理的には遠いコンゴの性暴力ですが私たちは無関係とは言えません。私たちにも出来ることはあります。ぜひ一度身の回りを見回してみてはいかがでしょうか?
<参考文献>
東洋経済オンライン”性的テロを告発したノーベル受賞医師の凄み”, 米川正子, 10月9日
HUFFPOST”「銃で性器を撃ちぬく。これは性欲ではなくテロだ」ムクウェゲ医師、コンゴのレイプ被害を語る”,2016年10月14日,中野渉
(最終アクセス:11月24日)
MONITOR”A brief history of Congo’s wars”,2011年11月29日, Mollie Zapata
NEWS WEEK”コンゴ「武器としての性暴力」と闘う医師に学ぶこと”, 米川正子, 2016年10月2日
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記事執筆/
啓発事業部インターン
野田 怜弥