【インタビュー】創設者・鬼丸が、冬の感謝月間に寄せて伝えたい想い 前編
11月から実施している冬の感謝月間、コンセプトは「社会の“灯火”を育む」。
テラ・ルネッサンスの創設者であり理事でもある鬼丸の、感謝月間に寄せて伝えたい想いについてインタビューを行いました。ぜひ、ご一読ください。
19年間の活動で学んだこと
ーーテラ・ルネッサンスが19年活動してきた中で、アジア・アフリカの紛争被害者の方々から教わったことはこのコロナ禍でどう生きると鬼丸さんは思われますか。
「支援の受け手の皆さんから学んだことはいくつもあります。ただし、支援の受け手の皆さんから学んだもので一番大きかったのは、『問題・課題があったとしても人は幸せに生きることができる』ということなんです。
つまり、例えば私たちがいくら支援をしても、地雷の被害者の手足は伸びてこないし、元子ども兵士が体験した過去が消えるわけでもない。けれども、そういう過去や障害や、今抱えている課題を持ったままでも、家族と幸せに暮らすことや、例えば美味しいものを食べて美味しいと思える喜びを感じることはできる。だから生きることはできる。
まとめて言うならば、抱えている課題に対してどうしなやかに生きていくか、いわゆるレジリエントな生き方を支援の受け手の皆さんから学んできたと思います。
そして、この課題に対して自分の抱えている課題、今コロナ禍で社会全体にある課題に対して、どのようにしなやかに生きていくのかというのが日本人も含めて私たち人類に問われている気がするんですよね。
例えば新型コロナウイルスっていうのは未知なるもので、まだワクチンも完全に開発されてないし、治療薬もない。でも現実にそこにある。生活や命に影響を及ぼしている。ならば、この新型コロナウイルスの影響に対してどのようにしなやかに生きていくか、という力をつけることが大事ですよね。
それが今の私たちに必要で、特に新型コロナウイルス関連でいうと、テラ・ルネッサンスはその力をつけるための支援をしている。例えば感染防止のための呼びかけをしたり、消毒のための設備を配ったり、あるいは布マスクの製造を元子ども兵に発注して、加工賃を払って暮らしを支えていったり。
コロナウイルスそのものを撲滅することはできないけども、それにしなやかに生きる力は付けることができる。課題に対してしなやかに生きるレジリエントな生き方そのものを育み、かつ自分たちもそうできるようになりたいなと思います。」
世界が新型コロナウイルスに覆われても、希望を見出せた2020年
ーー今年に入って、テラ・ルネッサンスは新型コロナ緊急支援対策プロジェクトやファンクラブ会員キャンペーンを実施しましたが、このコロナで社会全体が苦しい中でも支援者の方には本当に多くのご支援をいただきました。鬼丸さんは、この支援者の方の想いをどのように受け止められていますか。
「まずもって、それはとてもありがたいことだと思っています。それぞれ日本国内でも新型コロナウイルスの感染によって様々な影響を受けてらっしゃる方がいて、支援者の中にもそのような方々がいらっしゃると思います。
それでもなお、テラ・ルネッサンスの呼びかけに応えて寄付をしてくださっていることに、希望を感じます。それは何の希望かというと、やはり自分も大変なんだけど、他者の大変さにも共感できる力が人間にあるんだなって気づかせてもらえる。
自分も大変なんだけど、他者も大変だから自分のできる何かをしよう、と思う気持ちが社会をより良くしていくし、これまでもより良くしてきたんだと思います。それが、今の日本の中にも、今の時代の中にもあるってことを、支援者の皆さんが私たちに示してくださった。それが、今回新型コロナ緊急支援対策プロジェクトやファンクラブ会員キャンペーンの中で、見て取れました。
だから、その希望があり続ける限り、私たちは平和への歩みを進めることができる。なぜかというと、どんな時であっても、人は誰かの役に立ちたいってことを、支援者の皆さんが私たちに証明してくださったから、と言えますよね。」
ーーはい、本当にそのような希望が見えた2020年だったと思います。このように支援者の方から灯火が広がっていくと思うのですが、そのような灯火が広がっていく先には、どのような社会があると思われますか?
「そうですね。お互いがお互いを支えあう、相互扶助の世界が実現すると思っています。
ひとり一人の力は弱い、小さなものであったとしても、先ほど冒頭で話したように、それぞれが様々な課題を抱えたとしても、お互いが支えあうことによって、共に幸せに暮らすことはできると思うんですよね。そういう相互の助け合いが実現する。
新型コロナウイルスって、現代になって初めて全人類共通の脅威だったと思うんですね。例えば、戦争にしても災害にしても局所的じゃないですか。今までの感染症も特定の地域での感染が主だった。
今回は新型コロナウイルスによって、全世界・全人類が共に影響を受けてきたという、現代に入ってほぼ初めてのことだと思うんですよね。その時に、国境を超えて、人種や民族を超えて、共に助け合っていかないと、この地球社会の中で、命を育む、生きていけないということもよくわかったはず。
だからコロナ禍の先にあるものっていうのは、お互いに助け合う、そういう社会が実現してほしいし、実現するだろうとも希望を持っています。」
社会構造を変える、運動体になる
ーーテラ・ルネッサンスの取り組みは、テラルネに関わる人だけではなくて、もっと大きな社会というか、ひいては世界に向けてメッセージを発している印象を私は受けるのですが、もしそうであるとしたら、その理由には何がありますか。
「一つは、私たちが取り組んでいる子ども兵や地雷などの紛争に関連する課題って特定の人たちが運動して変わるものではないんです。そのような課題を生み出している社会構造、つまりシステム・仕組み自体を変えなければならない。とすると、多くの人の関心と行動が必要なわけですよね。
その社会構造を作っているのは、この社会に生きている我々一人ひとりだから、一人ひとりの意識や関心が高まったり変わったりしない限り、そして行動を起こさない限り、この社会の構造やシステムは変わらない。だから、支援者・受益者・私たちって関係性以外の中にいる一般の社会の皆さんにも、呼びかける必要性があると思っています。
そしてもう一つは、その支援者や紛争被害者の方から学んできた、さっきのレジリエンスな生き方とか人間として大切なことって、私たちも参考になるけど一般社会に生きている人々においても、何か参考になる大事な生き方だと思います。だからそういうことも伝えていきたい、というこの二点があって、社会の多くの方々にいろんな働きかけや訴えをしているんだと思います。」
ーー社会構造を変えるという点について、テラ・ルネッサンスを表す言葉として、最近鬼丸さんは「テラ・ルネッサンスは運動体」という言葉を使われていると思うのですが、それはどのようなイメージで使われている言葉でしょうか。
「今ある社会課題を改善もしくは解決していったり、今課題や苦しみを抱えている方々をサポートするのは事業なんですよね、事業によって、そういった方々をサポートしていったり、課題解決に資することができると思っています。
でも、先ほど言ったように、そのような社会課題っていうのは、社会の構造やシステムが生み出しているとするならば、この構造やシステムを変えるために社会や人々の意識に働きかけ続けなければいけない。とすると、これは一つひとつの事業じゃなくて、様々な事業が有機的に繋がりあって、なおかつ連続でいろんなことを働きかけていく社会運動じゃなきゃいけない。
なので、そういう意味で社会運動を担う運動体としての役割がテラ・ルネッサンスにある。だから講演とかワークショップとか、例えばこういう企画もそうですけど、SNSで発信したりすることも重要なんです。
テラ・ルネッサンスは決して支援だけの団体、事業だけの団体ではなくて、支援と啓発、事業と運動というバランスを取って、すべての生命が安心して生活できる社会を作ろうとしている、ということから『運動体』という言葉を使っています。」
冬の感謝月間2020開催中
この冬、テラ・ルネッサンスは、『冬の感謝月間2020』として、ひとり一人が持つ灯火を広げ、この新型コロナウイルスに覆われた社会を照らしたいという特別な期間をスタートしました。