【活動レポート:コンゴ】気象計測器と気象情報の共有で、自然災害の被害を最小限に
日本では当たり前にアクセスできる天気予報や自然災害の警報、避難指示。しかし、紛争や貧困に苦しむ国にとって、それは決して当たり前のものではありません。そして、それらの情報がないために、自然災害の発生時に多くの人々が命を落とし、また被害を受けます。
そこで、テラ・ルネッサンスは現在、洪水が頻発するコンゴ民主共和国・南キヴ州ウビラで、気象計測器を用いて住民たちに気象情報を共有するシステムづくりに取り組んでいます。(UNDPのパートナーとしての事業)
■南キヴ州ウビラでの洪水被害
ウビラでは、2020年4月に非常に大規模な洪水が発生し、約8万6千人が被災しました。そのうち、家屋を失った人が約1万〜2万人いると推計されています。そして実は、この地域ではその後も数回にわたって洪水が発生しています。
この地域では2001年から気象観測器が使われていましたが、紛争の影響もあり、それらはすべて破壊されてしまいました。そして、紛争や経済的な理由のために、その後も降雨量が計測されることはなく、雨が集中的に降った時、どれぐらいの量が降っていて、避難すべき状態なのかどうかを、住民たちは知ることができません。
そのような状況の中で、近年洪水被害が相次ぎ、多くの人々の暮らしと命を脅かしているのです。
■洪水被害者へのレジリエンス向上プロジェクト
これらの被害を受けて、洪水・自然災害に対してのレジリエンスを高める必要性が明らかになりました。災害時の人的な被害を最小限に食い止めるためには、住民に避難を促すような警鐘を早くから鳴らすことが重要です。
そこで、水路や橋などのインフラ整備に加えて、地元の人たちと降雨量の情報を共有し、必要に応じて彼らが避難できるシステムを作るための「洪水被害者へのレジリエンス向上プロジェクト」を、昨年から開始しました。
①気象計測器の設置、技術・管理体制のサポート
【計測された情報のモニタリング】
さらに、気象計測器の扱い方やメンテナンスの仕方に関する技術支援をこれまで行ってきました。これからは、気象計測器のメンテナンスをしながら、それを逐次モニタリングしてチェックする人たちの育成を進めていきます。
また、この地域は治安が悪く、気象計測器を含む機材が盗まれる可能性もあります。そこで、管理組合(委員会)を作り、地元の人たちがこれらの機材を持続的に管理していけるように、サポートを行います。
②電話会社と提携した住民への気象情報の伝達
自然災害が発生したときに、気象計測器の情報を人々に共有し、警鐘を鳴らすシステムの一つが、フリーダイヤルを通した情報伝達です。この地域では、貧困層の人たちも含めて、携帯電話がかなり普及しています。
そこで、フリーダイヤルに電話をかければ、いつでも住民が気象に関する情報を得ることができるよう、電話会社と提携を進めています。雨が多いときに電話をかけると、今自分たちが住んでいる地域の雨量がどれくらいの状況にあるのかが、無料でわかるというシステムです。
さらに、上の写真のように、コミュニティのリーダーの方々に対して、災害予防のための啓発活動も実施しています。彼らを通して住民たちの災害リスクへの意識を高めることで、住民たちの気象情報へのアクセスも活発になり、早めの避難につながることが期待できます。
③ラジオ局の能力強化
ただ、フリーダイヤルでは、情報を得るために住民側から電話をかけなければなりません。そこで、降雨量が高まり、避難の必要性が出てきたときに、その情報をこちら側から全住民に発信する手段として、地元にある3つのラジオ局の能力強化を、これから進めていきます。
比較的貧困層の人もラジオを持っていますし、持っていない場合も、近所の住民が気象情報をラジオから入手すれば、それが周りに伝わって、本当に危険なときに早期に避難することができます。自然災害の発生時にその被害を最小限に抑えることができる、つまり、災害に対するレジリエンスが向上するという仕組みを、今作っているのです。
今後、システムや情報の基準についてのラジオ局との交渉や、ラジオ局設備の整備を行っていきます。コミュニケーションをコミュニティの中で十分にとれる体制をつくることが、災害に対する対応において非常に重要なため、引き続きこれらの活動に精力的に取り組んでいきます。
報告/
理事長・海外事業部長 小川真吾
テラ・ルネッサンスは、ウクライナの難民(避難民)の方々への食料・日用品の支給、炊き出し拠点の設置等の緊急支援だけでなく、避難生活が長引くことを鑑み、難民(避難民)等の生計向上のための支援も実施することを決定しました。
そのため、隣国ハンガリー・ブダペスト市に事務所を開設し、腰を据えた中長期的な支援活動を開始します。
同時に、弊会の活動地であるコンゴ民主共和国(以下コンゴ)を含む、ウクライナ以外の国・地域の紛争や、その影響を受ける人々の「いのち」が忘れられるという状況は、決してあってはなりません。
なぜなら、紛争で奪われる「いのち」や「暮らし」に、区別はないからです。
そこで、20年以上もの間紛争が続き、多数の方々が人権侵害や貧困に苦しんでいる、コンゴの紛争被害者の支援も強化することにしました。
これらの活動経費として、7月31日までに4,000万円のご寄付の呼びかけを開始します。
現地の最新状況、支援報告は、ウェブサイト、SNSを通じて随時発信していきます。
皆さまのご理解・ご協力を、どうぞよろしくお願い申し上げます。