『景色はつながる』08.今がスタート

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『景色はつながる』08.今がスタート

『景色はつながる』は、冬季募金キャンペーン2021『この景色の先に。』期間中に配信する特別連載ブログです。本シリーズでは、様々なことを乗り越え一歩ずつ進んできたからこそ見えるものを「景色」とし、テラ・ルネッサンスが支援する方々が「これまで見てきた景色」、そして「今見えている景色」をお伝えします。

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2012年に紛争が始まった南スーダン。それまで平和に暮らしていた市民たちは国外への亡命を余儀なくされ、隣国ウガンダへ逃れた難民は83万人以上にも及びました。

 
難民となった人々が当初過ごしていたのは、食べ物も寝る場所もなく、教育も医療も受けられない、過酷な環境でした。
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 【パギリニア難民居住区での緊急支援の様子】


そんな状況に置かれてもなお、現地には、少しでも早く生活を立て直そうと、自らの力で立ち上がる人々の姿がありました。


難民居住区で駐在員の鈴鹿が目にしたのは、自身の手で家を建てている人々。雨季になると家庭菜園によって栄養のバランスを取ろうとする人たちもいました。鈴鹿はそうした景色から、自分たちでこの状況をなんとかしようとする人たちの、「生きようとする力」を強く感じたと言います。


「諦めないことの大切さ」。ありきたりな言葉かもしれませんが、彼らの姿を見ていると、そんなことを痛感せずにはいられません。そして、私たちテラ・ルネッサンスは、苦境から立ち上がって歩き続けてきた人たちが、新たな景色に辿り着こうとしているところを、今まさに目撃しています。


今回は、理不尽にも平穏な生活を奪われ、それでもなお希望を失わず、テラ・ルネッサンスと共に新たなスタートを切った、ある2人の女性をご紹介します。

10人の家族と共に、ウガンダへと避難―ケビンさん

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【ケビンさんとお子さん】


ケビンさん(仮名)、29歳。彼女は、紛争が始まる前は、南スーダンで農民として、平和に暮らしていました。そこでは、食べる物が不足して苦しむ事もなかったといいます。南スーダンと聞くと『紛争や飢餓』のイメージがあるかもしれませんが、そこには困ったときには遠慮なく近所の人たちと助け合える文化があり、ケビンさんもそれを誇らしく思っていました。

 

そんなケビンさんとその家族は、南スーダンで紛争が始まったことをきっかけに、2016年、ウガンダへ難民として避難しました。

 

ウガンダに逃れてからは、他団体が行っている食糧支援を受けていましたが、それだけでは十分とは言えませんでした。9人もの子どもたちを育てなければならず、また夫は障害を抱えているため、働くことができません。彼女自身が大黒柱となって、家族を支える必要がありました。

 

そこで、収入源となる洋裁の技術を身につけるために、彼女はテラ・ルネッサンスでの自立支援に参加することを選びました。

『このチャンスをものにして、子どもたちを幸せにするんだ。』

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【洋裁の訓練を受けるケビンさん】 


愛する故郷を出て、国境を越えて避難する。9人の子どもたちの世話をしながら、障害のある夫の分まで稼がなくてはならない。しかし、難民となったばかりの彼女には1円も稼ぐことができず、食糧支援も十分には届かない。

 

そんな過酷な日々の中でも、ケビンさんは家族がもっと幸せに暮らせる未来を目指しました。

 

「多くの南スーダン難民は仕事がなく、貧困に喘いでいる状況にある。だから、神が与えて下さったこのチャンスを絶対にものにするんだ。子どもを幸せにするんだ。」

 

そんな想いで懸命に訓練に取り組み、技術を身につけた結果、今では子どもたち全員の学費を払えるほどの収入を得ることができるようになりました。

 

彼女のこれからの目標は、コツコツとお金を貯め、今営んでいる洋裁ビジネスを大規模なものにして、9人の子ども全員を大学まで行かせること。

 

「子どもには、不自由なく自分の人生を送ってほしい」と家族の明るい未来を願う彼女のこれからには、きっと今以上に素晴らしい景色が待っていることでしょう。

『私はもう、南スーダンには帰らない』_クリスティンさん


2016年の紛争再発により、家族と共にウガンダへと逃れたクリスティンさん(仮名)。

彼女もまた、南スーダンでは家族平穏に暮らしていたと言います。しかし、紛争により故郷を追われ、茂みの中に隠れながら逃亡を続け、ウガンダに辿り着きました。

 
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【南スーダン難民居住区の風景】 


ウガンダで暮らし始めてからは、仕事が無く子どもたちの学費も払えず、ただ食糧支援だけを頼りに生きていました。さらには、置いてきた調理器具やマットレスなどの日用品を取りに南スーダンに戻った夫が、それきり帰ってきませんでした。

 

クリスティンさんは、自身が抱えた絶望を、このように語ったことがあります。

 

「夫は軍に拘束されてしまいました。今はもう殺されてしまったかもしれません。今でも夜になると、夫のこと・紛争の記憶がフラッシュバックし、眠れなくなります。

 

南スーダンに平和が訪れたとしても、私はもう南スーダンには帰りません。」

 

愛する家族と平穏に暮らしていた故郷は、今や彼女にとって、大切な人を奪った恐ろしい戦場に成り果てました。例え紛争が終わっても、傷付いた人々の存在は決してなかったことにはなりません。

『このチャンスを掴んで、人生を変えたい。』

そんな辛い状況にありながらも、クリスティンさんは生活を再建するため、テラ・ルネッサンスの職業訓練に参加しました。訓練を受けていた当時の彼女は、こんなことを語っていました。

 

「今は難民として他の援助機関から食糧支援を受け取っていますが、それはいつか終わるものです。だから私はこれから、身につけた編み物の技術で収入を得ていくことが重要なんです。このチャンスを掴んで、人生を変えたいです。」

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【編み物の訓練を受けるクリスティンさん】


2018年2月より編み物の職業訓練を受け始めた彼女は、同年12月についに難民居住区内に編み物店を開業し、ビジネスを開始しました。

 

自信の持てる技術を身につけ、新たなスタートを切ったクリスティンさんは、このように意気込みを聞かせてくれました。

 

​​「まずは一人目のお客さんに自分の商品を買ってもらうこと。そうすれば自分の技術を多くの人に知ってもらい、たくさんのお客さんに来てもらえると思います。」

 
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【自身の編み物店で意気込みを語るクリスティンさん】
想像を絶するような辛い体験をしてきたクリスティンさん。それでも諦めずに前を向き続けた彼女は、明るい未来へと繋がる大きな一歩を踏み出しました。
 
自身の技術に誇りを持ち、それをお客さんに伝えたいという言葉からは、彼女がこれからの未来にたくさんの希望を抱いていることがわかります。
 
未来への希望は、日々努力を重ねて行く原動力に、そしてこれから訪れる困難を乗り越える活力になります。苦境から立ち上がってそれを手にしたクリスティンさんは、以前よりもたくましく、次の景色へ向かって歩み続けて行きます。

これから見える、新たな景色

苦境から立ち上がって、懸命に努力を続けたケビンさんとクリスティンさんは、テラ・ルネッサンスと共に新たな一歩を踏み出しました。そんな彼女達には、今、新しい景色が見え始めています。

 

大家族を養っていくため、洋裁の技術を身につけたケビンさんの次の目標は、子どもたち全員を大学にまで行かせること。

 

大切な夫を奪われても未来を諦めず、編み物の訓練を受け自分の店を開いたクリスティンさんの次の目標は、自身の技術をたくさんのお客さんに知ってもらうこと。

 

以前のように、全て充足した平穏な生活に戻るには、まだ少し時間がかかるかもしれません。それでも、歩み続ければ、きっといつか。

 

今目にしている景色の先には、もっと明るい未来が続いている。そう信じて希望を持ち続けることが、彼女たちを、私たちを、奮い立たせます。

◆◇ 冬季募金キャンペーン2021 ◇◆ 実施中!

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南スーダンで今も続く紛争や情勢不安により、難民の方々の早期帰還は非常に難しい状況にあります。そのため私たちは、社会経済的に脆弱な立場にある難民の方々には居住区での5年〜10年単位の長期生活が必要とされると想定し、彼らが中長期的に生活を送っていけるよう自立支援を行っています。

 

ケビンさんやクリスティンさんのような紛争被害者の方々と共に、一刻も早く、1センチでも先へと歩みを進めるため、私たちは活動を続けていきます。

 

テラ・ルネッサンスでは、2021年11月18日から2022年1月12日まで、冬季募金キャンペーンを実施しています。アジア・アフリカの紛争被害者の方々の自立に向けた歩みを支える、弊会の活動を継続していくために、この期間に【2,000万円】のご寄付を必要としています。

 

彼女ら、彼らと共に新たな「景色」にたどり着くための支援に、寄付という形で、皆さまにご協力いただけますと幸いです。

 

 

 

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記事執筆/

啓発事業部インターン 蒲田琴梨
啓発事業部インターン 小川さくら

執筆サポート/
啓発事業部スタッフ 津田理沙
啓発事業部インターン 田代啓

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