【キャンペーンブログ】「LRA紛争の終結に向けて」 / 紛争を、終わらせる。vol.5

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【キャンペーンブログ】 「LRA紛争の終結に向けて」 / 紛争を、終わらせる。vol.5

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  これまでテラ・ルネッサンスでは、”ウガンダ”に帰還した”ウガンダ人”の元子ども兵に対する社会復帰支援を実施し、元子ども兵の自立をサポートしてきました。しかし、社会復帰支援だけでなく、根本的にLRAを解体し紛争を終結させなければ、元子ども兵や住民への被害はこれからも続いてしまいます。
 2005年からウガンダ北部で元子ども兵社会復帰支援を継続してきた当会理事・海外事業部長の小川は、「紛争を終わらせるために、テラ・ルネッサンスにやるべきこと・できることがある」と語りました。

 今回のブログでは、従来の「元子ども兵社会復帰支援」と2023年からスタートした「LRA紛争終結を目指すテラ・ルネッサンスの取り組み」「LRA兵士の動員解除、及び元子ども兵の帰還・社会復帰支援」に焦点を当てながら、最新の状況までをお伝えします。

※LRAとは・・・Lord’s Resistance Army(神の抵抗軍)。1990 年代に入り、指導者ジョセ フ・コニーによって結成され、政府軍と 戦闘を繰り広げたウガンダ北部の反政府勢力。特に1994 年以降になると、激化す る戦闘の中で村々を襲撃し、殺人・略奪・ 子どもの誘拐など残虐行為を始める。ウガンダでの停戦合意後はコンゴ民主共和国(以下、コンゴ)や中央アフリカ共和 国に拠点を移し、 活動を続ける。

〇「私は絶対に裏切らない」——かつての仲間たちに帰還を呼びかける元子ども兵

 ウガンダ北部では、2006年の停戦合意まで推定38,000人以上が子ども兵として徴兵されました。テラ・ルネッサンスでは、2005年より、戦場から戻ってきた元子ども兵の社会復帰支援に取り組んできました。
 停戦合意によってウガンダ北部での敵対的行為は停止したものの、最終的な紛争の終結を意味する和平合意には至っておらず、2007年以降LRAは周辺国 (コンゴ、中央アフリカ、南スーダン) に移動し、近年も新たな子どもの徴兵や村々の襲撃・住民の虐殺などの残虐行為を繰り返しています。周辺国では累計1,196人を殺害、8,429名(多くが子ども)が誘拐されました。

 2008年12月、LRAはコンゴ北東部オーテゥ・ウエル州のファラジェという地域を襲撃し、143名が殺害、160名が誘拐されました。近隣の村々の襲撃も合わせると同年12月24日から翌年1月17日までの間に住民865名が殺害されました(Human Rights Watch  2009:4-7)。
 翌年の2009年12月の襲撃でもコンゴ北東部で321人が死亡、80人の子どもを含む250人が誘拐されています(Human Rights Watch 2010:3)。

 これらを鑑みて、2023年には虐殺が起きたファラジェに拠点を置くコンゴのNGOと協力して、中央アフリカやコンゴで拘束されている戦闘員の動員解除と帰還を促す支援を行うことになりました。

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【コンゴを拠点に活動するNGOと連携して、すべての元子ども兵を除隊・帰還・社会復帰していくためのパートナーシップ(覚書)の調印式の様子】

 具体的な取り組みとして、過去にテラ・ルネッサンスの支援を受けて社会復帰支援を果たした元子ども兵らにも協力してもらい、コンゴ・中央アフリカに残るLRA兵士(多くは元子ども兵)に帰還を促すメッセージを動画にして、コンゴのNGO経由で届けました。同時に、戦闘員たちが安心して帰還できるようにウガンダ側での受け入れ家族の調査も行いました。

 テラ・ルネッサンスで社会復帰支援を受けた元子ども兵パトリック・ルムンバは、コンゴのNGOの協力を得ながら中央アフリカに足を運び、かつての仲間たちに帰還を呼びかけました。ルムンバの呼びかけにより2023年9月、元子ども兵やその家族141名がウガンダへ帰還しました。

〇帰還後〜新たな支援枠組みの準備

 2023年9月、ウガンダ、コンゴ、中央アフリカで誘拐され、子ども兵として従事させられていた元LRA兵士とその家族141名がウガンダに帰還しました。この中には、少女兵や乳幼児も含まれています。

 テラ・ルネッサンスは、彼ら・彼女らの帰還前からウガンダ側の受け入れ準備を進めてきました。具体的には、帰還する元LRA兵士たちの出身の村を訪問し、親族の捜索や自宅訪問を行うことで、子ども時代に別れた家族と再会できる環境を整えました。

 帰還後、彼らは2ヶ月以上ウガンダ人民防衛軍(UPDF)の施設に拘束され、12月に北部のグル県の施設に移送されました。現在もUPDFの監視下で生活しています。

 テラ・ルネッサンスは、ウガンダ政府軍、首相府、アチョリ平和創設委員会、伝統リーダー、オランダのNGO、コンゴのNGOなど、関係団体と協議・連携し、子どもたちの社会復帰支援の枠組みを検討してきました。資金面では、現在オランダのNGOが社会復帰支援に一部資金提供しています。

 グルの施設に移送された後、彼ら・彼女らにテラ・ルネッサンスの社会復帰施設の案内や社会復帰支援のカリキュラムの説明会などを実施しました。さらに、社会復帰施設を卒業した後の実際の生活をイメージしてもらうため、卒業生の職場訪問と交流を実施しました。これは、かつてのLRA時代の仲間との再会という貴重な機会にもなりました。


〇新たな枠組みの社会復帰支援が始動

【地元の家族・親族との再会が実現】
 長年、LRAに拘束されていた元子ども兵たちにとって、故郷への帰還は叶わぬ願いでした。中には、子どもの頃に誘拐されて以来20年以上も村に帰ることすら許されなかった者もいます。
 テラ・ルネッサンスは、彼ら・彼女らが帰還後も軍の監視下に置かれている状況を改善するため、政府軍・首相府に対し、訓練前に村に戻ることの重要性を粘り強く訴え続けました。そしてついに、彼ら・彼女らの心理社会的な安定を最優先するべきだという私たちの主張が認められ、全員が家族や親族と再会できるよう許可を得ることに成功しました。


 2月末から3月初旬にかけて、4日間限定ではありましたが、15年~20年以上ぶりの故郷への訪問が実現しました。地元の親や親族、クラン(共通の祖先を持つとされる人々の集団)のメンバーたちは、大きなテントを準備して彼ら・彼女らの到着を心待ちにしていました。再会の喜びを分かち合い、涙ながらに抱き合う姿は、多くの人々の心を打ちました。
帰還した元子ども兵たちは、一緒に連れてきたコンゴ人の元少女兵(妻)やその子どもたちを家族に紹介しました。また、地元の人々も新しい家族を彼ら・彼女らに紹介し、温かく迎え入れました。


 しかし、すべてが喜びに満ちた再会ばかりではありませんでした。誘拐された際に家族の殺害を強要された元少年兵や、家族がLRAに殺害されたなど、複雑な状況を抱えている者もいます。
 テラ・ルネッサンスは、彼ら・彼女らがウガンダで再び経済的・社会的に自立し、周囲の人々との関係性を再構築していけるよう、心理社会的な支援を含めた包括的な社会復帰支援を提供しています。


【施設での社会復帰支援が開始】
 2024年3月18日、テラ・ルネッサンスの職業訓練施設にて、今回帰還した141名のうち、58名を12期生として迎え、オリエンテーションを実施しました。3月末からは、カリキュラムに沿った職業訓練を開始しています。


 今回の訓練生には、ウガンダ人だけでなく、コンゴや中央アフリカで誘拐された元子ども兵も含まれています。そのため、テラ・ルネッサンスは、職業訓練施設がある地域で話されているアチョリ語の補習を取り入れるなど、カリキュラムを一部改訂しました。
訓練期間中、141名全員がグルのウガンダ人民防衛軍(UPDF)施設に滞在し、移動が制限されています。そのため、テラ・ルネッサンスが毎朝夕の送迎を行っています。


 また、訓練生がフルタイムで訓練を受けられるよう、乳幼児への幼児教育と小学生になる年齢の子どもたちへの学費支援を実施しています。資金はオランダのNGOが提供し、コンゴのNGOが実務を担当しています。
テラ・ルネッサンスは、元子ども兵の社会復帰支援を主な役割として担っています。戦闘などで負った傷の治療が必要な元子ども兵には、他団体と協力して身体的なケアを提供しています。


 さらに、社会復帰が円滑に進むよう、これまでの知見を活かし、首相府、アチョリ平和創設委員会、伝統リーダーらと協力して、帰還した元子ども兵の家族との調整や関係性構築にも取り組んでいます。

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【木工大工の訓練に取り組む受益者】

【支援対象者の情報】
◉対象:141名 (以下 内訳) 
①ウガンダで誘拐された元少年兵:36人
②コンゴ・中央アフリカで誘拐された元少女兵:27人(コンゴ人女性)
③78名は、両者(①と②)の間にできた乳幼児を含む子どもたち78名
→この1月以降、新たに8人の子どもが出産され子どもの数は現在86名。

【訓練開始後の様子と心の変化】
 職業訓練では、木工大工と洋裁/服飾デザインの2つのクラスがあり、訓練生は希望するクラスを選んで訓練を受けています。木工大工クラスは主にウガンダで誘拐された元少年兵が選択し、洋裁クラスは男女どちらもいますが、コンゴ人の元少女兵が多くいます。

 訓練開始から1~2ヶ月が経つ頃には、当初は心を閉ざしていた訓練生たちも、少しずつ変化が見られるようになりました。テラ・ルネッサンスの施設に通うようになってから、不安が和らいできたように感じられます。特に、コンゴで誘拐された元少女兵たちは、帰還した当初、自尊心が低い傾向にありました。LRA従軍中に男性兵士と強制結婚を強いられ、家庭内や社会の中でもその地位は低く、兵士の身の回りの世話などを担ってきたことが原因と考えられます。

 しかし、職業訓練を通して洋服の仕立てができるようになってからは、「私にもできることがある」と目を輝かせる者もいます。訓練を通して、彼女たちは自信を取り戻し、未来への希望を見出しているようです。コンゴ人の元少女兵の中には、訓練後コンゴに帰国を望む者もいます。テラ・ルネッサンスは、彼女たちの意思を可能な限り尊重し、それぞれの状況に応じた支援の方向性を決定していきます。

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【洋裁/服飾デザインの訓練に取り組む受益者】

 前回のブログでも述べたように、自尊心の向上はその後の社会復帰にも大きなプラスの影響を及ぼします。これまで自ら考え行動する機会を奪われた彼ら彼女らに選択肢を提供し、「自分にできることは何もない」という”できない物語”から、「今の私にはこんなことができる」という”できる物語”を増やすことが重要だと考えています。
 これからも、できる限りひとり一人の意思を尊重したオーダーメイド型の支援を実施していきます。

〇終わらない紛争に終止符を。そのためにーーー

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 テラ・ルネッサンスでは、2024年11月13日(水)~2025年1月15日(水)まで、冬季募金キャンペーン「紛争を終わらせる。」を実施しています。


 皆さまからお寄せいただいたご寄付は、今、世界で起こっている紛争を一つでも終わらせるために、そして、紛争の被害を受けた方々の自立支援をはじめ、テラ・ルネッサンスのすべての事業で、大切に使わせていただきます。

どうか、紛争を終わらせる活動に、力を貸してください。



▼冬季募金キャンペーン2024▼
[実施期間]11/13 - 1/15
[目標金額]30,000,000円
詳細はこちら:https://www.terra-r.jp/tokibokin2024.html

___________
記事執筆 / 
海外事業部 ウガンダ事業
カラモジャ事務所長 田畑勇樹 
啓発事業部
インターン 村添心愛

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