【大槌】「ものを大切にする心を育みたい」という願いが生んだコラボレーション「familiar」×「大槌刺し子」
神戸を拠点にモノ・コト・マナビなど様々なコンテンツを展開するベビー・子ども関連ブランドファミリア。「ファミちゃん」の愛称で知られるこぐまのキャラクターを思い浮かべる人も多いのでは。ファミリアの創業者である坂野惇子(ばんの・あつこ)さんは、「自分の子どもに着せるつもりでお洋服を作りましょう」という信念のもと創業、今でもその精神が受け継がれています。そんなファミリアと大槌刺し子のコラボレーション商品が誕生。今回、ご一緒させていただいた、デザイナーの石田さんや商品課の篠原さんに、企画に込めた想いを伺いました。(聞き手・文:大槌刺し子 吉田真衣)
「子どもの可能性をクリエイトする」
ーー私は関西出身ということもあり、ファミリアさんの名前はよく知っていましたが、今回、一緒に取り組みをさせていただくにあたり、ファミリアさんについて、改めて知ることがたくさんありました。その中で、創業者の坂野惇子さんの子どもたちに対する気持ちに感銘を受けたのですが、ファミリさんの商品づくりでは、どんなことを大切にされているのですか。
篠原さん:いつも念頭に置いていることは、「子どもの可能性をクリエイトする」という企業理念です。「子どもたちの好奇心をかき立てるデザインはどんなものだろう」、「子どもたちが本来もっている個性や感性を伸ばすにはどうしたらいいだろう」など、ストーリー性のあるものづくりを目指しています。子どもたちにとって、快適な着心地やデザインで、また着たくなる、というところも大切にしています。
ーー「子どもたちの可能性をクリエイト」するってすごく素敵ですね。「子どもは可能性のかたまり」だと思います。そんな子どもたちの個性や感性を伸ばすこと、という視点にとても共感します。今回、いろんなご縁がかさなって、一緒にお洋服を作らせていただくことになりました。大槌刺し子とコラボをしようと決めたきっかけについて教えていただけますか。
石田さん:ファミリアでは、「お母さんが自分の子どもに着せるつもりでお洋服を作りましょう」という創業者の想いを受け継いで、モノ作りをしています。ただ、どうしてもサイズアウトして、着られなくなっていく、ということが、子ども服にはあります。でも、せっかくいいものだから、「大切にしてほしい」という気持ちもあり、修理とか、洋服を違う形に変えて、再生できないかという、リユースやサステイナブルへの想いがあります。
そんな時に、刺し子という手法が、ただ可愛いというだけでなく、もともと生地を補強するという手法であることや、あかちゃんのため、将来を祈るために、背中に刺し子をしたという背景を教えていただきました。「ものを大切にする」という気持ちに、親和性を感じ、ぜひご一緒したいと思った次第です。
篠原さん:ファミリアでは、デニムバッグを代表に、手刺繍の商品がいくつかあります。手刺繍の商品は大量生産がなかなかできませんが、やはり温かみのある商品になります。大槌刺し子さんが「手仕事の価値を伝える」ということを大切にしていることも伺い、大変感銘を受けました。商品を通して手仕事の温かみを伝えることで、「ものを大切にする」という心を育んでいただけたらな、と思いました。
あかちゃんから大人まで、「刺し子」によってつながった
ーーそうだったんですね。ありがとうございます。刺し子も、もともと「家族のために」という気持ちが原点です。「少しでも温かくいられるように、長く使えるように」とか、そんな家族を想う気持ちは、ファミリアさんが子どもを想う気持ちと同じですね。「刺し子さんもあかちゃんや子どもが着るんだよ」と伝えると、先輩ママとして俄然やる気も出るようです。
今回の企画で、特に思い入れがあるのはどんなところでしょう。
石田さん:お洋服の撮影に立ち合ったのですが、あかちゃんも子どもも大人もみんなが着こなせるデザインに仕上がっていると感じました。あかちゃんから大人まで、「刺し子」によってつながったという感覚があります。無理なく自然につながっている感じがとても良かったと思いました。
篠原さん:あかちゃんから大人まで、というのは、ファミリアでもなかなかないので、私たちも新鮮で、特別感がありました。
ーーデザインも何度もサンプルを作りながら決めていきました。私たちもやりとりを重ねる中で、ブラッシュアップされていくのを感じていました。
篠原さん:ここに試作の刺繍がありますが、色々試しました。今回は、ジェンダーレスや、親子という点を意識し、シンプルなデザインに「ファミリアらしさ」を出しながら、刺し子の良さも伝えたい、という気持ちで企画を進めました。
テーマは「よく遊ぶ」ピカソのバスクシャツから受けたボートネックシャツとカバーオール
ーー私や大槌のスタッフも、シンプルで、洋服に合わせた時に違和感がない。刺し方と配色で、自分たちが今まで見慣れていた刺し子とも違うイメージになっている、という印象を持ちました。そして、「めちゃくちゃかわいくなってる」と笑。私たちは刺している段階では、なかなか完成したイメージが持てないので。
篠原さん:ファミリアでは、いつもテーマを決めてモノ作りをします。今年のテーマは「よく遊ぶ、よく食べる、よく寝る」です。大槌刺し子さんとの企画は、「よく遊ぶ」というテーマにあたります。また、アーティストからのインスピレーションという視点で、今回はピカソが愛したバスクシャツからインスピレーションを受けて、ボートネックシャツとカバーオールを作りました。
普通であれば、バスクシャツには厚手の生地を使いますが、子どもが着やすいように番手を細くして、軽く仕上げています。爽やかなボーダーに、胸元のハウスチェックが立体的に見える刺し子がポイントですね。
大人のサイズに関しても、社内で何度も試着をしました。少しオーバーサイズ気味に作って、比較的広い範囲の体型の方にご着用いただけると思います。
ボタンやステッチなどを揃えて、企画全体の統一感を出し、男女問わずジェンダーレスで着ていただけますし、親子ペアにもおすすめです。
小さなパーツにひと針、ひと針、施される愛情のこもったステッチ
ーーすごい。本当に細部にまで、こだわって作られているんですね。私も大人用のを欲しいです!今回、大槌刺し子と実際に一緒に取り組んでみてどうでしたか。
篠原さん:やはり、小さなパーツにひと針、ひと針、施される愛情のこもったステッチに感銘を受けました。刺し子さんの現場の写真も共有いただいたので、実際に作っている方の姿も想像できて、手仕事の温もりを感じました。
この企画にはたくさんのスタッフが関わらせていただきましたが、ここにはいないデザイナーからも、創業者の「お母さんの気持ちになって、自分の子どもに着せるためにものづくりをしよう」という精神、手仕事の良さ、というのを改めて感じることができたという感想や、生地を重ねて強くするなど、刺し子が実用性を兼ねていることも勉強することができた、という感想もありました。
石田さん:完成した商品を見るとサイズアウトして着られなくなっても、この刺し子の部分は他の物にアップサイクルできそうという声もありました。
ーー確かに、取っておきたくなりますね!ジェンダーレスということもあって、お下がりにしたり、兄弟姉妹間で着れたり。刺し子の部分だけ残しておいて、別のものにリメイクしよう、とか、お客様の方でもいろんな工夫をしていただけると嬉しいですね。
今回の取り組みでは、「自分の子どもに着せるつもりでお洋服を作りましょう」という、ファミリアさんのモノづくりの原点に触れることができました。刺し子さんの中には、「昔、新宿で買ったのよ」とファミリアのバッグを持ってきてくれたり、インタビューに同席できなかった、ファミリアのデザイナーさんが大槌刺し子のスタッフに手紙を書いてくださったり。ものづくりを通して、心を通わせるシーンが何度もありました。ぜひ、皆さんも店頭などで、実際にファミリアさんのお洋服に触れていただけると嬉しいです。
familiarと大槌刺し子の商品は、以下の店舗、オンラインショップでお買い求めいただけます。
■代官山店
■神戸本店