【カンボジア】地域の自治を希望に。農協の支援、奮闘中です!
【2024年9月 活動レポート/カンボジア】
カンボジア、バッタンバン州サムロート郡では、2023年から現地にある農協の運営強化を支援しています。高齢化が進む農協の幹部達の補佐として、運営を担う若手職員(以後「農協職員」)を育成し、農協が持続的に地域住民の生活に貢献できるようにするのが目標です。
そんな農協では、先月から、ささやかな進歩がありました!農協の法律で定められている月次の会議を、初めて農協職員達によって滞りなく開催できたのです。
これまでは、会議日時を提案するものの、忙しい幹部の承認がなかなか取れず、返事を待っている間に月末になってしまい、十分な準備ができないまま慌てて会議をするという状況でした。また、準備不足のために会議をしても何も決まらないことが多く、農作業で忙しい上に、会議に出てもお給料が払われているわけではない幹部達から、不満の声が上がっていました。
そこで、8月末の会議では、幹部の承認を待つことなく議題を収集し、会議の準備を独自に進めていきました。議事録の作成、アジェンダの収集など、万全の準備を整えて会議に臨んだのです。これは、農協職員たちが踏み出した小さな一歩でした。
【8月の農協の月次会議。コンピューターに向かう農協職員が進行もしています。】
二つ目の進歩は、農協の商品を徐々に地域住民に知ってもらえるようになってきたことです。
農協では、地元の資源を活用することをコンセプトに、作物用の有機肥料や、家畜の栄養補助剤、コンポストなどを製造・販売しています。化学肥料使用の代案を啓発すると同時に、この販売利益で農協を財政的にも強化することが大切です。
今月、農協職員達がこれらの商品を持って村を回り、セールストークを繰り広げてきました。サムロート地域では、輸入された化学肥料を使う農家が大半である他方で、人々は農薬の過剰な使用や除草剤によって人や家畜に健康被害が出たり、環境が破壊されていることを生活の実感として知っています。
そのこともあってか、地域にある薬草や果物で作られた有機肥料は、村の人も興味を持って聞いてくれました。「地元の農協が作ってるなら安心だから、少し高くても買うよ」という、嬉しい声も聞けました。
農家の人たちは、化学肥料を使わないと収量が落ちたり、コストが高かったりという心配もあるようです。しかし、それらのリスクを伝え、農協が有機肥料の使い方もレクチャーすることで、農協の商品が地域の農家にとっての新しい選択肢になればいいなと思います。
【有機肥料についてのチラシを受け取った地域の農家と、有機肥料を紹介する農協職員】
課題もあります。幹部たちは、農協の会計や活動を自分たちのものと捉え、若手職員に任せようとしない・若手職員中心に製造した商品は農協のものだと認めたくない傾向があります。実際に、ある仕事について、農協職員が出勤できない土日に幹部だけで集まってやってしまうこともありました。
ただ、事務作業などパソコンを使う作業は幹部たちは不慣れなので、若手職員の補佐が必要です。実際に幹部の皆さんは、作業が多くて大変だと嘆いています。農協職員が作業をして、幹部が確認・承認する形にするのが一つの方法だと考えています。
残された事業期間はあと1年4ヶ月ほどです。事業終了時までに、農協幹部と農協職員たちが、この事業の共通の目的、そしてお互いを必要としていることを理解し、農協の運営を協力してできるように問いかけていく必要があります。
人間関係の調整は本当に大変ですが、事業を通じて農協が地域住民に貢献する力強い存在となれば、サムロート郡だけでなく、カンボジアの他の農村地域の自治にも貢献できると考えています。その希望を持って、引き続き農協幹部、農協職員達と、テラ・ルネッサンスのカンボジア事務所が一丸となって事業を進めていきます。
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記事執筆
海外事業部 カンボジア事業
津田