【カンボジア】農協存続の危機!?~幹部と若手職員の融合する機会の到来
【2024年5月 活動レポート/カンボジア】
カンボジアのバッタンバン州にあるバイトーン農協は、2023年1月からテラ・ルネッサンスの支援を受けて運営強化に取り組んできました。しかし、隣接するパイリン州で開催されたNGOのワークショップが、農協に思わぬ波紋をもたらしました。
ワークショップでは、農協のビジネスプラン作成のために全組合員世帯のベースライン調査を実施すること、そして9月までに監査を受けるための報告書や書類を準備することが求められました。組合員約200世帯の調査と、会計報告書や議事録などの書類作成は、パソコンを使えない農協幹部たちにとって非常に困難な課題で、私も最初に聞いた時には、どうしようかと思いました。
ワークショップに参加した農協の組合長であるチャイブンさんと監査役のモンさんは、他の幹部たちと緊急ミーティングを開きました。やはり、話し合いは紛糾しました。無償で農協運営に携わる幹部たちにとって、膨大な調査と書類作成は負担が大きく、監査を辞退する声も上がりました。
テラ・ルネッサンスは、これまで農協の若手職員への訓練を行ってきましたが、経験豊富な幹部たちはまだ若手職員に仕事を任せることができず、協力体制が築けていないことが課題でした。しかし、今回の危機を乗り越えるためには、両者の協力が不可欠だと、私は考えていました。
5月8日、組合長のチャイブンさんは、この危機を何とか乗り越えようと、事前にベースライン調査の質問用紙を200部印刷するなど準備を進めていましたが、他の幹部たちとの話し合いは難航しました。質問用紙の内容がパイリン州の作物に偏っており、サムロート郡で栽培されているドリアンやランブータンなどが含まれていなかったのです。
さらに、調査の実施方法についても意見がまとまらず、時間だけが過ぎていきました。私は途中から参加していましたが、このハラハラした議論に何も決まらないと思い、ワークショップを開催したNGOスタッフが来る翌日に確認をして進めた方がいいと提案しました。
翌5月9日、ワークショップを開催したNGOスタッフが、ベースライン調査の方法を実地で指導するために農協にきました。そこで、なんとサムロート郡の農協用に簡略化された質問用紙が渡されたのです。幹部たちは、前日の議論と印刷した質問用紙が無駄になったことに落胆しましたが、NGOスタッフの説明と、実際に2世帯への調査を体験することで、調査方法を理解することができました。
しかし、200世帯近くの調査データを手書きで集計するのは困難です。そこで私は、若手職員が調査フォームをパソコンで作成し、幹部と若手職員が2人1組で調査を進めることをチャイブンさんへ提案しました。同時に、調査の際に農協の商品を訪問販売する形で広報・販売することも提案し、農協の収入確保と商品のPRを両立させることを目指したいと思いました。
また、9月の監査に向けて、現地NGOから監査依頼文書を作成・提出するように指示がありました。組合長は手書きで文書を作成しようとしていましたが、私はそれを見て、すぐに若手職員にパソコンで文書を作成する手伝いを頼みました。1年間のパソコン訓練の成果もあり、若手職員は私も驚くほどすぐに文書を作成し、組合長のチャイブンさんは、署名を集めることができました。これはチャイブンさんと共に、私も本当に嬉しいことでした。
今回の危機は、農協の幹部と若手職員が協力する貴重な機会となればと考えています。農協の運営強化は一筋縄ではいきませんが、幹部と若手職員が協力して困難を乗り越えられるようにサポートをできればと思います。
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記事執筆/
海外事業部 カンボジア事業
江角