【カンボジア】コロナ禍でも続く生計向上〜事業の指標月平均US$40を超える収入に
【アジアレポート/2021年4月_Topic03】
カンボジア事業では、2017年4月から2021年3月2日までJICA草の根パートナー事業として、地雷埋設地域の脆弱な障害者家族への生計向上支援事業を実施しました。JICA草の根パートナー事業としては終了しましたが、2021年4月に引き続き事業で設立した家畜銀行のモニタリング調査を実施したところ、 対象100世帯の平均月収はUS$52.47となり、1つの事業の目標にしていた月平均US$40/世帯を越えることができました。2021年2月に実施した調査では、平均月収US$26.29/世帯でしたので、3-4月の2ヶ月間で約2倍の増加となりました。
↑2021年4月のモニタリング調査結果から家畜による対象世帯100世帯の平均月収が、指標の月US$40以上のUS$52.47となる。
収入が増えた1番の理由は、ヤギの販売によるものです。2021年2月から3月の間に70頭のヤギが販売され、US$8,374.5の収入となりました。これは1頭あたり平均US$119.64の値段で販売できたことになります。2年前は、1kg=US$5で販売されていましたが、2021年には1kg=US$7に値上がりしていることも、収入が増加する理由となりました。2021年2月の調査では、月平均US$16.06/世帯の収入であったのが、2021年4月の調査では月平均US$41.87と、2倍以上になりました。2020年にヤギを飼育する世帯の多くが、ヤギ飼育を拡大するために、販売を控え、繁殖させようとしていました。そして2021年3月になり、十分に増えたヤギの販売を開始したと考えています。
さらに2021年4月現在、飼育されているヤギは386頭あり、金額に換算すると、US$36,204.33になります。2021年2月から70頭を販売したにも関わらず、23頭増えており、さらに継続して繁殖が期待できます。
↑家族で協力してヤギを飼育するサム・コムさん(赤ちゃんを抱く写真中央の女性)の世帯
多くの世帯が、収入につながり始めた一方で、ヤギの飼育を事業の途中でやめてしまった世帯が26世帯ほどあります。彼らの多くが、ヤギの値段が高くなり、他の世帯で大きな収入につながっていることを知って、再度ヤギの貸し出しを希望しています。今後、返却されるヤギを待って、再度貸し出しをしていく予定です。
↑事業で提供したヤギ小屋(写真右)に加え、新しいヤギ小屋(写真左)を自分で建設したメイ・ソーンさん
農村で生活する村人たちにとって、家畜を飼育していることで、 現金収入が必要になったときに、これまで銀行から借金をする必要がありましたが、現物資産として、牛やヤギの一部を販売し、現金を得ることができるようになりました。
これまで換金作物の栽培に失敗したり、値下がりによって、借金が返せないリスクがありましたが、家畜という現物資産があることで、借金というリスクをとる必要が少なくなりました。また、農民たちは、一定の毎月の収入が入ってくるわけではないため、少しずつ貯金をすることは重要とは分かっていても、実際に必要な出費があるときには、貯金をすることは難しい状況でした。家畜は、繁殖させていくことで、資産として増やしていくことができ、また自分で販売したい時期を選ぶことができます。
↑事業の対象世帯であるゲット・ハエムさんの奥さん(写真左)がヤギ飼育で成功したのを見て、ヤギ飼育を始めたご近所さん(写真右)
家畜に関しても、値下がりするリスクがあるものの、特に急な支出が必要でなければ、値段が下がっているときには販売しないという選択肢を取ることもできます。
また、私たちは1つの家畜だけでなく、鶏、ヤギ、牛、ハリナシミツバチという複数の家畜を組み合わせることでリスクを分散させ、家庭菜園で自分たちの食べる野菜を自給することで、現在のようなコロナ禍のような外部ショックを受けたとしても、生き延びるために必要な最低限の収入を得て、食べていくことができる状態を目指していました。これがレジリエンスを高めることにつながり、最終的にテラ・ルネッサンスの目指している自立した生活につながると考えています。
4月に入り新型コロナ感染がカンボジアでも拡大していくなかでも、こうして家畜を飼育しながら収入を増やしていることを、嬉しく思います。そして、まだ厳しい生活をしている世帯へのフォローアップを継続していきたいと思います。
江角 泰