【特別レポート】「あるもの探し」で平和をつむぐ
【2023年度特別募金】【カンボジア事務所長・江角泰からメッセージ】
皆さん、こんにちは。テラ・ルネッサンスのカンボジア事務所の江角と申します。
私が最初にカンボジアに来たのは2002年3月。カンボジア・スタディ・ツアーで、初めてカンボジアの大地を踏みました。
その時の衝撃は今も覚えています。一番胸に突き刺さったのは、地雷撤去現場を視察して戻る途中の道沿いで見た光景でした。砂埃を巻き上げる暑い3月の道の脇には、地雷原を示す赤いドクロのマークが立っていました。
写真:2002年カンボジア、バッタンバン州の地雷撤去現場の帰りに道端で見た地雷原の中で暮らす村人たちの家
問題は、その奥に高床式住居が立ち並び、そして村人たちが何事もないかのように歩いていることでした。小さな女の子も地雷原の中で、遊んでいます。ついさっきまで、自分は地雷撤去現場を重いヘルメットと防護服をつけ、撤去された場所を恐る恐る歩いていました。
それなのに地雷原の中で、あまりに普通に生活している人たちがいることに、衝撃を受けました。
わずか数メートルのところで、別れる世界。
数十メートルしか離れていないのに、全く同じ世界の中で生きているとは、とても思えなかったのです。カンボジア・スタディ・ツアーでは、地雷の恐ろしさとともに、地雷原の中で生活しなければならないほどの貧困問題が、地雷問題に絡んでいることを知りました。
写真:2021年7月14日に視察した提携する地雷撤去団体MAGの地雷撤去現場は、すでにキャッサバが栽培されていた場所。(バッタンバン州コークラロー郡)
それ以来、私はずっと次のことを考えてきました。
—---------------------------------------------------------------------
この人たちが、どうしたら安心して生活できるようになるだろうか。
彼らが住んでいる村で、どうしたら生活していけるだろうか。
—---------------------------------------------------------------------
地雷の問題は、撤去が進んでいくとともに、安全が確保された場所が増えてきました。今年からテラ・ルネッサンスが活動を始めたバッタンバン州サムロート郡は、カンボジアで最もひどく地雷に汚染された地域でしたが、今も地雷撤去団体が毎日撤去に奔走し、確実に安全になった土地は増えてきています。
しかし、厄介だったのは、貧困問題。地雷の被害に遭ってしまった障害者世帯や貧困層などの脆弱世帯の生計向上は、一筋縄ではいきませんでした。
カンボジアでは、地雷原を畑にし、キャッサバやとうもろこし栽培が拡大しましたが、2016年には、これらの単一換金作物の買取価格が大幅に下落し、多くの農家が多額の借金を抱える事態に。
2019年には支援する地域が干ばつとなり、翌2020年には大洪水が発生し、畑が浸水。さらにコロナ禍に突入し、国境が閉鎖され、タイへ出稼ぎに行っていた人たちが職を失い、村に帰ってきました。
写真:当会の事業で、家畜飼育技術を学び、2022年2月4日に家畜飼育のための薬草発酵液を近所の村人たちと製作した地雷被害者(真ん中で缶を持つ男性、筆者右から三番目)。
大規模な単一換金作物、つまり1つの作物だけの栽培に依存するリスクが分かってくる中、私たちが見出したのは、次のようなテラ・ルネッサンスが、大切にしている考え方でした。
—------------------------------------------
”ないものを与えるだけでなく、
現地にあるものを探して活かす”
—------------------------------------------
この考えを基に実施している事業が、現地に元からある薬草や資源を活用した複合的な農業です。特に広い土地を必要とせず、収入にも繋がりやすい複数の家畜飼育を作物栽培と組み合わせる方法でした。
これまで支援した障害者世帯の中に、奥さんが頑張って日当を稼ぎに日雇い労働に行っていた時に、お酒を飲んで、遊び歩いていた地雷被害者がいました。
事業が始まる前は、正直なところ、私はこの世帯が本当に支援して変わるのだろうかと思ってしまうような状況でした。
その彼が、家畜の飼育技術を学び、家族を支えることができるようになり、今では家族だけではなく、地域の人たちにもその技術を共有することで、一目置かれる存在になっています。
このような絶望から立ち上がってきた村人たちから、テラ・ルネッサンスの大事にしている”ひとり一人に未来をつくる力がある”ことを、私自身が教えてもらいました。
写真:2022年にプレア・プット村の貧困地域の10世帯へヤギ飼育による生計の向上とともに、学校へいけない子どもたちへの基礎教育支援を実施。
一方で、まだ困難を乗り越える過程を歩み始めたばかりの世帯もたくさんいます。今月も、カンボジアで収入が得られないために、タイへの出稼ぎに行ってしまった世帯がいました。それは、もう少しで収入を得て暮らせるようになるところだったので、私にとって、本当に悔しいことでした。
今、取り組んでいるのは、そうした脆弱世帯への『自立支援」とともに、住民たちの『自治」を促進し、お互いに支援できる体制を構築することです。
この「自治」を促進していくため、自分たちの地元にある自然資源を活用した農業技術を、若い世代に伝え、育成する取り組みを始めました。カンボジアの農村の小さなコミュニティでの「自治」ですが、小さなコミュニティでの「自治」の促進が、世界平和に繋がって行くと、私は信じています。
それは、皆さまからのご支援があるからこそ、活動ができています。皆さんと一緒に平和をつくれること、改めて、感謝申し上げます。
この度、テラ・ルネッサンスは、合計7,000万円を目標に、9月から11月までの3か月間にわたって集中的にご支援の呼びかけを行うことにしました。
先般公表した弊会の公式サイトにおける不正アクセス問題に関連し、2022年12月下旬以降、ご寄付のお願いを控えてきました。そのため、テラ・ルネッサンスは、一部の活動を続けられない危機に直面しています。
今一度、私たちに力を貸してください。
ご支援とご協力をよろしくお願いいたします
認定NPO法人テラ・ルネッサンス
カンボジア事務所 江角 泰
▼一般寄付
寄付プラットフォーム『for Good』
▼ふるさと納税による寄附
寄付プラットフォーム『ふるさとチョイス』
▼銀行振込をご希望の場合
▼郵便払込票をご希望の場合