【カンボジア】村の中にあるものを活かした感染症対策と子豚の誕生!
【アジアレポート/2022年3月_Topic01】
カンボジア王国バッタンバン州カムリエン郡ロカブッス村では、2018年から養豚の支援をしてきました。
2016年に牛やヤギ、2017年に鶏、アヒルの家畜銀行の支援を開始しましたが、一番最後に養豚の家畜銀行を4世帯から始めました。
最後に始めた養豚支援でしたが、収入面では一番多く、養豚23世帯合計で、2018年から2022年3月までの4年間に、33,608ドル(約422万円)の収入に、繋がっています。
そのため、豚の飼育希望者が多くいて、2021年度中に12世帯へ支援をしました。
↑タンクの水に薬草の発酵液を混ぜ、豚が飲めるようにすることでアフリカ豚熱を治療した
サンニュ・チュオンさん(写真右の女性)と、指導したサリー農業専門家(写真中央奥)
しかし、2022年に入り、アフリカ豚熱の感染が広がり、ロカブッス村の豚も感染し始めました。アフリカ豚熱は、ワクチンや特効薬はまだなく、感染力が非常に強いため他国では殺処分されてしまいます。
村人たちも獣医を呼んで治療をしようとしていましたが、獣医もお手上げの状況で、当会では、農業専門家と一緒に感染した豚への対処を話し合ってきました。
すでに感染した豚は、販売することはできないため、薬草の発酵液での治療を試みることにしました。これによりサン・チュオンさんの豚は、回復し、完治することができました。サン・チュオンさんは、ポリタンクに水を入れて、豚が鼻でホースの先を押すと自動的に水が出てくる仕組みで水を飲ませており、その水に薬草の発酵液を混ぜることで、確実に豚に薬草の発酵液を飲ませることができていました。
↑アフリカ豚熱の感染防止、治療のため、各小屋に薬草の発酵液を混ぜた水を入れるタンクを設置した村人(写真中央奥)と指導するサリー農業専門家(写真右)
その他の世帯は、水をあげようとしても、食欲もなく、衛生面でも地面においた給水機だとひっくり返してしまったりと、薬草の発酵液を飲むことが難しいため、チュオンさんと同じポリタンクに水をいれて、豚が鼻で押すと水が出てくる設備を、全養豚世帯へ支援しました。
何頭かの豚は既に死んでしまっていましたが、一緒に飼っている他の豚で、まだ感染していない豚は、販売するなどして、また感染症が収まってから子豚を購入するなどすることにしました。
一方で、同じ村のなかでも、人里離れたところでポツンと生活している世帯があります。そうした世帯は、感染症にかかっておらず、元気な子豚が3月に生まれました。
ローン・ソッピィさんの世帯は、昨年から養豚を始めましたが、母豚がムカデに噛まれて、1頭死んでしまいました。それでも残った2頭を継続して飼育してきました。しかし、ソッピィさんは、昨年末には集落の近くに移住したいと、当会の現地スタッフに話していました。スーン農業専門家やサリー農業専門家らが、感染症のリスクもあるし、人里離れた環境の方が、豚の餌となる自然に生えている空芯菜やバナナなどが手に入り、飼育環境がいいことを説明して、なんとか踏みとどまっていました。
そうした中、2022年3月になり、ついに子豚10頭が誕生し、ソッピィさんも大喜びでした。4月には、もう一頭の雌豚も出産する予定です。
本来であれば、人里離れたところで生活するのは不便で、メリットがないように思いますが、豊かな自然を大切に共生できれば、経済的にも、精神的にも都市での生活よりも豊かに生きられます。
そんな事例を、農村の支援を通じて、たくさん見てきました。外から物を買ってくることは、お金があればできますが、お金が逆に出て行ってしまいます。そこにある物を生かして生活すると、多くのお金を使わなくても、より多くの収入を得ることができます。
家畜銀行の仕組みでは、感染症で死んでしまう家畜もいることを考慮にいれて、貸し出した数と同じ数の家畜を返却してもらう仕組みにしています。それによって、ソッピィさんのように繁殖に成功した世帯から返却してもらった子豚を、感染症が治ってから、死んでしまった世帯へ再貸出をしていく予定です。
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記事執筆/
海外事業部アジア事業マネージャー
江角 泰