【カンボジア】地雷原を訪れて感じた、地雷撤去の難しさと重要性
【アジアレポート/2021年6月_Topic03】
地雷撤去団体MAG(Mines Advisory Group)から2021年4月から6月までの第1四半期の報告書が届きました。テラ・ルネッサンスは、カンボジアでの地雷撤去支援のため、MAGの1つの機械チームが1年間活動を行えるよう、毎年資金を提供しています。
テラ・ルネッサンスが支援しているMAGの機械チームは、第1四半期、バッタンバン州コッスクララ郡のプレイ・タトゥン村にある1つの地雷原で除去活動を行いました。
↑バッタンバン州コッスクララ郡の地雷原に立つMAGの作業員
この期間のチームの活動により、236,485㎡の地雷で汚染された土地が住民に返還されました。これは、1年間のプロジェクト全体の土地返還目標の62%を達成したことになります。また、活動中に中国製のタイプ72Aという対人地雷2個を発見・破壊しました。
機械チームは、2021年4月1日にプレイ・タトゥン村の地雷原での地雷除去活動を開始し、今月で活動を終える予定です。この地雷原は、2世帯7人(女性2人、男性4人、少年1人)が所有しており、この地雷原での地雷除去が完了すると、322世帯1,399人(女性432人、男性402人、少年270人、少女295人)が間接的に裨益します。
このような報告を四半期ごとにMAGからもらっているものの、実際に活動の現場を見せていただく機会は、そう多くはありませんでした。今回は、実際に地雷原を訪問し、地雷撤去の現場を見学させてもらうという貴重な機会をいただくことができました。
テラ・ルネッサンスが第一四半期に支援していたDigger 250という機械が、カンボジア東部のラタナクキリで見つかった地雷原での撤去作業を実施するために、7月1日に移動してしまったため、Mine WolfというDigger 250よりも、もう少し大型の機械を使った地雷撤去の様子を見学する形となりました。場所は、Digger 250が第1四半期活躍していたところと同じ、バッタンバン州コッスクララ郡プレイ・タトゥン村です。
↑地雷撤去機械 Mine Wolf
地雷原に着くと、現場での作業の詳細と安全面の注意についての説明を受けました。その後、重い防護服とヘルメットを着け、地雷撤去の現場まで歩いて向かいます。
今回私たちは、Mine Wolfという機械を遠隔操作する作業員の方が乗っている車両の後ろで、地雷撤去の様子を見学させていただきました。この車はもし地雷が爆発しても身を守ることができるように、爆発の破片が飛んできても壊れない頑丈な作りだそうです。機械での作業を終えた後は、見落としがないように地雷撤去作業員(ディマイナー)が、金属探知機で確認作業を進めダブルチェックをしていきます。
↑Mine Wolfを遠隔操作している様子
機械の導入によって作業効率はかなり良くなってきているものの、地雷撤去には未だに膨大な時間と労力がかかります。また、説明してくださったMAGの方は、「地雷撤去は“living process”だ。」と話していました。”living process”、つまり、どこにどのタイプが埋まっているか分からない地雷を、地域住民の証言に基づき計画を立て、撤去を進めますが、作業中に予想に反することが起きるたびに、作戦を練り直し、また作業を再開する、という過程を地道に続けていくしかないということです。
例えば、住民の話から対人地雷しか埋まっていないと予想していた土地で、対戦車地雷が見つかり、撤去の方法を変更しなければならないこともあるといいます。
↑ディマイナーが金属探知機を使い手動で作業を行っている様子
このように、なかなか一筋縄ではいかず、丁寧な作業が必要な地雷撤去ですが、やはり地雷が除去された土地が返還されることは、地域住民にとって大きな財産になります。未だに地雷が多く埋設されている農村部では、特に土地を持っていると野菜栽培、家畜飼育など、できることが格段に広がり、生計向上の重要な手段となります。紛争が終わっても何十年と地中に残り続ける地雷に影響を受けるコミュニティが、安心して元の生活に戻るためには、やはり地雷撤去が必要なのです。
テラ・ルネッサンスは、これからも地雷の脅威を取り除く地雷撤去支援を継続するとともに、地雷によって身体的・社会的に脆弱な立場におかれてしまった人々が生計を向上できるよう、活動を続けていきます。
以下にMAGから届いた第1四半期の報告書の原文と和訳を、それぞれ添付いたしますので、ご興味のある方はご覧ください。
元浦 菜摘