【カンボジア】「轍(わだち)」vol. 1 「平和」のカタチ~江角泰編〜

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【カンボジア】「轍(わだち)」vol. 1 「平和」のカタチ~江角泰編〜

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今年で創設から20年を迎えるテラ・ルネッサンス。20周年特別企画として、これまで海外事業・海外駐在員が歩んできた道のりを、それぞれの活動国ごとにお伝えしていきます。

 

今回は、2008年よりカンボジアに駐在し、当会カンボジア・ラオス事業を担当してきた江角泰が考える「平和」についてフォーカスしました。

 

平和を志すきっかけとなった原体験から現在の事業への想いまで、江角さんの人生を1本の記事にまとめた、とても濃い内容となっております。ぜひご一読ください!

 

江角泰が想う「平和」のカタチ

 ――まず始めにお聞きします。江角さんにとって「平和」とは何でしょうか。

 

「人間、そして自然との共生」です。これは、人間同士が手を取り合って生きていくこと、そしてそのようにして良い関係性で繋がっている人間たちが、自然とも調和して生きていくことを意味しています。

 

――ありがとうございます。では今お話しいただいた「平和」のカタチが江角さんの中で、どのように生まれ、変化してきたのかを、このインタビューを通してお聞きしたいと思います。

 

テラ・ルネッサンスとの出会い

――まずは、江角さんの原点から始めたいと思います。江角さんが国際協力を志すきっかけとなった、何か印象に残っている体験などはありますか?

 

小学校の頃の、いじめの体験です。小学校6年生のクラスは、学級崩壊状態になっていて、いじめが多発しているような状況でした。そしてある日、自分もいじめの対象になりました。


程なくして、自分へのいじめは終わりましたが、その時痛烈に感じたことがありました。

「いじめられている人を前にして、自分はただ何もしない傍観者だった」ということです。

 

それから、いじめによって不登校になった子の家に、放課後遊びに通うようになりました。すると小学校を卒業する頃には、その子がまた学校に来てくれるようになったんです。


とても小さなことではありますが、自分が起こした行動が、想像していなかった結果につながりました。これは私にとって、小さな一歩を自分が踏み出すことの大切さを知った、とても大きな出来事でした。


そして高校生になる頃には、ニュースなどで社会課題について、見聞きするようになりました。そのとき、「そのような課題を知りながら何もしないことは、いじめの傍観者と同じだな」と感じたんです。

 

またそれと同時に、青年海外協力隊や国連職員の人が書いた本を読むようになりました。ニュースでなど見聞きした社会課題に対して、積極的に取り組むことできる道があることを知り、深く興味を持ちました。

 

――いじめの体験から「一歩踏み出すことの大切さ」を知り、それが社会問題と出会ったときにも、行動を起こしたいと思う気持ちにつながっているのですね。では、江角さんはどのようにして、テラ・ルネッサンスと出会ったのでしょうか。

 

テラ・ルネッサンスとの出会いは大学生の時でした。大学の友達に、テラ・ルネッサンスが実施するカンボジアのスタディツアーに誘われて、2002年3月に参加しました。そのときはテラ・ルネッサンスのことも、創設者である鬼丸のことも全く知りませんでした。

 

当時は、国連職員になることを目指して大学院に進学することを選択しました。だからNGOで働くことは全く考えていませんでしたが、スタディツアーの縁もあって、2004年からテラ・ルネッサンスでインターンを開始しました。

 
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【スタディツアーに参加する大学生の江角さん(写真中央)】

――江角さんが考えていたように、国連職員を目指すなど、他にも様々な選択があったと思います。その中でなぜテラ・ルネッサンスに就職するという道を選んだのでしょうか。

 

テラ・ルネッサンスを選んだというよりは、「たまたまスタディツアーを通して出会って、インターンを開始して」といったように、縁があり、そして出会ったタイミングが良かったから、ですね。

 

ただ、テラ・ルネッサンスでインターンをする中で、NGOで働くということも考えるようになりました。現場の人々に、より近いところで働けるというのがよかったです。

 

そして自分は一番何にワクワクするのかを考えたときに、「現場により近いところで、自分がやりたい事業ができる小さな規模のNGOがいいな」と思い、最終的にテラ・ルネッサンスで働くことを決めました。

 

変化してきた「平和」のカタチ

―― 自分がワクワクすることを選択すること、とても素敵だと思いました。ではテラ・ルネッサンスで働き始めて変わったことはありますか。

 

特に、テラ・ルネッサンスの活動理念である「ひとり一人 に未来をつくる力がある」という言葉に惚れました。あらゆる社会課題に対して、自分みたいな人間でも何かできることがあるのではないかと思わせてくれる、とても好きな言葉です。

 

そして環境の変化で言えば、私が働き始めてから今に至るまで、当時はまだ小さかったテラ・ルネッサンスは、組織としても成長を続けてきました。その変化を実際に体験できたことはとても面白かったです。なので、当時、国連機関への就職を目指す道ではなく、テラ・ルネッサンスを選んでよかったと思います。

 

――貴重な経験をされてきたのですね。そんな中で、冒頭にお答えいただいた江角さんの考える「平和」はどのように形成されていったのでしょうか。

 

私は大学時代を宮崎で過ごしていました。その当時、宮崎の地元で暮らす人々が、自然を守りながら、地元にあるものを活かして生活するのをみて、「人間と自然との共生」の重要性をぼんやりと感じるようになっていました。

 

そしてそれがはっきりとカタチになっていったのは、カンボジアに駐在するようになってからです。「森の人」と呼ばれたカンボジアの人々との出会いや隣国ラオスの山間部を訪問して、お金を持たずとも、いかに彼らが分かち合い、助け合いながら自然と調和して生きてきたかを学びました。

 

それこそが「人間は一人では生きられない。人間だけでも生きられない。」ということです。

 

自然との調和の中で、人と人とが分かち合い、助け合えるような暮らし。それが私の考える「平和」のカタチであり、テラ・ルネッサンスで働くことを通して、追い続けていくものです。

テラ・ルネッサンスで働く意義

 
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【江角さんのカンボジアでの活動の様子】

――振り返ってみて、これまでたくさん大変なこともあったと思います。その中で、江角さんがテラ・ルネッサンスで働き続ける理由を教えてください。

まず、テラ・ルネッサンスで働き続けるかどうかというよりも、大切なことは私自身が目指す「平和」のカタチを追い続けることですかね。テラ・ルネッサンスで働くことはその一つの手段です。だから、可能であれば働き続けたいとは思いますが、平和をつくるやり方は様々だと思っています。

大変なこともたくさんありましたし、自分のやってきたことが必ずしもすぐに結果に結びつくかはわかりません。それでも、自分の目指す「平和」というゴールが明確に見えていれば、どのように軌道修正すればいいかがわかります。

――テラ・ルネッサンスとの出会いは泰さんにとって、どのような意義があったのでしょうか。

先ほども言いましたが、私の大好きなテラ・ルネッサンスが大切にしている「ひとり一人に未来をつくる力がある」という言葉は、いつでも、どこでも、誰でも、世界を平和にするための何かを始めることができることを思い出させてくれます。

どこかの誰かがやってくれるのではなく、平和をつくるのは、自分自身からなのです。そして、私にとってテラ・ルネッサンスとは、このような自分の思い、目指している世界をカタチにしていく場所です。

小さなことでもいいから、一歩踏み出して自分にできることをやっていく。自分にできないことは他の人たちと協力しながら、その小さな一歩を踏み出し続ける。それが平和をつくっていくことにつながると考えています。

―江角さんが目指す「平和のカタチ」は、どのくらい達成できたのでしょうか?
 

テラ・ルネッサンスの支援哲学を代表する「自立と自治を促進する」という考え方と結びつけてお話します。これは私が目指す「平和」のカタチをつくる上で大切な方法です。
 

私たちが考える「自立」とは周囲との関係性の中で自分らしく生きること、そして「自治」とは自立した一人ひとりが、地域に課題に対して、主体性をもって取り組むことです。
 

2008年からカンボジアでの駐在を開始し、13年間カンボジア・ラオスで事業を進めてきて、地雷被害者家族を含む多くの村人たちが、持続可能な形で、収入を得られるようになるんを見てきました。
 

そしてそのような村人の中から、収入を得られた知識・方法などを無償で隣人に伝える人々も現れ、村人同士の分かち合い、助け合いといった信頼関係を強めることにつながりました。だから「自立」については、かなりの部分達成できてきました。

 
その一方で、「自治」の部分はまだまだこれから強めていける部分があります。それは「自立」した人々が村の中で、さらにつながり、より良い関係性を育むこと。そして伝統的にその地域にある自然などを持続可能な形で活かして生きることです。

 
すなわちそれは、人間同士が手を取り合って、自然とも共生しながら生きていけるという、私が考える「平和」のカタチであり、そこを目指して、これからも挑戦を続けていきたいと思います。

編集後記 (啓発事業部インターン 田畑より)

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【Zoomでのインタビューの様子(画面下の江角さんのポーズはカンボジアで平和を意味するという)】

記事を最後まで読んでくださったみなさま、ありがとうございました。今回のインタビューを通して、江角さんが自身の平和のカタチを追い求める中で、いかにしてテラ・ルネッサンスを選び、働き続けてきたか、そして今何を感じているのかを知ることができました。
 

江角さんが考える「人間、そして自然との共生」は今の時代を生きていく上で本当に大切なことだと思います。私たちは普段意識しないかもしれませんが、たくさん他者・そして自然環境に支えられ、生かされています。
 

「平和をつくる」というと、大きなことのように感じるかもしれませんが、そのような周囲の人々との関係性や自然を大切にするという、身近な部分からでも十分に始められることのように思います。
 

そして、江角さんが繰り返し語っていた、テラ・ルネッサンスが大事にしている「一人ひとりに未来をつくる力がある」という言葉が教えてくれるように、自分・そして他者、一人ひとりが持つ可能性を信じて、「一歩踏み出してみる」ことに、平和をつくるヒントがあるように感じました。
 

ーーーーーー
 

江角が担当してきたカンボジア・ラオス事業にフォーカスした記事も、すでに公開しております。テラ・ルネッサンスとアジア事業、そして江角さんが歩んできた道のりを知っていただける内容になっておりますので、ぜひご一読ください。

 

・カンボジア事業の成長

こちらをクリック

 

・ラオス事業の成長

こちらをクリック

テラ・ルネッサンス創設20年キックオフイベントのご案内

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2021年7月3日(土)に当会創設20年を記念したキックオフイベントを開催します。イベント第1部では当会理事長小川真吾より、テラ・ルネッサンス20年の海外事業地での支援を振り返ります。また第2部では、カンボジアを含む国内外の事業地と中継をつなぎ、現地で働くスタッフの想いをお伝えします。

カンボジア事業の現場をリアルタイムで感じることができるまたとない機会です。みなさまのご参加を心よりお待ちしております。


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インタビュー・記事執筆 

啓発事業部インターン/

田畑 勇樹

執筆協力
アジア事業マネージャー/江角 泰 

啓発事業部/ 福井 妙恵

 

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