【ブルンジ】「轍(わだち)」vol.3〜ブルンジ事業の成長〜
今年で創設から20年を迎えるテラ・ルネッサンス。20周年特別企画としてこれまで海外事業・海外駐在員が歩んできた道のりを、それぞれの活動国ごとにお伝えしていきます。
今回お届けするのはブルンジ事業の成長です。2017年から職員として採用され、現在はブルンジのプロジェクトマネージャーとして、ブルンジの事業進捗管理、各種申請・報告、経理、事務所管理等を行っている当会職員の古岡繭にインタビューしました。ブルンジ事業のこれまでとこれからをお楽しみください。
1.「ワクワク」~ブルンジ事業のはじまり~
ーブルンジ事業の始まりとこれまでのプロジェクトについて、教えてください。
テラ・ルネッサンスがブルンジで事業を開始したのは2013年です。事前調査から協力してくれていた現地のパートナー団体と協働して、元子ども兵及び紛争被害自立支援センターを建設しました。2014年には洪水被害者に対する緊急支援活動。2015年は「レジリエンス向上プロジェクト」開始し、養蜂、窯業、農作物加工の訓練を実施したり、コミュニティビジネス(生活協同組合)組織形成を支援しました。
2018年には、社会的弱者世帯の自立と自治支援プロジェクトを開始しました。そのプロジェクトでは、ブルンジのストリートチルドレンやシングルマザーを対象に、養蜂・洋裁・ヘアドレッシング・養豚 技術訓練を実施しました。2019年から2020年にかけて、国際移住機関(IOM)との協働プロジェクトで、帰還民・国内避難民・ホストコミュニティへの技術・ビジネス訓練、開業支援。そして、2020年から2021年で、新型コロナウィルス対策支援プロジェクトとUN Women協働プロジェクトを実施しました。
ーありがとうございます。早くもブルンジ事業の凄さに圧倒されています!ちなみに、古岡さんはいつ頃からブルンジ事業に関わり始めたのでしょうか。
私がブルンジ事業に関わり始めたのは、2017年の9月末でした。着任当初は、協同組合専門家として、プロジェクトに関わりました。2018年の「社会的弱者世帯の自立と自治支援プロジェクト」から、本格的にプロジェクトを担当するようになりました。
ーそうなのですね!協同組合専門家!カッコいいですね!ブルンジに赴任した時は、どんな気持ちでしたか?
ブルンジに赴任した当時は、また海外で働けることにとてもワクワクしていました。
2.「支援対象者の決断を尊重」〜ブルンジ事業の学び〜
ー赴任してから、今まで様々な体験をしてきたかと思うのですが、「これは失敗した」と反省ポイントはありますか。
支援対象者の組合運営には、基本的に干渉するべきではなかったと反省した出来事がありました。と言うのも、サポートしていた養蜂組合のメンバー間で仲違いすることがありました。その時、揉め事を対処するためにテラルネも話し合いの場に参加しましたが、結果的には私たちが片方の肩を持つ形になってしまい、もう片方の方たちから反感を買ってしまいました。
この経験から、組合組織の揉め事は基本的に組合内で解決してもらうようにしています。それでも、解決が難しそうな場合は自治体に相談してもらうようにしています。今でも、組合組織内の問題を相談されることはありますが、私たちからは助言はしても、「〇〇しなさい」と指示はしないようにしています。私たちが組合組織に干渉することは、支援対象者とそのコミュニティの「自治の阻害」にもつながると学びました。
ーありがとうございます。それは難しい問題ではありますが、支援対象者の方が支援を終えた後に、どのように生活していくかを考えると、とても大切な視点ですね。逆に、「これはとてもうまくいった!」と思う経験はありますか。
はい。支援対象者の決断を尊重できたことです。
2018年から開始した、自立と自治支援プロジェクトで技術を学び、ビジネスをはじめた人たちの自発的な考えを尊重できたことは、とても良かったと感じています。そのおかげで、彼ら自身もやりたいビジネスを行うことができていると思います。
ブルンジで事業をするにあたって、支援対象者の方々に伝えることがあります。
「このビジネスはテラ・ルネッサンスのビジネスではありません。このビジネスはあなた(支援対象者)自身のビジネスです。あなたたちのビジネスだからこそ、責任とオーナシップをちゃんと自覚して、運営して欲しい。」
やはり、プロジェクトを進めていくうちに、責任転嫁したり、支援に依存してしまう人も出てきてしまいます。しかし、その時に、私たちが助けても「自立と自治」は芽生えていかないと思っています。だからこそ、支援対象者の方々が自分たちで判断することを尊重しています。そして、私たちはそれに対して、うまくいきそうなものには最大限にサポートし、少し難しそうなものには、話を聞きながら打開策を一緒に見つけていくようにしています。
ーそれはブルンジ事業だけでなく、京都事務局の働き方とも共通しているように感じます。
決断を否定しないところなどは、「テラルネらしさ」なのかもしれませんね。
確かに、そうですね。ブルンジ事業では、現地スタッフの頑張りのおかげで、それをブルンジの文脈で体現してくれている気がします。
3.「ブルンジの文脈で伝える」〜現地のスタッフと育むブルンジ事業〜
ー「ブルンジの文脈」とはどう言う意味でしょうか。また、ブルンジの現地スタッフはブルンジ事業にとって、どのような存在でしょうか。
「ブルンジの文脈」とは、ブルンジの文化や慣習や考え方なども含めて、ブルンジの人が共通して理解できる物事の進め方です。やはり、私は日本人なので、その点を理解しきれていない部分もありますが、現地スタッフは理解してくれているので、ブルンジ事業にとっては不可欠な存在です。
日本人の私がブルンジの人々に「自立と自治」の大切さを伝えても、「外国人のお金持ち」と思われ、伝わらない可能性もあります。しかし、現地スタッフのようにブルンジで生まれ育った人が話し、ブルンジの文脈に沿った「自立と自治」の大切さを伝えることによって、理解してもらいやすくなります。ブルンジ事業の運営にも、目標の達成においても、現地スタッフのみんなは本当に大切です。
ーありがとうございます。ブルンジ駐在を始めてから今までで、現地スタッフとの関係性の変化はありますか?
プロジェクトコーディネーターのパシフィックは、私が赴任する以前からブルンジ事業で働いていたので変わりありませんが、私が赴任してから採用したディオメットとゼノンは徐々に良い方向に変わってきたと思います。
私がブルンジに着任した時は専門家という立場で、理事長の小川さんが指揮をとり、事業を運営していました。
2018年4月「自立と自治支援プロジェクト」の開始とともに、私が引っ張る立場になりました。
私自身、それまで、リーダーの経験はほとんどなく、どのようにリーダーシップをとったら良いかわかりませんでした。最初は、舐められないように強気でいた方がいいのかなと思ったり、仕事の任せ方がわからなかったりと、細かく管理してしまっていました。
しかし、ディオメットとゼノンは仕事に対して、とても真摯に向き合ってくれ、徐々に私が伝えてきたことをブルンジの文脈に合わせて体現してくれるようになりました。私も自然と仕事を任せれるようになりました。
私自身も、強いリーダーシップは苦手で、やがて綻びが出ると思ったので、お互いに意見を言いやすい、同僚のような関係性を目指そうと思い始めました。そう思い始めてから、私もスタッフも言いたいことは、ちゃんと伝えるようになりました。最近は、冗談も言ってくれるようになりました。
ーそうなんですね。古岡さんも現地スタッフも両方が努力した結果の今の関係性なんですね。その他のスタッフもいると思うのですが、現地のスタッフの皆さんと信頼関係を築いていく時に、大切にしていることはありますか?
お気に入りメンバーは固定しないということです。スタッフ一人ひとりの話を、直接聞くようことは本当に大切だと思います。ブルンジ事業のスタッフ会議は、清掃員から技術訓練講師までみんなが参加します。そして、みんなの話を聞くようにしています。
もちろん、普段の業務の時にスタッフから様子を聞くことができるのですが、やはり、どんな立場のスタッフでも自分の言葉で伝えたいと思うこともあると思うんです。もしかすると、スタッフ間での不信感もあるかもしれないので、会議の時には満遍なく意見を聞くようにしています。実は、彼らの要望に応えることが難しい時もありますが、意見は聞いてもらえていると思ってもらうことが大切だと感じています。
ー確かに、「聞いてもらえている」という安心感は大切ですね。
4.「少しずつ変化を感じる。それがやりがい」〜ブルンジ事業の歩みとこれから〜
ー前回のインタビュー(「平和のカタチ〜古岡繭編〜」)で、「(私が思う平和への進み方は、)山登りのように、登っている時は登っているのかどうか、あまりわからないのですが、少し止まって見渡してみると、「さっき見上げていた丘が、今は下に見えている」みたいな感覚です。」と仰っていたのが、印象的でした。ブルンジ事業を通して、そのような経験はありますか。
支援対象者一人ひとりで差はあるのですが、ブルンジ事業を通して、その人の人生が良い方向に進み始めていることです。
以前、紹介したこともあるのですが、支援対象者のエリック(仮名)君は、自分の力で、人生を歩み出した人です。最初は訓練で使用しているミシンの器具をこっそり盗んで売ってしまったり、料理を準備してくれる人に無礼を働いたりと、彼は少し大変な生徒でした。私たちも家族面談などを通して、サポートを行いました。その後、彼は心を改め、職業訓練に真面目に取り組むようになりました。そうすると、洋服を作れるようになり、洋裁が好きになり、今はグループビジネスから独立し、自分でビジネスを起せるまでになりました。その上、中退していた学校に通い直し、今も継続して学校で勉強しています。自分で得た収入を使って学校にも通い、ビジネスも継続している様子をみていると、何かしら役に立てたと思えて、とても嬉しいです。
【エリック(仮名)くん洋裁中の様子】
わかりやすい変化だと、支援対象者のみんながビジネスを開始すると少しふっくらし始めることです。
これは現地スタッフともよく話すのですが、私たちの施設で職業訓練受けている時は、みんな結構痩せているのですが、ビジネスを始めると、徐々にふっくらしてきます。つまり、ビジネスを開始して、お金が手に入り、食べたいものを食べれる環境になったということです。そういった点で、変化を感じることができ、やりがいにつながっています。
※グループビジネス:支援対象者が複数人でグループになり、一つの店舗を開業し、店舗運営を行っていくこと。
ーそれは、とても心が温まる変化ですね。最後に、これからのブルンジ事業の意気込みをお願いします。
「やるべきことはとことんやっていく。愚直に進んでいく!」
やはり、目標は見失わず、その目標に対して、柔軟に進めていきたいと思います。ブルンジ政府が求めているものや、効率性を考えると、グループビジネスに固執してしまいがちになります。しかし、私たちの最終ゴールは「自立と自治、収入向上」です。グループとして円満にビジネスを続けていくことが理想ではありますが、時には、グループビジネスを辞めたいという相談もあります。それぞれの決断の中で、支援対象者の方がグループを離れるという選択をしても良いと思っています。どんな決断であっても、彼らを尊重し、目標に到達できるようにサポートしていきます。
―創設者の鬼丸さんが「しなやかさ」という言葉をよく使いますが、まさしくブルンジ事業はこれからも「しなやかに」進んでいくのですね。古岡さん、インタビューありがとうございました!
ー編集後記:執筆担当福井よりー
皆さま
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
前回、執筆を担当しましたラオス事業とは少し違った視点で今回のブルンジ事業を紹介させていただきました。今回は「ブルンジの成長」と「古岡繭の成長」が重なる様子が伝わりましたら、幸いです。
今回のインタビューでは、古岡さんが現在のブルンジ事業になるまで、丁寧に関係性を紡いできた姿が印象的でした。現地のスタッフや支援対象者との関係性。今回は聞けていませんが、現地パートナー団体との関係性など。関係性は様々ですが、古岡さんの姿勢には、徹底して「尊重」と「傾聴」があると気づきました。私は「自分の仕事をする時の姿勢はどうだろう」と、少しドキッとしましたが、わすれてはいけない、大切なことだと思います。
私たちが目指す「世界平和」は、まだまだ遠く、見えない場所にあるかもしれませんが、古岡さんが大切にしている姿勢は、着実に進んでいくための大切な幹なのだと強く感じています。
テラ・ルネッサンス創設20年キックオフイベントのご案内
2021年7月3日(土)に当会創設20年を記念したキックオフイベントを開催します。イベント第1部では当会理事長小川真吾より、テラ・ルネッサンス20年の海外事業地での支援を振り返ります!また、第2部では国内外の事業地と中継をつなぎ、現地で働くスタッフの想いをお伝えします!
今回、インタビューした江角はカンボジアから出演します!!ラオスからは、現在ラオス事業を担当している飯村と現地スタッフが出演します!
ぜひ、みなさま、ご参加くださいませ^^
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インタビュー・記事執筆
啓発事業部 福井 妙恵
執筆協力
アフリカ事業サブマネジャー 古岡 繭
啓発事業部インターン 今津 千尋