【カンボジア】農林水産省も注目、障害者世帯の生計向上モデル
【アジアレポート/2021年2月_Topic03】
2017年の4月から実施していたカンボジアの北西部バッタンバン州カムリエン郡の障害者100世帯への生計向上支援事業も今年の3月に終了します。
2月には、カンボジア政府農林水産省の国際協力課の職員が、事業の対象地域であるバッタンバン州カムリエン郡を訪問し、対象世帯を案内しました。
↑事業の対象世帯であるスーン・シエンさん(写真左から3人目の白いシャツの男性)に話を聞く農林水産省国際協力課の課長
障害者世帯へ訪問した国際協力課の課長は、障害者世帯に直接話を聞きながら、事業の意義を理解してくれました。
家を訪問した際に不在だったスーン・シエンさんが、8頭のヤギの放牧から戻ってきたときの笑顔を見て、国際協力課の課長は「話を聞かなくても、彼の笑顔を見れば分かる。」と一言。対象世帯の人々の様子から、事業の価値を実感してくれたようです。
↑事業の対象世帯であるドル・キエンさんに話を聞く農林水産省国際協力課の課長(写真奥の青いシャツの男性)
鶏飼育で成功したドル・キエンさんには、国際協力課の課長も非常に興味を持って話を聞いていました。
ドルさんの鶏飼育では、カウンターパート機関のCRDNASEの農業専門家が教えているワクチンを使わず、カンボジアの薬草の発酵液を使った飼育方法を採用しています。
実際にこの方法で、ドルさんは月平均US$170の収入を得ることができています。
↑事業の対象世帯であるドル・キエンさん(車椅子の男性)とカウンターパートのCRDNASEの農業専門家(写真左の男性)から話を聞く農林水産省国際協力課の課長(写真右の男性)
最後に訪問したヴェン・チャウムさんの家庭菜園は、農林水産省の職員たちも驚いたようでした。
ヴェンさんの家の前の小さな土地では、野菜や花、苗木などを栽培しています。
事業で訓練した野菜だけで2020年度には、US$626の収入があり、自家消費でUS$102、さらに近所へ配布したものもUS$90あり、合計すると野菜栽培だけでUS$815の価値を生み出していました。
これは事業で配布した野菜の種からだけの価値であり、それ以外にも花、苺、唐辛子の苗木なども販売して、収入になっています。また、飼っている牛の糞やヤギの糞を肥料として利用した無農薬での有機栽培をしている点も、すごいところです。
加えて、一度辞めたヤギの飼育を、再度始めてUS$400の収入につながっており、鶏や牛の飼育も実践し、事業で目指していた「収入源の多様化」が実現できた世帯となりました。
家庭菜園で配布した種が在来種であるかどうか、国際協力課の課長さんから質問がありました。私たちもカンボジアの在来種の野菜を、農業専門家らと探してきましたが、すでに多くのものが無くなっていました。
事業の中では、市販の野菜の種を購入して配布していましたが、わずかにカンボジアの在来種の野菜も見つけることができました。
↑対象世帯のドル・キエン夫妻とカウンターパートのCRDNASEの農業専門家、プロジェクト・マネージャーの江角と写る農林水産省国際協力課の課長
国際協力課の課長が、在来種のことまで考えているとは思いませんでしたが、家庭菜園での野菜栽培の可能性や、家畜飼育と組み合わせた自然の循環による持続的な農業で、生計を向上させていくことができるモデルを見てもらえたのではと思います。
提供した資機材、水瓶やため池、家畜小屋の適切性も評価してくれており、またハリナシミツバチの養蜂などにも関心を持ってくれ、今回の視察で本当に勉強になったと話してくれました。
今後も、この事業の中で見えた現地の知恵や現地にあるものを活かした環境再生型農業による農村に住む農家への生計向上モデルの価値を、カンボジア内外に伝えていければと思います。