【ラオス】「轍(わだち)」vol.2〜ラオス事業の成長〜

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【ラオス】「轍(わだち)」vol.2〜ラオス事業の成長〜

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今年で創設から20年を迎えるテラ・ルネッサンス。20周年特別企画としてこれまで海外事業・海外駐在員が歩んできた道のりを、それぞれの活動国ごとにお伝えしていきます。

今回はラオス事業を振り返ります。2007年から開始したラオス事業。アジア事業マネージャーの江角泰にラオス事業の道のりやラオスと不発弾の問題について、インタビューを実施しました!
※一部、現在ラオス事業担当の飯村のコメントも含んでいます。


ぜひ、ご一読ください。

1.「一見、平和に見える生活。」〜ラオスとの出会い〜


―ラオスとテラ・ルネッサンスの出会いをおしえてください。

実は始まりは私ではなくて、創設者の鬼丸さんが2001年にカンボジアのスタディーツアーの後にラオスのシエンクワン県を訪問したのが始まりです。でも、その時はラオスで事業することは全く想定してなかったみたいです。

 

―そうなのですね。では、江角さんとラオスの出会いはいつだったのでしょうか。

私は鬼丸さんがシエンクアンを訪問した時のレポートを読んで、なんとなくラオスは不発弾の問題があることを知っていました。

私が実際に訪れたのは2007年です。カンボジアのお正月休みを利用して訪問したのですが、ラオスもお正月ということを知らず、、。

不発弾撤去団体もお正月休みで、活動していなくて焦りましたが、観光客用の不発弾に関する展示を見学したり、現地のガイドに頼んで、大きなクレーターや爆弾が残っている場所に連れて行ってもらいました。

 

―それは大変そうですね汗 その時のラオスの印象をおしえてください。

印象的だったことは、ラオスの人々が「一見、平和にみえる生活」を営んでいたことです。私は不発弾の問題に関心があったから、不発弾の状況を知ることができた。でも、知らずに行くと、不発弾の問題あることさえわからない。そんなのどかな場所でした。

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【ラオスの闘牛場】

―そうなのですね。「一見、平和にみえる生活」という言葉がありましたが、「不発弾とラオス」どのような問題に直面しているのでしょうか。

 

ラオスは、ベトナム戦争中に戦場となり、米軍によってクラスター爆弾が2億7000万~8000万個投下されたと言われています。その不発弾が大量に残っており、人々の生活を脅かしています。

 

1992年から本格的に不発弾撤去活動がラオスで開始されましたが、不発弾撤去が完了している地域は不発弾汚染地域の1%にも達していないと言われています。そして、すべて撤去するには100年かかるとも言われています。

 

こんなに大きな問題でも、正直、不発弾の問題は見えません。

ラオスで生活している人にしか見えません。はじめてラオスに訪れると、「どこに問題があるのだろう」と感じると思います。

空爆されてから40年以上が経って、毎年稲を栽培してきた田んぼから、撤去活動をすると数百発の爆弾が見つかることも普通です。

 

それが「一見、平和にみえる生活」です。

ーありがとうございます。ラオスの不発弾の状況を聞き、私たちが「社会課題から目を背けない」姿勢が重要だと感じました。

 
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【植木鉢になった爆弾ケースとラオスの子どもたち】

2.「続けていく理由」〜ラオス事業の始まり〜


―テラ・ルネッサンスとしてラオス事業の始まりをおしえてください。

はじまりは、2008年にシエンクワン県のノンヘット郡に中学校建設です。ある会社の社長さんがラオスに興味を持ってくださり、実現したプロジェクトです、はじめに不発弾撤去団体に資金提供し、不発弾除去を実施しました。その後、その土地に中学校を建設しました。

 

―その時の江角さんの心境を教えてください。

 

いや~!本当に面白かったですね!
私にとっても、ラオスは未知の場所でした。1度は訪れていたのですが、ラオスの人たちがどんな人で、どんな文化なのか、ほとんど知りませんでした。現地のカウンターパートとの打ち合わせなど、すべてが新鮮でした!

余談ですが、ラオスの食べ物は革命的においしかったですね。

 

―最初は短期的なプロジェクトを実施していたと思うのですが、現在のような長期的に事業を開始するきっかけは何だったのでしょうか。

 

2014年に不発弾の調査をシエンクワン県とラオス南部の県のいくつかで実施しました。そして、不発弾の状況もより詳細に把握することができました。

 

ただ、私たちには不発弾を撤去する技術はありませんでした。

「しかし、カンボジアやウガンダで実施しているように、不発弾で汚染されている地域に住む人々の生活をサポートすることはできる。ラオスで生活している人が不発弾の事故にあわず、安心して生活できるように事業を継続して実施しよう。」

 

そう決心しました。

―ありがとうございます。それで開始したのが、2017年の「ラオス不発弾汚染地域における養蜂の技術向上と普及を目指した“farm miel”プロジェクト」なんですね。

 

その事業はラオスのシエンクワン県の2つの集落を対象に、新しい養蜂技術の導入や商品化を促しながら、養蜂組合の設立や環境教育の実施など、自然と人が持続可能な生活を続けていくための支援事業でした。

 
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【組合の組織図について話し合っている様子。ムアン村。】

―その事業で印象的だったことはありますか。

村の人々が試行錯誤して養蜂事業を進めてくれました。事業の2年目には1年目を大きく上回る蜂蜜も収穫できて、順調に進めることができました。

 

当時、印象的だったことは事業から少し離れますが、、

養蜂事業を始める直前の2017年、対象村のすぐ近くで、大きな事故が起きました。それは子どもが不発弾で遊んでいたときに起きた事故です。

10歳と7歳の2人の姉妹が学校帰りに道端に落ちている不発弾(テニスボールぐらいのボール状の米国製クラスター爆弾の子弾BLU-26)を拾い、持ち帰ってしまいました。その不発弾を拾って帰ってきた姉妹の家は、ラオスのバーシーという伝統的なセレモニーをしていた日で、大人は忙しく働いていました。そんな時に、子どもたちが不発弾を投げて遊び始め、爆発したのです。

不発弾を拾ってきた10歳の女の子は即死。他の12人の子どもたちも被害にあったそうです。

ショックでした。養蜂事業をする地域にもたくさん不発弾があります。養蜂事業が終わっても、ラオスで事業を続けていく理由ができました。

 

―子どもが不発弾の被害にあわないために、どのような取り組みをしているのでしょうか。

 

今は、少し苦戦していますが、幼稚園や小学校に通う子供に向けた不発弾回避教育教材の作成を進めています。不発弾回避教育を短期間で完了することは正直、難しいです。なので、中長期的な視野で、教材を改善しながら幼児向けの回避教育手法を確立しなければならないと考えています。


そして、それは間違いなく、他の地雷や不発弾に汚染された国や地域でも応用できると確信しています。

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【不発弾の理解度テストを受ける子ども】

 

3.「トップランナーになる。」〜ラオス事業の学び〜


―ラオス事業を振り返って、「これは失敗したな~」という出来事はありますか。

 

はい。一つ、今でも申し訳ないと感じていることがあります。
2016年にベトナム国境近くのノンヘット郡でプロジェクトを行うために準備をしていました。桃やスモモが有名な場所だったので、現地の蒸留酒につけた桃やスモモの果実酒をつくるプロジェクトを計画していました。


しかし、助成金申請書類を確認していると、お酒やタバコのような嗜好品は申請できないことに気が付き、そのプロジェクトができなくなってしまいました。

調査段階で、不発弾の被害者の方々と話しながら、準備をすすめていたので、本当に申し訳なかったと感じています。

ラオスの人は事情を説明すると理解してくれたので、問題はありませんでしたが、今でも、現地の政府の関係者に「やらないの?」と聞かれることもあります。

 

ここは本当に難しいところで、ある程度事業を進めるために、調査は必要です。しかし、その事業のための資金が確保できなかったら、調査自体が無駄になることもあります。

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【ラオス現地調査の様子】 


―それは難しいところだとおもいます。逆に「これはうまくいったな~」と感じた出来事はありますか?

 

これはラオスの人たちのおかげですが、学校建設後もちゃんと現地の人たちが、自身で学校の運営や管理をしてくれ、学校と教育省の連携もうまくいきました。

 

ラオスは、トップランナーになる可能性を秘めていると感じています。

 

ラオスの人たちは「自分たちで生活する」という文化が残っていますし、歩みはゆっくりですが、意義のあると思うことを地道に継続する力はとても優れています。その文化や気質を尊重して、サポートしていきたいです。

 

ー「トップランナーになる可能性」とはどういうことでしょうか。

ラオスは社会主義国なので、活動を行う上で政府からの許可など調整は難しいところがあります。ただ、事業終了後の省庁や自治体による活動継続は比較的良好です。

また、先ほども述べましたが、ラオスの人々は意義のあると思うことを地道に継続する力はとても優れています。
なので、ラオス社会のニーズに合った事業を実施することはとても重要だと考えています。

他の事業地に比べると、ラオスは豊かな自然のなかで伝統的な生活と人の絆が残っています。そのため、自然を活かした持続可能な生計向上の可能性があり、先進国で失われてしまったような人との繋がりや、自然から得られる安全な食べ物などが、世界的にこれから見直されていくだろうと考えると、ラオスはすでにトップランナーなのだと思います。

しかし、ラオスも他国と同じように「”経済発展”をするのか、どうか」という瀬戸際にいるのもまた事実です。

 

―なるほど、それが「トップランナー」ということですね。これからのラオスをテラ・ルネッサンスとして、どのようにサポートしていくのでしょうか。

 

不発弾が当たり前に存在する社会ではなく、平和が当たり前にある世界をつくりたいです。

なので、不発弾事故を防ぎながら、被害にあった人、被害にあっていなくても貧困状態にいる人の生活をサポートできるような支援を続けていきます。

 

ただ、ラオスの人には自分たちの持っている文化を大切にしてほしいと感じています。カンボジアを見ていると感じますが、文化や伝統は1度失くしてしまうと、取り戻すのはとても大変です。

 

「人との濃い関係性」、「自然と共存した生活」など、ラオスの人々が今、持っているものを大切にしながら、現金収入が必要な人にも持続的な収入源を確保できるようにテラ・ルネッサンスとして現地の人たちの活動をサポートしていきたいです。

 

ー江角さん、ありがとうございます。

※一部、現在ラオス事業担当の飯村のコメントも含んでいます。

 
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【養蜂訓練後の参加者と当会職員】

ー編集後記(執筆担当:啓発事業部福井の声)ー

最後まで、読んでいただきありがとうございます。みなさまはどんなことを感じたでしょうか。

私自身、今回のインタビューにあたり、ラオスやテラ・ルネッサンスのラオス事業について学び直しました。そして、不発弾撤去の果てしなさや社会課題の認知の薄さに無力感を抱きました。それでも、「今、私にできること」は、このインタビューを通して、ラオスの人々の力強さや平和さをみなさまにお伝えすることだと考えています。これが私にとって、無力ではない証明です。


当会の海外事業においてはあまり目立つ方ではないラオス事業ですが、事業自体の成熟の速度はとても速いです。それは、運動体「テラ・ルネッサンス」の勢いが重なっているのだと思います。私たちが目指す「世界平和の実現(=すべての生命が安心して生活できる社会の実現)」は、ラオスにおいて、不発弾という脅威がなくなること。

そして、ラオスの人々が自らの文化を大切にしながら、持続可能な生活を営んでいくことだと思います。

ーーー

テラ・ルネッサンスがはじまり、20年。ラオス事業が開始して、13年。

今までの「轍」を大切にしながら、サポートしてくださっている皆さま、そして、ラオスの人々と一緒に進化を遂げてまいります。

テラ・ルネッサンス創設20年キックオフイベントのご案内

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2021年7月3日(土)に当会創設20年を記念したキックオフイベントを開催します。イベント第1部では当会理事長小川真吾より、テラ・ルネッサンス20年の海外事業地での支援を振り返ります!また、第2部では国内外の事業地と中継をつなぎ、現地で働くスタッフの想いをお伝えします!


今回、インタビューした江角はカンボジアから出演します!!ラオスからは、現在ラオス事業を担当している飯村と現地スタッフが出演します!

ぜひ、みなさま、ご参加くださいませ^^


ーーーーーー
インタビュー・記事執筆 

啓発事業部 福井妙恵

執筆協力
アジア事業マネジャー 江角泰 

ラオス事業担当 飯村浩 

啓発事業部インターン 田畑勇樹

 

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