『景色はつながる』03.コンゴ民主共和国
『景色はつながる』は、冬季募金キャンペーン2021『この景色の先に。』期間中に配信する特別連載ブログです。本シリーズでは、様々なことを乗り越え一歩ずつ進んできたからこそ見えるものを「景色」とし、テラ・ルネッサンスが支援する方々が「これまで見てきた景色」、そして「今見えている景色」をお伝えします。
コンゴ民主共和国の南キブ州では、現地の最貧困層の人々と共に、養蜂ビジネスの立ち上げを行っています。南キブ州はいまだに紛争が続き、かつ、新型コロナウイルスの影響で経済活動が制限されている地域です。そのため、新たな仕事を得ることは困難になっています。
しかしテラ・ルネッサンスの養蜂の技術訓練に参加してくれている訓練生たちは、困難があってもハチミツ製品の完成までビジネスをつなげ、新しい「景色」を見るために歩みを進めてきました。
ビジネスを始めるには、時間がかかることも、一人ではできないことも、たくさんあります。
それでも、そしてだからこそ、訓練生らは力を合わせて、自分たちにできることを一つずつ積み重ねています。彼らが養蜂ビジネスを通して見ようとしている「景色」を、ぜひ知っていただきたいです。
生活向上のための仕事を創る
当会が養蜂事業に取り組む南キブ州は、金やタンタルといった、電子機器や携帯電話などに使われる鉱物資源が豊富な地域です。
最貧困の暮らしを余儀なくされている若者や子どもたちは、(わずかな)現金収入しか得られなくても鉱山労働や過酷な重労働をしていることがあります。また最悪の場合、鉱山を支配しようとする武装グループに徴兵されることもあります。
こうした問題を根本的に解決することは大変なことですが、その地域でできる仕事を創ることで、現地の人々の生活を向上させることができます。新しい仕事が、上記のような鉱山労働や重労働に対してオルタナティブな(=代わりとなる)仕事になるためです。
テラ・ルネッサンスが最貧困層の人々と取り組んでいる養蜂ビジネスの立ち上げも、同国でのオルタナティブな仕事の一つです。
コロナ禍でも大切なミツバチを守り抜く
養蜂訓練事業では、最貧困層の人々を養蜂技術訓練の訓練生に迎え、30箇所の養蜂場で養蜂を進めてきました。
しかし、訓練生たちがちょうど技術習得を終えた時、新型コロナウイルスの影響が彼らを襲いました。ハチミツを加工するために必要な機材を搬入することができなくなり、約1年半もの間、ビジネスの立ち上げが足止めになったのです。
しかし、機材の搬入がいつ再開するか分からない状況になっても、訓練生たちはミツバチを守り続けました。機材が届き採蜜できるようになるまで、訓練生たちはグループメンバーと協力し、活動を止めなかったのです。
ミツバチの巣箱を定期的に点検し、さらに、病気や天敵の動物、天候などから巣箱を守るためにたくさんの工夫を凝らしていました。
【成長したミツバチの巣】
例えば、物資がない中でも雨風をしのぐために草や木などの「地域にあるもの」を利用したり、養蜂場の屋根にするために支給されたブリキ板を自分たちで取り付けたりと、その時できることを見据え、工夫と努力を重ねていました。
訓練生たちが持つ、新しい景色を切り開く力
2021年8月ごろ、ようやく一次加工のための機材を運びこむことができ、採集したはちみつの加工やパッケージングの研修が始まりました。そして、それらの技術を習得した訓練生たちは、自分たちの村の資源を活かして、ハチミツ製品を完成させることができました。
【完成したハチミツを手にする訓練生たち】
このハチミツを、訓練生たちは「UMOJA(ウモジャ)」と名付けました。UMOJAとはスワヒリ語で、一つに繋がろう、という意味です。
感染症拡大や紛争、貧困の状況下であっても、「一つに繋がれば、きっとどんな困難も乗り越えていける」という想いが込められています。養蜂からハチミツの完成まで、地域一丸となって取り組んだ経験が、彼らの力になっているのです。
【UMOJA HONEY】
この地域には、鉱物資源だけでなく、水と緑に恵まれた豊かな自然があり、かつて人々は農耕を営みながら平和に暮らしていました。
紛争の影響であらゆるものが破壊された今も、地元の人々は、自分たちの村に愛着と誇りを持ち続けています。いつか「カロンゲ(地元名)」産のハチミツを日本に輸出したい!と何人もの訓練生たちが話していました。
私たちテラ・ルネッサンスはこれからも、地元の人々に在るものを大切にし、こうした在来の資源を活かしながら活動していきます。
そして活動を通して、仕事をする楽しさや物を作る楽しさを、彼ら彼女たちと一緒に探していきたいと思っています。誰かと繋がることであったり、村への愛着や誇りであったりと、人それぞれの生きがいや想いを大事にしていきます。
◆◇ 冬季募金キャンペーン2021 ◇◆ 実施中!
今見えている景色は、周囲の状況に左右され、苦しいものかもしれません。また、紛争、貧困、コロナ禍など、降りかかってくる厳しい現実は人それぞれで、自分はひとりぼっちで踏ん張っているようにも思えるかもしれません。
それでも、今この手に持っているもので、できることを積み重ね、誰かと手を取り合い、進むことはできないだろうか。どうにかして進めば、気づけば新しい景色が見え始めるのではないか。コンゴ民主共和国の訓練生たちは、その可能性を教えてくれています。
現在もなくならない紛争被害や貧困。未だに残るコロナ禍の影響。
下を向きそうになるときも、テラ・ルネッサンス創設からの20年間で見せてくれた彼女ら・彼らの軌跡が、「ひとり一人に未来をつくる力がある」ことを思い出させてくれます。
私たちはこれからも、一歩を踏み出そうとするひとり一人の背中を押し、共に歩んでいけるよう、活動を続けてまいります。
テラ・ルネッサンスでは、2021年11月18日から2022年1月12日まで、冬季募金キャンペーンを実施しています。アジア・アフリカの紛争被害者の方々の自立に向けた歩みを支える、弊会の活動を継続していくために、この期間に【2,000万円】のご寄付を必要としています。
ひとり一人が、未来をつくるチカラを発揮し、その先の「景色」にたどり着くための支援に、寄付という形で、ご協力ください。
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記事執筆/
啓発事業部インターン 小川さくら
執筆サポート/
啓発事業部スタッフ 津田理沙
啓発事業部インターン 田代啓