【インタビュー】創設者・鬼丸が、冬の感謝月間に寄せて伝えたい想い 後編
インタビューの前編では、テラ・ルネッサンス創設者・理事の鬼丸に、19年間の活動の中で自立に励む方々から学んできたこと、そして支援を寄せてくださる皆さまへの感謝と希望について取材しました。
後編では、前編の最後に出てきた「運動体」「有機的につながる」という言葉をキーワードに、テラ・ルネッサンスの組織としてのあり方、コロナ禍においてテラ・ルネッサンスにできること、などについての鬼丸の「今、伝えたい想い」をぜひご一読ください。
一つひとつが輝くからこそ、テラルネの価値が高まる
ーー前編のインタビューの最後に、社会構造を変えていく「運動体」としてのテラ・ルネッサンスのあり方について伺いました。その中で、「様々な事業が有機的に繋がる」という言葉がありましたが、この状態、または「有機体」としてのテラ・ルネッサンスはどのようなものでしょうか?
「有機体っていうのは、イメージでいうと商店街です。商店街って、いろんなお店の集まりで、それぞれのお店が商店街のスペースを借りて、商売してるようなものじゃないですか。
テラ・ルネッサンスも商店街と同じようなもので、アジアの事業もアフリカの事業も刺し子も、例えば啓発も、ファンドレイジングも管理も一つひとつが個性をもって輝いているからこそ、テラ・ルネッサンスの価値が高まる。
テラ・ルネッサンス全体のブランドやテラルネへの信頼性が支援者からあるからこそ、それぞれの事業への呼びかけにもまた、応えていただける。こういう有機的なそれぞれの事業同士のつながりが、テラ・ルネッサンスとして一つの生命体を作っている。なので、有機的なつながりを大事にしようということです。
だから逆にいうと、どこかの事業だけ頑張ればいいということではなくて、全ての事業がそれぞれの責任と役割を果たすことによって、テラ・ルネッサンス全体の価値が高まるという意味で、『有機体』という言葉を使っています。
でもこれには弱点がありますよね。わかりにくい。例えば、事業体、事業をする立場からすると、ファンドレイジングという意味では、説明しやすいので一つの課題を掲げている方がやりやすい。しかもその方が人の心に刺さりやすいじゃないですか。
でもうちは、地雷もやってるし、子ども兵もやってるし、刺し子もやってるし、なんだそれは、みたいな感じじゃないですか(笑)」
ーーでも、多様な窓口があった方が、いろんな人に響くところもまた違ってきて、アプローチできる層もおそらく多様になりますよね。
「そう、おっしゃる通りです。そうすると社会運動としては、正しいですよね。
つまり、広く社会に訴えかけるんだから、子ども兵の切り口だけだったら反応しなかった人が、カンボジア、地雷、有機農業とか、刺し子、被災地支援とか、いろんな文脈でいろんな人たちが興味を持ってくださるはずだから、広く社会に訴えかけやすいよね、と思っています。」
国内問題に取り組むNPO、D×Pとのパートナーシップ締結
ーーまさにこの話の流れてお伺いしたいのが、先日発表された国内問題に取り組むNPO、D×Pさんとのパートナーシップの締結についてです。
この取り組みは、他のNGOを見ても余り過去に例を見ない試みだと思うんですけど、これも「国際問題に取り組むNPOのテラルネ」というよりかは、「運動体、社会運動であるテラルネ」という風に考えた方が腑に落ちる気がします。
「そうですね。事業だけ考えれば、本来海外であったり、子ども兵や地雷といった紛争に関連する課題に取り組むのがテラ・ルネッサンスなんだけど、『すべての生命が安心して生活できる社会を実現する』というビジョンから照らし合わせて社会運動をしていくとすると、国内・国外ってないはずなんですよね。
だから、国内の青少年の課題にD×Pさんへの支援を通じて間接的な形だけど関わるのは、ビジョン・理念から照らし合わせると、もしくは運動体という定義からすると、まず問題はないし、積極的にやるべきだと思ってます。
あわせて言うと、今までテラ・ルネッサンスって災害支援に対して金銭的な支援はやってたんですね。今回の新型コロナウイルスの感染も災害と捉えれば、過去にやった災害支援と変わりはない。そういった意味合いでも、D×Pさんと協働することに関しては、今必要だったからやったという感じですかね。
それに、D×Pさんから学ぶことも多いですしね。D×Pさんのファンドレイジングや広報のやり方、国内課題に対する切り込み方とか、たぶん我々が経験していないことをいっぱい経験していて、また逆も然りだと思うんです。そういう相互の、NPO同士の学び合いってあるようでないので、そういうモデルケースになればいいなとも思いますね。」
閉塞感溢れる今、テラ・ルネッサンスにできること
ーー新型コロナウイルスによって、地球上の一人ひとりが大変な状況を抱えていると思うのですが、このような状況の時って、ベクトルが内向きになるというか、社会に閉塞感が溢れてしまうこともあるかと思います。そのようなコロナ禍で、今テラ・ルネッサンスが社会に対してできることとは何でしょうか。
「私たちの支援の受け手の皆さんが、このコロナ禍や、例えば紛争や災害、コロナ禍以前の課題でも苦しんでいるわけじゃないですか。でもそれでもなお、生きている姿というのは私たちが今までたくさん見てきましたよね。
コロナ禍、紛争、災害、様々な課題を抱えつつも、それでも生きる姿を、この閉塞感溢れる社会や人々に伝えることによって、「それでも生きる、それでも生きよう」という気持ちを少しでも持ってもらえるといいなと思っています。
さらにいうと、テラ・ルネッサンスの職員やインターン、つまりスタッフがそのようなコロナ禍の中でも、社会をより良くするための運動を続けている姿もお示しすることで、あわせて生き抜く勇気を持ってもらえればいいかなと思います。
つまり、テラ・ルネッサンスそのものが希望であり続けることが大事です。テラ・ルネッサンスの理念、考え方と行動そのもので、この状況の中自らが灯火になることが私たちにできることじゃないでしょうか。自分たちの仕事をしていれば、必然的にそれが灯火になると思います。」
ーー最後に、鬼丸さんがこの感謝月間を通して、社会に伝えたいメッセージとは何ですか。
「まず、テラ・ルネッサンスは19年間、本当にたくさんの方々の寄付を始めとするご支援によって支えられてきました。そのことに心から感謝申し上げます。
あわせて言うと、この19年間、テラ・ルネッサンスがやってきたことは決して私やスタッフだけで取り組めたことではなく、多くの支援者の皆さんとともに取り組んだこと、なんですよね。
何を言いたいかというと、例えば元子ども兵を何人社会復帰させたとか、過去にどれだけの広さで地雷除去をしたという実績は皆さんが、いや「あなた」が作ったものだと、だから支援者お一人お一人に社会を変える力があると私は言い切れる。
それは本当に社会全体の課題から見ると、ささやかなものかもしれないけど、そのささやかな力、微力が集まれば、勢力になります。勢力は、勢いがある力と書きますから、つまりその勢いのある力によって現実が変えられてきたということに、ぜひともに誇りを持ちたいなと思います。
そのことを支援者の皆さんに伝えていきたい。そして、そういう仲間にぜひ一人でも多くの方になっていただきたいなということを、社会に伝えたいと思いました。」
冬の感謝月間2020開催中
紛争被害者の人々が、想像を絶する過去を経験しながらも「それでも、生きよう」と前を向く姿に勇気をもらい、私たちは歩みを進めてきました。
そして、こんな光が見えづらい今だからこそ、テラ・ルネッサンスそのものが希望となって、この社会を明るく照らしたい。平和への道をともに歩んできた「あなた」と一緒にこの社会を明るく照らしたい。
この冬、テラ・ルネッサンスは、『冬の感謝月間2020』として、ひとり一人が持つ灯火を広げ、この新型コロナウイルスに覆われた社会を照らしたいという特別な期間をスタートしました。
皆さまの想いもぜひカタチにしていただければ幸いです。