【ブルンジ】ストリートチルドレン“ゼロ”の未来を目指して
「今注目してほしいテラルネ支援」と題し、現在テラ・ルネッサンスで進めているプロジェクトの中から3つの活動を取り上げ、みなさんにお伝えしていきます!
今回は、多くのストリートチルドレンを抱える国、「ブルンジ」をテーマにお届けします。ブルンジでは今も、その日食べるものに困るほど貧しい家庭が多くあります。最貧困層の子どもたちのなかには、その貧しさゆえに、日中も路上で労働や物乞いをする「ストリートチルドレン」として生活している子もいます。貧困の連鎖を断ち切るため、ストリートチルドレンとその両親や保護者を支援するテラ・ルネッサンスの活動、そしてブルンジ駐在職員・川島の想いをお届けします。
◼︎世界で最も貧しい国…?ブルンジの歴史
ブルンジは、アフリカ中部の小さな内陸国で、世界最貧国の一つと言われています。
その理由ともいえるのが、長い紛争の歴史です。ベルギーによる植民地時代、ブルンジの2大民族であるツチ族とフツ族の対立を煽るような政策が取られたことによって、両者の間に大きな衝突が起こりました。その衝突はやがて紛争へと発展し、1962 年の独立後、1972年には20万人が、1988年には5万人が大虐殺(ジェノサイド)により犠牲になりました。内戦中、さまざまな武装勢力が18 歳未満の子どもたちを「子ども兵」として徴兵し、1993年から続いた紛争では30万人の尊い命が奪われる悲惨な結末を迎えました。
【ブルンジの地図】
紛争が落ち着いた今も、国民の大多数は貧困の中で生活をしています。その日に食べるものを工面するために、本来なら学校へ行っている時間を路上で過ごす「ストリートチルドレン」も社会的な課題となっています。それを受けて弊会では、ストリートチルドレンやシングルマザー、元子ども兵など、紛争の影響を受けた人々の自立を支援する活動を行っています。
■ストリートチルドレンを学校へ!
ブルンジでは、未だに都市部と地方での経済格差が大きく、十分な収入を得られる人は多くありません。貧しくて食べ物がないので日中はお金を稼ぐしかない、病気などで両親を失ったため学費が払えないなど、様々な理由で学校へ行くことができない子どもたちが大勢いるのが現状です。学校へ通えなければ、読み書きや計算などの働くために必要な知識を得ることはできません。就ける仕事も限られ、貧困が更なる貧困を呼ぶ負のループが続いていくこととなります。
テラ・ルネッサンスでは、2013年よりブルンジ事業をスタートしました。子どもが子どもらしくいられる貴重な時間が、その日を生き延びるために消費されてしまう。そんな悲しい現状をなんとかするために、現在は最貧困層やシングルマザーを対象に、「子どもの保護と自立支援プロジェクト」という活動を行っています。職業訓練を通じて保護者の収入を安定させることで子どもたちが日中学校へ通える環境づくりを支援しています。また、職業訓練を希望する子どもたちにも、手に職をつけるための訓練を実施しています。職業訓練には、洋裁やバイク修理、小規模ビジネスなどの種類があり、2〜8か月にわたってその人に合ったトレーニングを行います。
テラ・ルネッサンスの支援では、技術を教えるのはもちろんのこと、職業訓練を受け続けられるような環境づくりにも力をいれています。
その日の食べ物に困るほど貧困に悩んでいる人々にとって、訓練に充てる時間は、本来なら食料を探したりお金を稼いだりできたはずの時間です。「職業訓練に参加する=その日に食べるものがない」という状況では、より良い未来の為に訓練に参加しようとは思えませんよね。必要な方のもとへきちんと支援の手が届くよう、参加率に応じて食料や石鹸などの生活必需品を支援し、持続的に訓練に参加していただけるような仕組みを整えています。
無事に訓練を終了して開業した後も、経営が軌道に乗るまでには時間がかかるものです。テラ・ルネッサンスでは自立支援にこだわっているからこそ、訓練終了後も、訓練期間と同等程度かそれ以上のサポート期間を設けています。開業後も定期的に連絡を取ったり、状況に応じて手助けしたりと、継続的できめ細やかな支援を実施しています。職業訓練から開業支援、そしてその後の手厚いサポートにまで一貫して携わることが出来るのは、現地に事業部を持つ私たちならではの強みでもあります。
◼︎目指すのは、孤立ではなく“自立”
テラ・ルネッサンスは、設立当時より「誰ひとり取り残さない支援」を追求してきましたが、その対象は今現在を生きる人々だけではありません。将来経済的に困窮する可能性がある子ども、「未来のストリートチルドレン」の予防にも焦点を当てています。特にシングルマザーなどの最貧困層の子どもは、貧困の連鎖でストリートチルドレンになる可能性が高いと言われています。現在訓練に参加している受益者だけではなく、その未来の家族まで含めた自立支援を目指しています。
【受益者たちと当会スタッフ】
そして私たちには、大切にしている「自立」の定義があります。それは、「周囲の人々とのつながりの中で相互に支え合いながら、自らの力で生計を維持している状態」というものです。手に職をつけて自力でお金を稼げるようになったその先に、孤立が待っていては本末転倒です。ただお金を稼ぐ力を身に着けるだけではなく、周りの関係まで含めて自分の生活を向上していけること、それが私たちの自立支援の在り方です。
◼︎未来へ羽ばたく1期生たち
2022年7月には、職業訓練を終え技術を取得した訓練1期生の卒業式が行われました。
出会った当初は、茶色くなるまで着古した穴あきの服を着ていた受益者たち。職業訓練を受け終えた今、彼ら・彼女らはコテブという布を使用した色とりどりの服に身を包んでいます。
「自分で始めたビジネスのおかげで、こんな素敵な服を買えるようになったんだ!」「お世話になった家族に仕送りができるようになって自信がついた!」と話しかけてくれる受益者たちの顔には、はじけんばかりの笑顔があふれています。
【スピーチを行う受益者代表の男の子】
そんな彼らの様子を見て、ブルンジ事務所長の川島は「今は嬉しいと同時に、どこかホッとする感覚がある」と話します。
「現地の人々に寄り添いたいと思う気持ちが強いからこそ、今の向き合い方で間違っていないか、より良い支援の方法はないかと日々手探り状態で、時々不安に思うこともあるんです。でも、出会ったころとは見違えるような彼らの明るい表情を見た瞬間、やっと自分のやってきたことが実を結んだと実感できます。」
支援を成功させるには、受益者本人たちの頑張りがなにより欠かせないものです。彼らを信じて手を尽くしてきた川島の顔にも、どこか晴れやかで誇らしげな表情が浮かんでいました。
卒業という節目を迎えた受益者たちは、これからもビジネスを安定させるまでに長い道のりを歩んでいきます。それぞれの目に映る未来を共に信じ、私たちも引き続きサポートを続けていきます。
◼︎未来のストリートチルドレンを、一人でも減らすために
私たちが目指すのは、学校へ行きたいと願う子どもたちが元気に学校へ通い、一人ひとりが生きていく為の本質的な力を身につけた未来です。生まれた環境や置かれた境遇に関係なく、未来の子どもも含めたすべての人々が自分の力で道を切り拓くことができるように、今日も活動を続けています。
【ブルンジ事業部スタッフの集合写真】
特に、ここ数年は新型コロナウイルスの流行やウクライナ危機など、苦しい生活が更に加速する日々が続いています。燃料費不足や食費の高騰、ビジネスができるエリアが制限されるなど、やっとの思いでビジネスを立ち上げた受益者たちにとってはかなり過酷な状況です。安定した収入を得られるようになるまで、そして今後の困難を自分で乗り越えていける力を身につけるまでには、途方もない時間がかかるのかもしれません。
それでも私たちは、「ひとり一人に未来をつくる力がある」と信じ、未来のストリートチルドレンをゼロにするために前を向き続けます。
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記事執筆/
啓発事業部インターン 三木遥佳
執筆サポート/
啓発事業部インターン 鈴木千花
インタビュー・報告/ブルンジ事務所長 川島綾香