コンゴ・中央カサイ州と南キブ州での支援―自らの手で、暮らしを取り戻す―
テラ・ルネッサンスは、2007年から今日まで、コンゴ民主共和国(以下コンゴ)の南キブ州・中央カサイ州において、元子ども兵、性的暴力を受けた女性たちの職業訓練、小規模ビジネス起業支援、食糧増産のための技術支援など、幅広い支援活動を実施してきました。
今回のブログでは、中央カサイ州、そして両州で実施してきた支援プロジェクト(抜粋)についてご紹介します。紛争だけでなく、新型コロナウイルスの感染拡大や自然災害が彼らの命と暮らしを脅かす中で、これらの支援プロジェクトと、彼ら・彼女らが元来もっているたくましさによって、これまで多くの困難を乗り越えてきました。
■紛争の影響を受けた最脆弱層女性に対するレジリエンス向上支援プロジェクト(中央カサイ州, 2018年~現在)
中央カサイ州では、2017年に発生した大規模な戦闘により、100万人以上の人々が避難を余儀なくされました。また、同州のカナンガ市では、2018年時点で少なくとも2,600人の性暴力被害が報告されています。
そこでテラ・ルネッサンスは、2018年に国連開発計画(UNDP)とパートナーシップを組み、新たに中央カサイ州カナンガ市にも事務所を開設しました。支援を開始した国内避難民や紛争で家族を失った女性たち280名のうち、57%は紛争で夫を殺害され、94%は自分の子どもや家族を亡くしています。
彼女たちは、平均3.8人の子どもを抱えながらも、一日約40円程度の収入での生活を強いられていました。支援開始当時、ほぼ全員が、外部の援助がなくては衣食住を満たせない状況で、いわゆる「食料援助」の対象者でした。
テラ・ルネッサンスは、彼女たちに対して、3つの職業訓練(農作物の一次加工・パイナップルジュース作り・石鹸作り)を行い、それぞれの製品化とブランディング支援及び販売システムの構築を支援してきました。彼女たちは、平均1日200円程度の収入を得られるようになり、コロナ禍という困難もなんとか乗り越えることができています。
例えば、パイナップルジュース作りの2グループ(対象者100名)は、地元の産品を原料として、ジュースを製造・販売しています。そのため、コロナ禍の影響で他の清涼飲料水などの流通が滞る中、彼女たちの製造するジュースは地元の人々に届けられ、売上とともに彼女たちの生計を維持することができました。最近では、自分たちでさまざまな種類のジュース作りにチャレンジしています。
食料を与えられる(援助を受けるだけの)存在から、自らの力で生産活動を行い、自活できるようになったことは、彼女たちにとって、経済的な側面だけでなく、社会的、心理的にも大きな糧となっています。
■コンゴにおける新型コロナウイルス対策支援事業(両州, 2020年~現在)
新型コロナウイルスの感染拡大は、日本と同様、コンゴの人々の暮らしにも深刻な影響を与えてきました。
まず、急速な感染拡大を受けて、テラ・ルネッサンスは2020年、感染予防のための手洗いタンクを市場や刑務所など、人が密集する場所190カ所に設置し、感染予防のための啓発ポスターの掲示、石鹸などの衛生用品の配布を行いました。また、コロナ禍で生活が困窮した高齢者や最貧困層、国内避難民200世帯(約1,500名)に対して、食料や衛生用品を配布しました。
また、厳しいロックダウン(都市封鎖)により、生活に必要な最低限の店舗以外は休業を命じられましたが、政府からの休業補償はありませんでした。そのため、テラ・ルネッサンスの支援を通して洋裁や石鹸作りの技術を身につけ、ビジネスを営んでいた女性たちも、お店を閉めざるを得なくなり、収入を失いました。
そこで、テラ・ルネッサンスは、彼女たちに、70,000個の石鹸と11,000枚のマスク製造の仕事を提供し、それらを緊急支援物資として配布しました。さらに、ロックダウンが解除され、学校が再開すると、テラ・ルネッサンスが支援する元子ども兵や紛争孤児たちの「制服作り」を依頼し、製作が進められています。
「自分たちの生活を支えることもでき、他の住民たちの役にも立てる。かつては、戦争と女性に対する暴力の二重苦を味わってきたけど、今、この仕事をすることは、自分の生活を支え、他者の役にも立てる、二重の喜びだ」
これらの取り組みを話したとき、彼女たちはこう話しました。紛争やコロナ禍のような大きな危機下でもあっても、小さな喜びに夢を感じ、前向きに生き抜こうとする彼女たちのたくましさを感じます。
さらに、コロナ禍で多くの若者たちも仕事や収入をなくしています。地元の若者たちにとって仕事がないということは、武装グループや鉱物資源のような問題に巻き込まれる原因になります。仕事がないため、反政府軍に徴兵されたり、不法な鉱物資源の採掘に従事するリスクが高くなるのです。
そのため、この若者たちへの就業の機会提供は、紛争予防の観点からも中長期的に取り組んでいかなければいけない大きな課題です。そこでテラ・ルネッサンスは、例えば感染対策で配布している大型の手洗いタンクの土台を木材で製造してもらうなど、若者に向けても仕事を提供しています。
■洪水とコミュニティ間紛争の被害を受けたコミュニティに対する強靱な回復力および安定性の強化を通じた早期回復の支援プロジェクト(両州, 2021年~現在)
紛争の影響を強く受けている南キブ州と中央カサイ州では、洪水の被害も重なって、人々の暮らしが破壊されてしまっています。そこでテラ・ルネッサンスは、国連開発計画(UNDP)とのパートナーシップにより、両地域における脆弱な人々のレジリエンスを向上するためのプロジェクトを実施しています。
具体的には、診療所や学校、橋など住民にとって欠かせないコミュニティインフラの整備や、脆弱な人々がリスクや困難に直面しながらも、生計を向上・維持していくための技術訓練、生計向上支援などを行っています。
これらの活動は、大きな建設機材は使用せず、全て現地の人々の手作業によって進められています。これには、現地の400名以上の方々に仕事の機会を提供すると同時に、脆弱な状況に置かれていても、彼ら・彼女らの力でコミュニティを再建していってほしいと想いがこめられてます。
自らの手で、暮らしを取り戻す
自らの技術を活かした仕事を通して、自分の生活を支えることができる。そして、他の誰かの役に立つことができる。
私たちからすればごく当たり前な「仕事」は、紛争や予期せぬ災害に日々脅かされる彼ら・彼女らにとって、取り戻したい「日常」であり、大切な「夢」です。そして、この「日常」を、支援によってでなく、彼ら・彼女らの自らの手によって取り戻すことは、大きな自信と喜びにつながります。
ひとり一人に、困難を乗り越える力がある。「未来をつくる力」がある。その力を引き出すために、これからもテラ・ルネッサンスは、様々な危機に対応しながら、ひとり一人に寄り添った支援を進めていきます。
テラ・ルネッサンスは、「いま」、「平和への願い」を結集し、「いのち」を守るために、ウクライナ・コンゴ危機緊急支援を実施しています。
「すべての生命が安心して生活できる社会(=世界平和)の実現」。
―テラ・ルネッサンスのビジョン(設立目的)です。