【キャンペーンブログ】「元子ども兵が抱える課題とウガンダ北部住民への影響」 / 紛争を、終わらせる。vol.2

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【キャンペーンブログ】「元子ども兵が抱える課題とウガンダ北部住民への影響」 / 紛争を、終わらせる。vol.2

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 1986年以降、ウガンダ北部で起こったウガンダ政府と反政府勢力(神の抵抗軍:LRA)間の紛争では、推定38,000人以上が子ども兵として徴用され、戦場に繰り出されました。2006年には停戦合意(敵対行為の停止)が結ばれましたが、現在も最終的な和平合意には至っておらず、LRAはウガンダ北部から隣国コンゴ民主共和国の北東部や中央アフリカに拠点を移し、近年も子どもの誘拐や住民への残虐行為を繰り返しています。

 昨年は、テラ・ルネッサンスの支援により141名の元子ども兵とその家族が戦場から帰還しましたが、元子ども兵は様々な課題を抱えています。それと同時に、LRA紛争はウガンダ北部全体にも影響を与え、被害に遭った地域住民も多くの課題を抱えています。


 キャンペーンブログvol.2 の今回は、元子ども兵が抱える課題について解説すると同時に、LRA紛争により被害に遭ったウガンダ北部の住民の状況についてもお伝えします。

〇帰還する元子ども兵が抱える課題

 戦場から戻った元子ども兵には、大きく分けて4つの課題があります。
 非個人的な課題である、①法的地位の確保、②社会的統合、③経済基盤の確立に加え、個人的な課題である、④心身的な傷です。

①法的地位の確保
 紛争中、反政府勢力としてウガンダ政府と戦ったLRAの元子ども兵には、LRAから抜け出し帰還しても、ウガンダで犯罪者として逮捕・投獄されるかもしれないという不安があります。そのため、元子ども兵にとっては、法的地位の確保がとても重要となってきます。
 子どもを兵士として徴用することは国際法で禁じられており、帰還後の元子ども兵は法的に保護される必要があります。2000年には、「子どもの権利条約」の追加議定書である「武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書」が採択されました。この議定書には武力衝突に直接加わることが法的に認められる年齢を15歳から18歳に引き上げ、18歳未満の子どもの強制徴兵を禁止し、国家以外の勢力にも適用されることが明示されました。
 これにより、ウガンダ政府は2000年に恩赦法を発効し、指導者5名を除く元LRAメンバーに対して恩赦(1)を与えています。これまでに戻ってきた元子ども兵に対しては恩赦カードが与えられてきましたが、隣国に残る元子ども兵は、「本当に恩赦を与えてもらえるのだろうか」という疑念があり、帰還したくても中々一歩を踏み出せない状況があります。

※しかしながら、2023年に隣国から帰還した元子ども兵に対しては、まだ恩赦カードが発行されていません。一時は恩赦カード付与の日程まで決定していたものの、大臣の都合(理由は不明)により、いまだ12期生は恩赦カードがない状態——つまりいつ・どこで逮捕されてもおかしくない状態 です<2024年10月時点>)。

(1)恩赦は、行政権によって、国家刑罰権を消滅させ、裁判の内容を変更させ、又は裁判の効力を変更若しくは消滅させる行為です。罪を犯した人が自らの過ちを深く悔い、行状を改め、再犯のおそれがなくなったと認められる状態になった場合などに、被害者や社会の感情も十分に考慮した上で、「恩赦」により、制限された資格を回復させたり、残りの刑の執行を免除したりすることがあります。恩赦は、罪を犯した人にとって更生の励みとなるもので、犯罪のない安全な社会を維持するために重要な役割を果たしています。(法務省より引用)


②社会的統合
 帰還した元子ども兵は、”誘拐されて強制的に兵士にさせられた”という側面から見ると被害者ですが、親戚や家族を殺害された住民側から見ると加害者であり、憎しみの対象となることもあります。
 元子ども兵の中には、上官の命令で自らの出身村・コミュニティを襲撃することを強要された者もいます。実際に、元子ども兵の中には、家族や親戚を殺したり、腕を切り落としたり——子ども兵が逃げ出す場所を奪うLRAの戦略——といった残虐行為を強要され、実行せざるを得なかった者もいます。
 そのため、村に戻り、周囲からの差別や偏見に苦しむ者も多くいます。実際に、テラ・ルネッサンスが支援した元子ども兵の約5割が、近隣住民からの直接的ないじめや差別を経験しています。
 このように、コミュニティとの関係性をどのように再構築するかという社会的統合が一つの大きな問題になっています。

③経済的自立
 幼くして誘拐され、戦うことしか学んでこなかった元子ども兵の多くは学校教育を受けておらず、ウガンダの公用語である英語を話すことができません。特に長期間にわたり拘束されていた元子ども兵は、小学校に通った経験の無い者がほとんどです。
 教育を受けていないと仕事を得るのが難しく、経済的にも厳しい生活を強いられています。帰還しても、このように貧困に陥ってしまうことで、最低限の衣食住が満たされているLRAに再入隊することもあります。
 彼ら彼女らが、暴力ではなく別の平和的な選択肢を選ぶことができるように、生活を維持できるような生計手段をいかに確保するかが大きな課題です。

④ 身体的な傷・心的外傷
 子ども兵の多くは、荷物の運搬などの重労働に加え、上官からの暴力や、軍事訓練、直接的な戦闘を経験しており、足や腕、背中、腹部など体の一部に被弾、または地雷被害などの重度な後遺症を抱える者もいます。
 また長期間の荷物運搬、水汲みや食事準備など劣悪な環境下での重労働により、帰還後も背中や腰に慢性的な痛みを訴えている者もおり、手術や治療などの身体的ケアが必要とされます。
 誘拐時や拘束期間中に、家族や親戚、友人を殺害されたり、命令により自らの手で家族らに危害を加えたりした元子ども兵は、心にも深い傷を負っています。2004年の調査では、元子ども兵の97%がPTSD (心的外傷後ストレス障害) の症状を示していると言われています。
 これまでにテラ・ルネッサンスが支援した元子ども兵の中にも、メンタルが不安定になり職業訓練の教室を飛び出すなど、感情をコントロールできない者もおり、身体的な傷へのケアに加えて、心のケアも重要です。
・収入向上支援については現在も不確定要素があります。

〇ウガンダ北部住民への影響

①直接的な影響 
LRA紛争による子ども兵の問題に加えて、戦地となった北部地域の住民への影響も看過できません

以下の調査結果をご覧ください。

回答者の40% 過去にLRAに誘拐された
    31% 子どもが誘拐された
    45% 家族が殺害される現場を目撃した
      48% 友人・隣人が殺される現場を目撃した
        23% 自らも危害を加えられた

 (Pham, Vinck, Wierda, Stover and Giovanni 2005: p.20)

 これは、2005年にThe International Center for Transitional JusticeとHuman Rights Centerが地域住民2,585名を対象に行った調査です。
 ここからも分かるように、北部地域住民は、襲撃・略奪・子どもの誘拐といった暴力に常にさらされ、身体的にも心的にも深い傷を負っています。

②間接的な影響
 LRAの襲撃が激化するにつれ、住民は国内避難民としての生活を余儀なくされました。LRAの活動が最も活発化していた時期には、国内避難民として暮らす人々の数は北部地域住民の80%にあたる180万人に上りました。
 国内避難民キャンプでは、就業・経済活動の機会が制限され、多くが援助機関によって配布される食料・生活物資に頼り、極度の貧困生活を余儀なくされました。また2005年の前半には、毎週1,000人に迫る人々がこの内戦の影響で命を落としました(Civil SocietOrganization for Peace in Northern Uganda 2006: p.7)。
 長期化する内戦と国内避難民キャンプでの生活は子どもの教育にも影響を与え、北部地域では内戦の影響により60%の学校が機能せず、25万人の子どもたちが教育機会を奪われました。

③少しづつ回復に向かうウガンダ北部地域
 2006年8月の停戦合意により、LRAがウガンダ北部から隣国へと拠点を移すと、同地の治安は徐々に回復に向かいました。2007年より国内避難民の帰還支援が開始されるとともに、北部地域での包括的な開発枠組みとして「平和・復興・開発計画(PRDP:Peace, Recovery and Development)」が発足しました。
 2008年10月までに約40万人、2009年9月までに80万人の帰還が完了し、2010年6月には、93%の国内避難民の帰還が完了しています。それにより住民の社会的、経済的状況も大きく改善されていきましたが、これまで述べてきたように、今もなお多くの課題が残っています。

 LRA紛争による地域住民への影響は、子ども兵問題の影に隠れて、あまり注目されていなかったものの、見過ごすことができないほど大きく、元子ども兵の社会復帰・再統合は、こうした地域住民といかに和解し、共生を取り戻していくかという課題でもあります。
 このような状況からテラ・ルネッサンスの「元子ども兵社会復帰支援事業」では、元子ども兵とともに、北部地域で紛争の被害に遭った最貧困層も支援の対象としています。

〇終わらない紛争に終止符を。そのためにーーー

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 テラ・ルネッサンスでは、2024年11月13日(水)~2025年1月15日(水)まで、冬季募金キャンペーン「紛争を終わらせる。」を実施しています。


 皆さまからお寄せいただいたご寄付は、今、世界で起こっている紛争を一つでも終わらせるために、そして、紛争の被害を受けた方々の自立支援をはじめ、テラ・ルネッサンスのすべての事業で、大切に使わせていただきます。

どうか、紛争を終わらせる活動に、力を貸してください。



▼冬季募金キャンペーン2024▼
[実施期間]11/13 - 1/15
[目標金額]30,000,000円
詳細はこちら:https://www.terra-r.jp/tokibokin2024.html

___________
記事執筆 / 
海外事業部 ウガンダ事業
カラモジャ事務所長 田畑勇樹 
啓発事業部
インターン 村添心愛

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