【ウガンダ】平和の果実と希望の種
【2023年9月 活動レポート/ウガンダ】
新事業を開始したウガンダ北東部カラモジャは、同国内で最も貧困、特に食料不足が深刻な場所です。また半乾燥地域に属しているため、水不足によって農業生産が限られています。
テラ・ルネッサンスでは2023年2月より、カラモジャでの灌漑農業を通した自立支援プロジェクトを開始しました。(詳細な背景は https://www.terra-r.jp/blog/20230912.html)
プロジェクトの目的は、灌漑設備を導入することにより、地域住民が自らの力で安定して農業ができるようになることです。
自給用食料を確保したり、生産した農作物を販売することにより収入を得るなど、彼らの生計向上を目指しています。
2023年5月からは、灌漑設備の工事を進める傍ら、地域住民150世帯を支援対象者として、出身村ごとに約30名からなるグループを作って農業研修を実施してきました。
そして今月、雨水を利用して生産できるトウモロコシ、豆、ゴマなどの主要穀物がついに収穫時期を迎えました。
【ゴマの収穫に喜びの笑顔をみせる支援対象者の女性たち】
女性たちの弾けるような笑顔と喜びの声。私の心は事業開始以降、最も揺さぶられました。
一本一本、丁寧にゴマを刈り取っていく支援対象者の様子からは、自らの手で育て上げた作物をいかに大事に思っているかが伝わってきます。
わずか1.5kgの種子から、推定20kg以上にもなる大量の果実が実りました。これだけの量があれば、来季のグループ作付用の種子だけでなく、約30名のメンバーがそれぞれの農地に作付けするのにも十分な種子が確保されます。
【農地にて、収穫したゴマを束ねる支援対象者のグループの様子】
このように自給穀物の種子を拡大生産していくことが、私たちのプロジェクトの狙いの一つでした。
私たちの活動するコティド県では昨年、1,600名以上の方が飢餓に関連して命を落としました。彼らの多くは1日1回の食事がやっとという状況ですが、中には雑草しか食べるものがなく、深刻な飢えに苦しんでいる世帯も少なくありません。
この地域の最大の課題は、「食」という人間としての基本的かつ欠かすことのできないニーズです。
この事業を通して、安定的に種子が生産され、また適切に保存されることで、現在飢えで苦しむ多くの地域住民が自給穀物の生産を続けることができるようになります。
このようにして収穫した果実が、村の中で飢えに苦しむ人々の胃袋を満たし、その一部がまた種子となってより多くの人々を養う希望となれば。
そんな小さな変化の積み重ねによって、地域社会が少しずつ良くなっていくことを私たちは信じています。
【豆の収穫後研修。フードロスを防ぎ、適切に保存する】
収穫後にはフードロスを防ぎ、穀物を適切に保存するためのポストハーベスト研修も行いました。桶を揺らすと風に乗って実と殻が分離されるという、住民のもつ技術には私たち自身も驚きと学びがありました。
同時に、支援対象者の中にも変化が生まれ始めています。自ら育てた作物をみて、あるメンバーは「とても嬉しい。これからの未来に希望を持っている」と語ってくれました。
以前はお腹を手で抱えながら「アコロ (飢餓)!」といって食料をおねだりをしてきた支援対象者の姿も、あまり目につかなくなりました。
住民の顔つきは明らかに、半年前の世帯訪問時とは変わってきています。彼らは、農場に実った果実を通して、未来に視線を送っているようです。
【農地では現在、灌漑設備の敷設工事が進む。写真に映るのが野菜栽培用ドリップライン】
ついに10月には、現在工事中である灌漑設備も完成し、本事業のメインである灌漑を活用した野菜栽培も始まります。
来月はその野菜栽培についてお伝えいたしますので、来月のレポートもどうぞ楽しみにお待ちくださいませ。
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記事執筆
海外事業部 ウガンダ事業
カラモジャ事務所長 田畑勇樹