【カンボジア】農民の生活を守るアグロエコロジーに関するワークショップを実施
【アジアレポート/2022年4月_Topic03】
カンボジア王国バッタンバン州カムリエン郡ロカブッス村で、アグロエコロジーに関するワークショップを2022年3月23日と24日の2回実施しました。
アグロエコロジーは、私の最近注目している考え方で、自然と共生してきたカンボジアの農民が、伝統的なライフスタイルや農法を尊重しながら、経済的にも生計を維持、向上させることができるのではと考えています。
↑アグロエコロジーに関するワークショップで多様性について説明するスーン農業専門家(写真中央)
バッタンバン州カムリエン郡では、大きな木がたくさんある森が広がっていた地域でしたが、内戦中からクメール・ルージュの資金源となり、良質の木材としてタイへ販売され、地雷がたくさん埋まっていた土地も、村人たちが木を切り、キャッサバやとうもろこしなどの換金作物の栽培で、収入を得ようとしてきました。
しかし、モノカルチャーの換金作物の栽培は、リスクもあり、実際に毎年のように問題が起きています。2016年にはキャッサバの買取価格が急落し、多額の借金を抱えた農家が続出しました。
2019年の後半は、雨が少なく、カムリエン郡では川が干上がるほどの水不足で、龍眼の木が枯れてしまうこともありました。2020年10月には、カンボジア全土で大洪水が発生し、カムリエン郡でも浸水したキャッサバが腐ってしまうこともありました。
そして、ここ2年はコロナ禍で、ベトナムへの輸出ができなくなったマンゴーや龍眼の値段が急落しました。
ロカブッス村の村人は、多くがタイへ出稼ぎに行っていましたが、コロナ禍でタイ国境が閉鎖されると、村に戻ってきた村人たちに仕事はありませんでした。
↑アグロエコロジーのワークショップに参加しているロカブッス村の村人たち
こうした状況のなかで、村のなかで収入を得ることができる家畜飼育支援をしてきました。しかし、家畜も換金作物と同じようなリスクを抱えています。
この同じ問題と言っていいリスクを自分たちで回避し、対応できるよう柔軟性を持たせるために、アグロエコロジーという考え方が重要になります。
アグロエコロジーは、単一の換金作物の栽培や、単一の家畜の大量飼育の代替となる考え方で、すでにWFP(国連食糧計画)などの国連機関でも注目されています。
家畜飼育の中でも村人たちは、お金に繋がるかどうかでいいか悪いか判断します。豚が収入につながると分かると、すぐに多くの村人たちが豚飼育だけをやりたがります。ヤギが収入につながると分かると、ヤギだけを飼育しようとします。
しかし、一つのものに依存することのリスクは、これまでたくさん見てきました。そうではなく、鶏やアヒル、牛、さらには多様な野菜や果物の栽培なども組み合わせることで、一つがうまくいかなくても、他のもので補完することができ、自分で生活をコントロールできるようになります。
この考え方を伝えるワークショップは、コロナ禍で集会が禁止されていたために、延期してきましたが、2022年の3月にようやく実施することができました。
2日間、2回のワークショップを開催し、50人以上の村人が参加してくれました。
ワークショップ後の理解度テストでは、実施前よりも理解度が向上していることを確認しました。
アグロエコロジーの考え方は、本当に広範囲で、様々な要素を含んでいるため、全てを理解するのはすぐには難しいです。何度も何度も様々な方法で機会あるごとに伝え、実際の生活をしていく中で、理解をしていって欲しいと思います。
私たちも、実践のなかでの経験を通して、村人たちに伝え、村人たち自身に考えてもらう機会を引き続き提供していきたいと思います。
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記事執筆/
海外事業部アジア事業マネージャー
江角 泰