『私の一歩。』06. ウガンダ事務所 オテマ・ジミー
『私の一歩。』06. ウガンダ事務所 オテマ・ジミー
『私の一歩。』は、【夏季募金キャンペーン2021『それでも、一歩を。』】の期間中に、お送りする特別連載ブログです。本シリーズでは、テラ・ルネッサンスに関わる人々(スタッフ、支援対象者の方々、支援者の方々)の「一歩」をお伝えいたします。
今回の『私の一歩。』はテラ・ルネッサンス ウガンダ事務所長のオテマ・ジミーです。2005年より、テラ・ルネッサンスはウガンダで洋裁などの職業訓練を通じた元子ども兵の社会復帰事業を行ってきました。
ジミーは2006年に服飾デザイン講師としてテラ・ルネッサンスに関わり始め、2011年にウガンダ事務所長に就任してから現在まで、ウガンダ事務所をまとめています。
様々な立場で働く中で、壁に当たり、悩み試行錯誤を繰り返しながらも、「一歩」を踏み出してきた、彼のその想いを聞かせてくれました。
ぜひ、ご一読ください。
ーこの度は、ウガンダからインタビューにお答えいただきありがとうございます。ジミーさんがテラ・ルネッサンスで働き始めたきっかけは何ですか?
2006年にテラ・ルネッサンスの現理事長・小川さんが私の店(服飾デザイン店)に来て、雇われたところから始まりました。
2006~2007年は講師、そこから事業管理補佐として仕事をして、2011年にウガンダ事務所長となりました。
紛争被害者とともに成長してきた15年
ーテラ・ルネッサンスで働かれて、もう15年になるのですね!ジミーさんがどのような想いを持ってここまで歩まれてきたのか、お聞きしたいです。事務所長になる前、テラ・ルネッサンスで働いていた際はどのような感じでしたか?何か難しかったことなどはありましたか?
そうですね。事務所長になる前は、支援の受け手の方々と接する中でたくさん悩んだことがありました。
ウガンダ北部では当時20年以上にわたって戦闘が続いていましたが、私が入職した当初はまだ、ウガンダ政府軍と反政府勢力(LRA(*1))の間で停戦合意が結ばれたばかりでした。これによって、ウガンダ北部での戦闘は収まり、治安は安定していきました。
それと同時に、多くの国際支援団体が活動を開始し、私たちの事業地であるグルには、続々と援助が流れ込んできたんです。
その影響もあって、援助に依存することが当たり前という考えをもってしまう紛争被害者の人々もいました。
*1 LRA(Lord’s Resistance Army:神の抵抗軍):ウガンダで活動していた反政府組織。1980年代後半からウガンダで始まった紛争中に、3万人以上もの子どもたちが誘拐されたと言われている。
平和教育の授業を行っているジミー所長
そうですね、大切なことはコミュニケーションなんだと思います。
根気強くコミュニケーションを図ったことで、認識の違いを克服できたと思います。ただ、問題を解決するには自分自身の課題も乗り越える必要がありました。
スキルや知識が足りていないと感じていたので、コンピュータースキルやプレゼンテーション力などを鍛える専門的なトレーニングに参加して、自己研鑽に努めました。
また週末に大学に通って、プロジェクト管理や人材管理のスキルも学びました。
このような場合には、カウンセリングなどを通してそれぞれの状況を把握しながら、放課後に訓練を実施したりして、職業訓練のスキルも高められるように対応しています。
新型コロナウイルスがもたらした壁
ーウガンダの活動に新型コロナウィルスはどのように影響しているのでしょうか。
影響はありますね。テラ・ルネッサンスのウガンダ事業において、職業訓練は実践的なもので、実際に手を動かして練習する授業を必要とするので、オンラインで訓練を行うことは不可能なんです...。
また、パンデミックによって地域経済は大きな打撃を受けていますね。
今は商品を購入するような経済的余裕がある人が限りなく少ないので、卒業生の活動(洋裁ビジネスや木工大工など)に大きな影響を与えています。
ー職業訓練施設での訓練の実施は難しいということですが、施設の外での活動はいかがですか?
政府が感染対策のために行った移動の規制があります。私たちが訓練生の家庭を訪問することや卒業生のビジネスのフォローアップの訪問に制限がかかっています。
さらに、LRAの拘束から逃れて村に帰ってきたばかりの、支援を必要としている元子ども兵がまだ多くいます。
一方で、新たな訓練生を受け入れるための調査にも行けなくなっている状況です。
コロナの状況をチャンスに変える
コロナ禍での活動の様子
ーやはり新型コロナウイルスの影響は大きいですね。
グルでの新型コロナウイルスタスクフォース(*2)へ積極的に参加することで、グルとその周辺地域での感染防止対策に大きな役割を果たし、地方政府や他のNGO、一般市民の間で名前が知られるようになりました。
政府組織のタスクフォースと一緒に、新型コロナウイルスに関する啓発活動を行いました。
場所は、学校、病院、診療所、保健センター、公共市場、バス会社、お店など。ポスター、チラシ、ステッカーを使って、新型コロナウイルスの感染予防についての情報を伝えたんです。
ー重要な活動ですね。コロナによって苦しい状況に置かれながらも、逆にコロナをきっかけとして、他団体や他機関とのつながりを深めることもあったんですね。
はい。さらに言えば、コロナは革新的なアイデアを生み出すチャンスでもありました。グルの町には、マスクを買うことができずに困っている人々がたくさんいます。
そのため、コロナ禍で仕事がなくなっていた私たちの卒業生に、コロナ感染予防の布マスクを作ってもらい、経済的余裕がない地域の人たちに無償で配布しました。この繰り返し使える布マスクは、地域の人々の間でとても重宝されています。
ーそれは一石二鳥のアイデアですね。
卒業生の収入源を生み出しつつ地元社会にも貢献する、革新的なアイデアでした。
このようにテラ・ルネッサンスは、コロナ禍という困難な状況に置かれていても、新たな活動を通してしっかりと対応することができています。
この先もコロナの感染再拡大など、私たちの事業がリスクに晒される場面があるでしょう。
そのようなときにでも、今回の成功例のように、新しいアイデアを考え、対処していきたいと思います。
ー苦しい状況の中でも、周りの人と手を取りながら一歩ずつ活動をより良い方向へ導いていらっしゃる姿に、勇気をいただきました。ジミーさん、ありがとうございました。
夏季募金キャンペーン2021、実施中!
「毎日小さなことを少しずつ続けること。大きいことを成そうとしたら一気にすべては難しい。少しずつ、積み重ねていくことで、やがて大きなことを成せる。」と話してくれたジミー所長。
終わりが見えないコロナ禍で、社会全体がどんよりと曇り、前に進もうとすることがなかなか難しいように感じます。
しかし、15年以上に渡って様々な課題に直面しながらも、小さな工夫や努力を一歩、また一歩と積み重ねてきた彼の姿は元子ども兵たちを勇気づけてきました。
そして、彼を含むウガンダのスタッフとともに歩みを進め、自身の過去を受け入れ乗り越えながら「自立」を成し遂げてきた、ウガンダの紛争被害者の方々は、今確かに、私たちを力強く励ましてくれる存在です。
テラ・ルネッサンスでは、7月15日から8月31日まで、夏季募金キャンペーンを実施しています。
カンボジア、ラオス、ウガンダ、コンゴ、ブルンジの紛争被害者の方と改めて前に進んでいくために、この期間に【1,200万円】のご寄付が必要です。
ぜひ、彼ら・彼女らの自立の「一歩」に寄り添う支援に、寄付という形で、ご協力いただけますと幸いです。
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インタビュー協力:
ウガンダ事業所長 オテマ・ジミー
記事執筆/
海外事業部インターン 元浦菜摘
執筆サポート/
啓発事業部インターン 田畑勇樹