『私の一歩。』03.カンボジア サン・チュオンさん
『私の一歩。』は、【夏季募金キャンペーン2021 『それでも、一歩を。』】の期間中に、お送りする特別連載ブログです。本シリーズでは、テラ・ルネッサンスに関わる人々(スタッフ、支援対象者の方々、支援者の方々)の「一歩」をお伝えいたします。
今回、インタビューしたのは、カンボジア・ロカブッス村に住む SannChhoun(サン・チュオン)さん。テラ・ルネッサンスの村落開発事業の対象者として2019年から豚の飼育に取り組んでいます。
日本から遠く離れたカンボジアでも、新型コロナウイルスの猛威が人々の生活を圧迫しています。そんな逆境でも、得意の豚飼育による収入源の多様化に成功し、しなやかに影響に対応する彼女の姿をご覧ください。
失敗を経て、豚飼育への再挑戦
ーーーチュオンさんはテラ・ルネッサンスのサポートをいつから受けていますか?
私が家畜銀行※を利用して豚飼育を開始したのは2019年です。当初は3匹の豚を受け取り、飼育を始めました。豚が病気になることもなく、順調に飼育を続けることができているので、現在では、41頭の子豚の販売に成功し、テラ・ルネッサンスにも約束していた頭数分の豚を返却することができました。
※家畜銀行:テラ・ルネッサンスから支援対象者の方に家畜を貸し出し、その家畜に子どもができたら、提供した家畜と同じ数の家畜を、返却してもらうシステム。一度家畜を返却すれば、その後生まれた家畜の子どもは飼育した村人が飼い続けることができる。
ーーーサポートを受けるきっかけは何だったのですか?
私は元々、タイに行って出稼ぎをしていました。出稼ぎ自体の収入は良かったのですが、渡航費や食費、家賃、ビザ費用などの支出も大きく、段々と収支のバランスが取れなくなってきました。その後、出稼ぎをやめて、村で雑貨屋と豚飼育を兼業するようになりました。
元々、豚飼育というのは、私たちの住む田舎での限られた職業の一つであり、私は親から飼育方法を教わって飼育に取り組んでいました。しかし、ある時豚が妊娠しなくなったことをきっかけに、全て売ってしまい、その当時の豚飼育は失敗に終わりました。
そんな時、村で野菜栽培のワークショップを開いていたのがテラ・ルネッサンスでした。当時は豚を買う収入もなくなっていたので、テラ・ルネッサンス の家畜銀行のシステムを知り、利用することにしたのです。これには村長の勧めもありました。その時は、「また豚飼育に再挑戦できる!」と思い、とても嬉しかったです。
飼料栽培を自分の手で。逆境を乗り超えるしなやかさ
テラ・ルネッサンス のサポートを受け、再び豚飼育に挑戦し始めたチュオンさん。お話を聞く中では、順調に豚飼育を続けているだけでなく、立ちはだかる困難にも積極的にチェレンジしている様子が伺えました。
ーーー現在兼業している豚飼育と雑貨屋経営には、コロナ禍での影響はありましたか?
はい。経営している雑貨屋では客足が遠のいてしまい、収入が半減してしまいました。一方豚飼育は、人との接触なく実施できますし、ほとんどコロナ禍での影響を受けていません。ただ、豚飼育で使っていた飼料(米ぬか)の流通が減少しており、どこにも売っていない状態が続いています。
それでも、やはり豚飼育は小売業のように毎日収入が見込めるものではありませんが、長期的な収入の向上を期待できるので、このような状況下では特に大きな安心材料になっています。
ーーー飼料の流通が減少しているようですが、どのようにして乗り越えてきたのですか?
新型コロナウイルスが拡大する前は、豚飼育の資料として米ぬかを用いていましたが、現在は自宅で育てている空芯菜や、バナナの茎をスライスしたものを飼料として使っています。バナナの実と花は、食料として食べたり売ったりできますし、人間が食べない部分は家畜の飼料にすることができるので、バナナは一石二鳥の農作物なんです。
バナナ自体も自分で栽培することによって、感染リスクのある市場にわざわざ行かなくても飼料を調達できるようになっています。
【チュオンさんのバナナの農地】
ーーー逆境を生かして、また新しく踏み出しているのですね。チュオンさんが「一歩」踏み出す勇気はどこから湧いてきますか?
正直な気持ちを言えば、このような状況下で新しい一歩を踏み出すことは容易ではないと思います。しかし、これまで培ってきた技術を用いて、豚飼育を今後も継続して取り組んでいけば、きっと大きな収入に繋がると分かっているので、これからはバナナの栽培によって飼料を賄いながら、豚飼育をさらに拡大していきたいです。
ーーーありがとうございます。今後の豚飼育の拡大が、きっとチュオンさんをはじめとして地域の全体の幸せにつながっていくと思います。
〜夏季募金キャンペーン実施中〜
インタビューを行う中で、「今使っている豚小屋が小さくなってきているので増築したい。」と、豚飼育のさらなる拡大に積極的な姿勢を見せたチュオンさん。新型コロナウイルスの影響にも柔軟に対応しながら、これからの自立に向けた取り組みをまた「一歩」進めようとするその姿に、私たちが勇気をもらいました。
逆境をチャンスに変える。簡単なことではないけれど、その勇気がきっと伝播して、また誰かの一歩につながってゆく。私たちはこれからも、歩み続けるひとり一人に寄り添いながら、活動を続けてまいります。
テラ・ルネッサンスでは、7月15日から8月31日まで、夏季募金キャンペーンを実施しています。
大槌を含むアジア・アフリカで自立に向けて歩む人々と共に、テラ・ルネッサンスが活動を継続していくために、この期間に【1,200万円】のご寄付を必要としています。
ぜひ、その自立の「一歩」に寄り添う支援に、寄付という形で、皆さまにご協力いただけますと幸いです。
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執筆担当/
啓発事業部 インターン
今津千尋
執筆サポート/
カンボジア農村開発支援対象者 サン・チュオン
海外事業部 インターン 元浦菜摘