【キャンペーンブログ】知っていますか?子どもが兵士にされる世界のことを / 紛争を、終わらせる。vol1.
本日から冬季募金キャンペーン「紛争を、終わらせる。」がスタートしました。今回のキャンペーンブログでは、私たちが取り組む「小型兵器」「地雷」「子ども兵」の課題のうち、ウガンダ・コンゴで取り組んでいる「子ども兵」について、「そもそも子ども兵とは?」というところから、元子ども兵が抱える課題や紛争の終結に向けたテラ・ルネッサンスの取り組みなどを全7回のブログを通してお伝えしていきます。
〇テラ・ルネッサンスとは?
認定NPO法人テラ・ルネッサンスは、「すべての生命が安心して生活できる社会(世界平和)の実現」を目的に2001年10月に設立されました。
誰もが心の中に、「平和な社会で生きたい」、「大切な人と穏やかに暮らしたい」というような ”願い” を抱いているはずだと、私たちは考えています。しかし、忙しい日常の中で、その "願い" を思い出すことなく過ぎてしまうのが現実です。
だからこそ私たちは、地雷問題や子ども兵といった社会の課題を通して、人々の心に働きかけ、その ”願い” を思い出す ”きっかけ” を届けたいと願っています。人が本来持っている平和への願いを思い出せば、世界は自然と平和に近づいていくはずーー。そんな思いを込めて、私たちの団体「テラ・ルネッサンス」は生まれました。
現在は、ウガンダ、コンゴ民主共和国、ブルンジ、カンボジア、ラオス、ウクライナ、ハンガリー、台湾、日本の9カ国で紛争被害者の自立支援などを行っています。
〇子ども兵とは?
正規、非正規を問わず、あらゆる18歳未満の子どものことを指し、戦闘に直接関わる者以外の兵士(非戦闘員)も含まれます。そこには、少年だけでなく、少女も含まれています。子ども兵はアジア、アフリカ、中東、中南米などの紛争地域で現在も確認されており、世界で少なくとも25万人以上いると言われています。
子どもが兵士になるのには、大きく2つの理由があります。
1つ目の理由は、失業率が高い貧困地域などで就職先として入隊する場合です。兵士になれば最低限の衣食住が確保できると期待したり、食糧や金銭を強奪するための銃を得る目的で入隊したり、身内を殺されたことによる復讐のために兵士になったりすることがあります。
2つ目の理由は、誘拐されて強制的に兵士にさせられる場合です。政府軍や反政府軍が、街で見かけた子どもを連れ去ったり、小さな町や学校に侵入し数十人の子どもを強引に誘拐したりします。子どもは純粋で洗脳しやすいためです。誘拐した者は、子どもに自身の親や友人の殺害、四肢の切断を強要し、他人を殺すことへの抵抗をなくしコントロールしていきます。また、麻薬やアルコールを用いて戦闘への恐怖心をなくすといったことも行われます。
【子ども兵士2003年 コンゴ民主共和国 カロンゲ地区】
〇子ども兵の役割
子ども兵は実際の戦闘以外にも色々な場面で都合の良い存在として扱われます。敵対勢力のスパイや情報伝達として、地雷原を歩かせる地雷除去装置として、最前列で行進させる弾除けとして、武器や食料などの重い荷物運びとして、そして少女兵の場合は性的虐待や強制結婚をさせられます。
子どもは従順で洗脳しやすいうえに小柄で機敏です。強制的に徴兵が可能で、すぐに ”補充” ができるため、消耗品として扱われます。また、規律や上官の命令に反したり任務を怠ったりする子どもに対しては、他の子どもへの見せしめとして、厳しい体罰、体の一部の切断、場合によっては殺害する軍隊もあり、他の子どもに罰を与える役目を担わせることもあります。
〇ウガンダ北部で誘拐された子ども
1986年以降、ウガンダ北部ではウガンダ政府と反政府勢力である「神の抵抗軍(かみのていこうぐん、Lord's Resistance Army: 略称 LRA)」の紛争が起き、推定38,000人以上が子ども兵として徴用され、戦場に駆り出されました。2006年に停戦合意(敵対行為の停止)が結ばれましたが、最終的な和平合意には至っておらず、LRAは現在もウガンダの隣国コンゴ北部、東部で活動を継続しています。
LRAに拘束されていた元子ども兵は多くの課題を抱えていると同時に、この紛争はウガンダ北部の地域住民にも大きな影響を与え、現在も様々な課題を抱えています。
〇テラ・ルネッサンスの支援と帰還の呼びかけ
テラ・ルネッサンスは、2005年からウガンダで「元子ども兵社会復帰支援事業」として職業訓練や心のケアなどを提供し、これまで251名の元子ども兵が社会復帰のための訓練に取り組んできました。ウガンダでの戦闘がおさまった後も、LRAは近隣諸国で活動を続け、現在も子どもたちの誘拐や虐殺行為を繰り返しています。
そのような中で、2023年に大きな出来事がありました。テラ・ルネッサンスは、コンゴの現地NGOや当会の社会復帰支援を卒業し自立を果たした元子ども兵らと共に、隣国に残っている兵士(多くは元子ども兵)らに帰還を呼びかけてきました。その結果、ウガンダなどで誘拐された元子ども兵とその家族141名が、ウガンダに帰還することができました。
【帰還後、長年離れていた家族や親族と再会する様子】
〇平和への歩みを止めない
テラ・ルネッサンスは、武力ではなく、対話によって、平和的に紛争を終結させるために、引き続き、様々な関係機関と連携・協働しながら、LRAに拘束されている元子ども兵の動員解除・社会復帰への取り組みを進めていきます。
そして、ウガンダやコンゴ民主共和国だけでなく、未だに地雷や不発弾の影響を受けているカンボジアやラオス、長い紛争の影響で世界最貧国のひとつとなり、ストリートチルドレンやシングルマザーなどの課題を抱えるブルンジ、戦闘が長期化するウクライナなど、戦争や紛争によって被害を受けた方々の自立支援を引き続き続けていきます。
さらに、新たな戦争や紛争が起こらないように、また戦争や紛争の影響を受けた方々が社会から取り残されることのないように、啓発活動や平和教育、アドボカシー(政策提言)も、日本や台湾、タイ等で、これまで以上に力強く推進していきます。
〇テラ・ルネッサンスの活動をもっと知り、応援する
テラ・ルネッサンスは、ウガンダ北部やコンゴ民主共和国で元子ども兵の社会復帰支援を行っている唯一の日本のNGOです。2023年には、元子ども兵とその家族141名の帰還というこれまでにない規模の帰還を支援し、今もLRAに残っている兵士に対して大きなインパクトを与えました。
しかし、現在も元子ども兵は法的地位の確保ができていなかったり、出身村・コミュニティからの差別や偏見を持たれ憎しみの対象となったり、幼いころに誘拐され戦闘しか教わらなかったために基礎学力が著しく低く生計を維持する手段が無かったり、身体的・精神的に深い傷を抱えています。LRAの最終的な解体を目指し、その後の動員解除、社会復帰支援を継続して安定的に行っていくために皆様のご関心とご支援が必要です。
〇終わらない紛争に終止符を。そのためにーーー
テラ・ルネッサンスでは、2024年11月13日(水)~2025年1月15日(水)まで、冬季募金キャンペーン「紛争を終わらせる。」を実施しています。
皆さまからお寄せいただいたご寄付は、今、世界で起こっている紛争を一つでも終わらせるために、そして、紛争の被害を受けた方々の自立支援をはじめ、テラ・ルネッサンスのすべての事業で、大切に使わせていただきます。
どうか、紛争を終わらせる活動に、力を貸してくれませんか。
___________
記事執筆 /
海外事業部 ウガンダ事業
カラモジャ事務所長 田畑勇樹
啓発事業部
インターン 村添心愛