【ウクライナ】CSCsとは?現地の「声」を聞いてきました

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【ウクライナ】CSCsとは?現地の「声」を聞いてきました

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「今注目してほしいテラルネ支援」と題し、現在テラ・ルネッサンスで進めているプロジェクトの中から3つの活動を取り上げ、みなさんにお伝えしていきます!

 

今回は、ウクライナ事業において実施している、CSCs「社会貢献型現金給付支援」の受益者の方々のインタビューをお届けしていきます。

CSCsに関する詳しい情報は、【緊急支援活動レポート】自立した生活を応援するCSCs からご覧いただけます。

また、今回現地でインタビューを実施したハンガリー事務所職員コーシャと小川が対談を行っている、『だから、私も。』01.ウクライナ難民を誰一人取り残さないも、ぜひ合わせてご覧ください。

ウクライナと日本は遠く離れており、現地にいる人々の声を聴く機会は多くありません。このブログを通して、受益者の方々の素直な声をお届けすることで、現地の状況をよりリアルに感じていただきたいと思います。また、みなさんのご支援がどのように受益者の方々の生活に繋がっているのか知っていただくことで、読者の皆さんに少しでも身近に感じていただければと思います。

 

◼︎CSCsとは

CSCs「社会貢献型現金給付支援」とは、支援対象者の方々の主体性を最大限尊重しながら、その人にできる社会貢献(モノ作りやサービスの提供)の機会を提供し、その対価として、テラ・ルネッサンスから現金を給付する支援のことです。

この支援の特徴は、それぞれの人が「できること」に対して現金が給付されることと、その人が作ったサービス・物を受け取ることで、周りの人にも刺激を与えられることです。

そして、支援対象者自身は支給された現金で自ら必要な物資などを購入し、生活を支えることができます。このような支援の形により、これまでテラ・ルネッサンスが脆弱な人々を支援する上で大切にしてきた、対象者の最低限の暮らしを「保護」する事と、対象者が自立して暮らしていけるように「エンパワーメント」する事を同時に実施できます。

 

これまでテラ・ルネッサンスでは、「炊き出し」「パフォーマンス」「清掃/整理」「手工芸」などの社会貢献の場を提供してきました。参加対象者は、難民・避難民の方でなおかつ、身体的・体力的に問題がない方になります。また、避難民を受け入れているホストコミュニティの方々も対象になります。

 

今回のインタビューは「炊き出し」の支援を行っているキッチンポイントにて行いました。キッチンポイントとは、調理および食料保管の拠点のことです。国内避難民の方々と彼らを受け入れているホストコミュニティの方々を対象に、炊き出しおよび食料・食材の配布を行っています。

こちらのブログからキッチンポイントの整備や運営、工夫ついて紹介しているのでぜひ合わせてご覧ください。【緊急支援活動レポート】安定した食料供給の実現に向けて 

 

 

◼︎CSCs展開地域の様子

現地の状況をより身近に感じていただけるように今回、インタビューを実施したウクライナザカルパッチャ州の様子を少しだけお伝えします。
ザカルパッチャ州はウクライナ西部に位置しています。インタビューを実施した11月時点で、夜の気温は氷点下まで寒くなり、朝起きると霜が降りているほど冷え込みます。また、ロシアのウクライナ侵攻による戦争や、干ばつ、インフレなどの要因により物価は高騰し続けています。光熱費、特にガス代の上昇は深刻で現地の方々の生活に大きな影響を及ぼしています。 
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              【ザカルパッチャ州の様子】


ウクライナ西部・ザカルパッチャ州に設置している複数のキッチンポイントにて行っている炊き出しでは、ボランティアも含め、約35名が調理等に参加しています。今回、インタビューを実施したキッチンポイントでは、週に2回、炊き出しを実施しています。ウクライナの家庭料理ではじゃがいもがよく使われ、主食やおかず、スープなど、どのメニューにも頻繁に登場する欠かせない食材です。インタビュー実施時もジャガイモのスープを作っていました。

 

■CSCs受益者へのインタビュー

今回、インタビューを引き受けてくださったのは、炊き出しの調理を行っているマリーさん(仮名・写真左)とメイさん(仮名・写真右)。お二人とも戦前からザカルパッチャ州に住んでおり、戦争が発生した後も避難はしておらず、家族と共に同州での生活を続けていらっしゃいます。また、ウクライナ侵攻による国内避難民の方々を受け入れているホストコミュニティの方々です。

 

【緊急支援活動レポート】「支援の空白地帯」で避難民を受け入れるホストコミュニティ のブログにて詳しく説明されていますが、ザカルパッチャ州には、支援団体やボランティアの姿はほとんどなく、東部から避難してきた人々の生活をサポートしている大多数がマリーさんやメイさんのような地元の人々です。有志で自分の家の空き部屋や空き家に避難民を受け入れ、生活用品や食事を提供し、共に生活しています。しかし、そのサポートは決して十分なものではない上に、ホストコミュニティの人々の生活さえ危うい状況です。ウクライナ危機以前から厳しい生活であったことに加え、避難民の流入による人口増加、生活物資の不足、インフレによる物価の高騰、戦争による失業や収入源の減少などが、地元住民を苦しめています。

 

東部からの避難民と、西部のホストコミュニティの両者に、持続的な支援が必要であることから、CSCs支援対象者には難民・国内避難民の方だけでなく、ホストコミュニティの方々も含めています。

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              マリーさん(左)とメイさん(右)】

マリーさんは、明るく気さくな方で、大きな笑顔で楽しそうにお話をしてくださり、メイさんは、写真を撮ると恥ずかしそうですが、たくさんのことを教えてくださいます。

お二人はとても仲が良く、仕事も息ぴったりと、手際よく進めてくれています。

お二人には炊き出しのお仕事を依頼しており、仕事内容は主に、メニュー決めと調理です。炊き出しは週に2回、1回ごとに40食分調理してもらいます。

どんな食材があるかや食材の賞味期限をチェックしながら、お二人で相談し、なるべくメニューがかぶらないように作ってくださっています。


ここからは実際のお二人の声をお届けしていきます。


Q:お二人の生活環境を教えてください


メイさん:夫と2人で、年金暮らしです。子どもはもう独り立ちしています。昔は幼稚園の給食を作っていましたが、体調が悪くなって病気になり、辞めざるをえませんでした。


マリーさん:以前まで炊き出しを担当していた方の後任として、炊き出しに参加しました。銀行で働いていましたが、子供が病気になったので家で面倒を見るためにやめてしまいました。夫は徴兵されて家にいません。


Q:CSCsについて、どう思われますか


メイさん:料理は好きだから、いつも楽しいですよ。味見をしないといけないから、料理を作ってるうちにお腹も膨れます(笑)


マリーさん:基本的に子供が病気なので家にいますし、リハビリや病院に連れて行く必要もあります。また、夫は徴兵されて家にいないので、収入源になっています。このように週に2回仕事させてもらってるのはありがたいです。

 
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【じゃがいもの下処理を行うメイさん】
 

Q:実際に、物資や食料などを支給される支援と、自らが働いた対価として得る現金の支援とでは何が違いますか?

メイさん・マリーさん:違いがあるというより、どちらも必要だと感じています。物の支援ももちろん必要ですが、光熱費や薬代、その他必要な物の費用など支払うためにはお金も必要だからです。両方あって初めて生活ができます。



Q:活動で得たお金は何に使っていますか?

メイさん:光熱費や食費、薬代などに使っています。私も夫も高血圧なので薬代は毎月結構かかっています。

マリーさん:薬を買ったり、医療を受けるために、まとまったお金が必要な状況です。医者にも袖の下を通さないと、まともな治療が受けられないので、お金が必要になっています。



※CSCsのは、低所得者層の方を対象としています。ザカルパッチャ州には年金が1万円以下の方も多く、何ヶ月も電気や薬なしで生活されている方がいます。1万円では、光熱費と薬代の両方を払うことはできないからです。「本当に必要な物でさえ、取捨選択を迫られている」という状況におかれています。

Q:CSCsのプロジェクトを通して、心境に変化はありましたか?

メイさん:元々病気がちで家にいたので、こうして必要とされて仕事をできることは、生きがいで幸せなことです。

マリーさん:毎週2回こちらにきて仕事をして気分転換にもなるし、とても幸せだし、家にずっといるよりやりがいがあります。子供は病気で、夫も家にいないので、こうして動くことは嬉しいです。

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【調理中のマリーさん】
 

Q:CSCsの社会貢献活動を通して印象に残っている出来事はありますか

 

メイさん:ある時、一人で40人分の食事を作らなければならなかったことがあり、大変でした。でもその分、今こうして2人で料理できていることが嬉しいです。料理も上手なので一緒に仕事ができて嬉しいです。食事を運んでくれているドライバーが戻ってきて、配達先の方からの美味しいというメッセージを伝えてくれることも嬉しいです。

 

(補足情報:小さな村のため、みんながみんなを知っているコミュニティです。配達先の人と会うことや、顔見知りだったり家が近かったりすることがよくあります。)

 

マリーさん:生きてること、それが最大の喜びです!なので炊き出しを続けられていること自体が、嬉しいことです。



Q:これからしてみたい仕事や夢はありますか?

 

メイさん:調理が自分のやりたい仕事で、それをこのキッチンポイントで実現できています。もう60歳で体の自由はきかないし、幼稚園の給食のように毎日の食事を作るのは難しいですが、このように週に2回くらいだったら続けられます。自分のやりたい仕事を、ちょうどいいペースでできています。

 

マリーさん:なかなか生活も厳しいので、今はやりたいことを具体的に考えられません。キッチンポイントでの仕事は週に2回だけなので、生活のために引き受けました。

 

Q:家族や友達はCSCsについてどう思っていますか?

 

メイさん:夫は、もっと回数を増やして行っておいで、と喜んで送り出してくれています。

 

マリーさん:病気がちの息子を一人で置いてくるのは忍びないですが、週に2回だし、終日でもないので続けられています。息子は勉強しろと言われなくて自由気ままに過ごせるから、それも良さそうです。(笑)

 

■CSCsが持つ力

実際にインタビューに帯同した現地事務所職員小川は、CSCsについてこう語りました。

 

『インタビューを通して印象に残ったのは、お二人の笑顔でした。戦時下での生活の厳しさは、私には想像することしかできません。それどころか、私が想像している何倍も苦しいものだと思います。それでもお二人は、笑顔で雑談をし、楽しみながら炊き出しの仕事に取り組んでくださっていました。ここでの仕事はやりがいがあるよ、とも笑顔で話してくれました。その様子を見て、まさにこれが、私たちがCSCsを通じて実現したいと考えている「エンパワーメント」だと感じました。苦しい状況であるからこそ、人や社会との繋がりを持ち、生きる活力を持っている人はとても強く、眩しい存在です。また、笑顔でいられる時間の大切さを感じます。CSCsがこれからもそうした力の一助となれるよう、支援の安定化と拡大に貢献したいです。』

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【和気あいあいとした雰囲気で調理をするお二人】

■誰一人取り残さない支援を

CSCsの参加者は、それぞれ異なる想いや生活状況の中で活動を行っています。CSCsの活動が良い息抜きになっている方もいれば、生活するうえで欠かせない支援だと仰る方もいます。「働いて対価を得て、必要なものを買う」という当たり前のような仕組みが、戦争と隣り合わせで、必要な物資一つ手に入れるのが困難な地域では欠かせない支援になります。

また、支援対象者の方がどれだけ脆弱な状況に置かれていたとしても、その脆弱な部分ばかりに目を向けるのではなく、その人が「できること」を尊重することは、自尊心を高め、自立を促すだけでなく、周囲との関係性の構築においても非常に重要なことです。

 

CSCsの取り組みは、テラ・ルネッサンスが大切にしている「誰一人取り残さない」支援を実現する支援の形でもあります。

ウクライナ事業において大切な軸である “一人ひとりに寄り添った支援” を継続し、今後もすべての生命が安心して生活できる社会の実現を目指していきます。

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記事執筆/

啓発事業部インターン 冨嶋ひより

 

執筆サポート/

啓発事業部インターン 鈴木千花

 

インタビュー・報告/

ハンガリー事務所所長 コーシャ バーリン・黎

ハンガリー事務所プロジェクトコーディネーター 小川さくら

 

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