【カンボジア】農協が平和をつくるリーダーになるために
【2024年11月 活動レポート/カンボジア】
冬季募金キャンペーンにあたり、駐在員からの特別報告をお届けします。
はじめまして!カンボジア駐在員の津田です。現在、カンボジアでは、バッタンバン州サムロート郡で、農業協同組合の運営強化支援に取り組んでいます。
テラ・ルネッサンスはこれまで、地雷の被害者や地雷埋設地域に住む脆弱層の方々に対し、家畜飼育や家庭菜園を通じた生計向上支援に取り組んできました。
2023年から開始した農協の運営強化支援では、そのような生計向上支援を現地の農協が主体となって、地域の脆弱層に対して継続して行うことができることを目指し、現地の「バイトーン農協」に勤める6名の若手人材の育成を行なっています。
【写真:バイトーン農協の集合写真】
この地域は、内戦の終結後、2000年ごろから人々が住む場所を求めて各地から移り住んできました。内戦当時、地雷原だった土地は、徐々に畑や果樹園になっていきました。現在では、キャッサバやマンゴー、トウモロコシなどの商品作物(*)の栽培や果樹栽培が人々の主な生業になっています。
(*)商品作物とは、農家が自家消費するためではなく、主に売ることを目的として栽培する作物のこと。カンボジアの場合は、主にデンプン原料のキャッサバやトウモロコシが輸出目的で栽培されている。換金作物とも呼ぶ。
しかし、商品作物は国際価格の変動が激しく、買取価格が下がると収穫しても利益になりません。その結果、借金をして作物を植えたものの、収入にならないため、借金が膨らんでしまう人が増えています。その時々で市場がある作物を植え、儲からなくなっては新しい作物を作り替えるものの、また買取価格が落ちてしまうという状況を繰り返している人もいます。
【写真:一面に広がるキャッサバ畑】
テラ・ルネッサンスは、この課題解決のため、家畜飼育や家庭菜園を行うことで、複数の収入源を組み合わせ、支出を減らすことを推進してきました。農協の運営支援は、この活動を現地のアクターに引き継いで行こうという目的があります。
日々行なっていることは、例えば、家畜飼育世帯のデータを取りまとめるために、農協の職員にエクセルの使い方を教えること。
【写真:家畜飼育世帯の家の水瓶をテーブルにして調査データを記入する農協職員。】
また、農協の商品を販売するために、売上を伸ばすために農協職員と売上戦略に頭を悩ませたり、フェイスブックやTikTokでの発信を頑張ってみたり。
【写真:農協の職員が、市内でのイベントで出店する様子】
【写真:農協のフェイスブック投稿。カンボジアでは、フェイスブックとTikTokが最も普及しているSNSです。】
事業を始めて2年がたち、農協の職員たちも、テラ・ルネッサンスのスタッフのサポートがなくても、自分でこなせる仕事が増えてきました。
パソコンの操作もお手のものです。最初はキーボードのタイピング練習から始めたことを思えば、オンラインフォームを駆使して調査データをとっている彼らの様子は感慨深いものがあります。
この事業は残すところ1年となりました。目下の目標は、農協の収益を上げることです。事業終了時には、地域の脆弱層をサポートするための活動経費は、農協の利益から捻出しなければなりません。
また、残り1年かけて取り組むべき課題は、農協の幹部と農協職員たちの協力関係を高めることです。60代〜70代の農協の幹部たちは、バイトーン農協を創設し、20年以上運営してきた誇りを持っており、新しく入ってきた農協職員たちや、彼らの活動をまだ「自分たちの農協のもの」として認めてもらえていません。
しかし、確実に進歩はしています。事業開始時は、幹部たちが会計書類すら見せてくれなかったのですが、現在は、会計書類は全て若手人材の会計担当に任せてもらえるようになったのです。
【写真:農協の会計担当とテラ・ルネッサンススタッフ】
人間関係や世代間の問題は、具体的な解決策が見つかりにくく大変ですが、地道に農協の活動の意義や目的を共有することで、少しずつバイトーン農協がひとつにまとまるよう、働きかけていきます。ひとつひとつ課題を見つけ、農協が地域の自治を進めるリーダーとなれるようサポートしていきたいです。
「紛争を、終わらせる。」
今回の冬季募金キャンペーンのテーマは、「紛争を、終わらせる。」です。今年、ウガンダで誘拐されコンゴ民や中央アフリカに逃れた元子ども兵たちが、テラ・ルネッサンスの働きかけにより祖国に戻って家族と再会する様子、ウガンダで生活していくために職業訓練に励む様子には、「私たちは本当に世界の紛争を終わらせるんだ」と、カンボジアから強く励まされました。
カンボジアでは、1991年にパリ協定が結ばれ、内戦は終わりました。現在のカンボジアは経済発展が著しく、都市部では高層ビルが立ち並んでいます。
しかし、内戦時に埋められた地雷は未だに人々を傷つけており、私たちの身近な場所でも被害者が出ています。暮らしが豊かになる人がいる一方で、私たちが関わるような農家は経済的に非常に脆弱な状況にいます。
支援の受け手には、今日食べるお米がない方や、数千ドルの借金があるのに返済できる収入見込みがない方もいます。彼らの話を聴きながら、もし自分が同じ状況だったら、本当に不安で、どうしていいか分からず途方に暮れてしまうと思います。
しかし、家畜飼育などの新しい技術を学ぶチャンスがあれば、なんとかできるかも、と思えます。私たちの支援が、彼らの希望の一つとして、収入につながるようにサポートをしていきたいです。
【写真:ヤギの飼育に取り組む支援の受け手】
みなさまへのメッセージ
ここまで読んでくださりありがとうございます。現場では、日々直面する小さな課題や喜びに向き合いながら、一つひとつが平和につながると信じて、活動を続けています。
テラ・ルネッサンスは、11月13日(水)~1月15日(水)まで、3,000万円を目標に寄付を呼び掛ける冬季募金キャンペーンを実施しています。
家畜飼育世帯が農閑期で本当に生活が苦しく、今日食べるお米がないような時期に、家畜飼育に集中する目的でお米を支給することがあります。例えば、皆さんからの3000円のご寄付があれば、5人家族が2週間生活できるためのお米を渡すことができます。
皆さんからお寄せいただいたご寄付は、今、世界で起こっている紛争を一つでも終わらせるために、そしてカンボジアのように紛争後の社会で、人々が安心して生活できる社会をつくるための大切に使わせていただきます。
私たちの活動のシェアや、募金という形で力を貸していただけないでしょうか。
テラ・ルネッサンスでは、2024年11月13日(水)~2025年1月15日(水)まで、冬季募金キャンペーン「紛争を終わらせる。」を実施しています。
皆さまからお寄せいただいたご寄付は、今、世界で起こっている紛争を一つでも終わらせるために、そして、紛争の被害を受けた方々の自立支援をはじめ、テラ・ルネッサンスのすべての事業で、大切に使わせていただきます。
どうか、紛争を終わらせる活動に、力を貸してください。
▼冬季募金キャンペーン2024▼
[実施期間]11/13 - 1/15
[目標金額]30,000,000円
詳細はこちら:https://www.terra-r.jp/tokibokin2024.html
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記事執筆
海外事業部 カンボジア事業
津田