【カンボジア】4年にわたる事業終了、収入の持続と家畜銀行での再挑戦
【アジアレポート/2021年3月_Topic01】
JICA草の根パートナー事業として実施していた障害者世帯への生計向上支援は、2021年3月2日に4年弱の事業を終了しました。
カウンターパートの現地NGO、CRDNASEやカムリエン郡農林水産事務所に家畜銀行の運営を委託して、テラ・ルネッサンスは、その運営のサポートをしていきます。家畜銀行から貸し出した家畜は、事業終了後も継続して飼育するだけでなく、さらに拡大する世帯も多く、収入を継続して得られています。
↑今年3月にヤギを販売し1,250ドルの収入を得て喜ぶカン・クンさんと奥さん
鶏、ヤギを飼育するカン・クンさんの世帯では、3月に6頭のヤギを販売し、合計1,250ドルの収入を得ることができました。
カン・クンさんのヤギは、最近では1度に3頭ずつ産まれてくるようになり、値段も以前は1kg=4ドル〜6ドルほどでしたが、3頭産まれてくるヤギを買いたい人がいて、1kg=8ドルで販売することができました。
得た収入で、家の台所を増築したと嬉しそうに話してくれるカン・クンさんの奥さん。しかし、4年前に家畜銀行から貸し出しを受けた最初のヤギの飼育はうまくいきませんでした。ヤギ銀行から貸し出したヤギから生まれてくる子ヤギのうち3頭が、死産または生後間も無く死亡してしまい、まだヤギ飼育の経験のなかったカン・クンさんと奥さんは、「もうヤギの飼育をやめる」と3年前に伝えてきました。
ただ、その時は「もう少し継続してみたら」ということで、飼育を継続してもらいました。
↑自分で増築したヤギ小屋を見せてくれるカン・クンさん
今では、「ヤギの飼育を支援してくれて、本当に良かった」と奥さんは涙ながらに話してくれました。実は奥さんも体調があまり良くない中で、これまで龍眼という果物の農薬散布や収穫の日雇い労働をして生計を立ててきました。地雷被害者のカン・クンさんは、これまで病気などしたことがありませんでしたが、昨年高血圧でかなり危ない状況になってしまいました。健康面で問題を抱えながら、新型コロナウイルスの影響で、国境が閉鎖され、出稼ぎも行けなくなり、収入を得る手段がなくなっていくなかで、ヤギや鶏の飼育は継続することができ、収入につながっていたのです。
様々な苦労があったと思いますが、こうして今ヤギの飼育で希望を見出してくれ、「ヤギの飼育はもうやめない」とまで言ってくれるまでになりました。そこまで言ってくれるとは思ってもなかったので、とても驚くとともに嬉しい瞬間でした。
↑ヤギ小屋の様子を見せてくれるカン・クンさん
カン・クンさんは、鶏も飼育していて、継続して飼育ができています。ヤギだけでなく家でできる仕事として鶏も飼育しながら、複数の収入源を確保し、レジリエンスを向上させていってほしいと思います。
↑ヤギの販売で得た収入で、カン・クンさんは台所の部分を増築
他の対象世帯の中には、ヤギ飼育を途中でやめてしまった世帯もあります。しかし、ヤギを全部売ってしまったのを後悔して、2020年になって再度ヤギの飼育を始めた世帯もいます。
また、事業の対象となる障害者世帯以外でも、カン・クンさんの住む村ではヤギの飼育を始める村人も出てきました。この事業の家畜銀行の活動によって、今は関心が高くなることで、ヤギを安い値段では購入できなくなっていますが、家畜銀行で貸し出した数だけ返却してもらう仕組みなので、返却してもらったヤギを、一度飼育をやめてしまった世帯にも再度貸し出すことができます。
完全に家畜を渡してしまうのではなく、家畜銀行という仕組みにしていた意味がありました。
現在も数世帯がヤギの再貸し出しを希望している状況で、貸し出しをしているヤギの返却を待っている状態ですが、またカン・クンさんの世帯のように多様な収入源を確保するために、ヤギの飼育にも再度挑戦してほしいと思います。